小さな会社のメディアの作り方 #1

小さな会社のメディアの作り方 #1

「幻のcontainer」。

Contributed by Ryo Sudo

By / 2018.01.05

こんにちは!

僕は、当サイト“container”と、昨年10号目を迎えた女性カルチャー誌“anna magazine”の編集長を兼任させていただいているクリエイティブディレクターの須藤亮と申します。

昨年11月15日に“container”がスタートしてから、1ヶ月と少しが経ちました。

おかげさまで少しずつ認知度も上がってきて、PV数はもとより、読んでいただいた人々から感想が届いたり、このメディアにコントリビューティング・エディターとして参加したいという方々がたくさん名乗り出てくれたりと、うれしい反応をいただくことができています。

実は、現在僕たちが運営しているメディアは、containerの他にいくつかあります。

まずは、ビーチと旅を愛する女の子のためのカルチャーマガジン“anna magazine、それと、ヴィンテージのアーカイブをテーマごとに編集している書籍“sukimono book”。



この2つのレーベルはそれぞれに熱狂的なファンの方々に支えられ、昨年どちらも10号目を迎えることができました。

さらに、anna magazineの意思を引き継ぐ男の子のためのカルチャーマガジン“LUKE MAGAZINE”も来春の創刊に向けて動いています。

僕が所属しているmo greenというクリエイティブカンパニーは総勢30名足らずの小さな会社ですが、今、こうしてある程度の影響力を持つ、複数のメディア運営に携わらせていただくことができています。

そこでこの連載では、小さな会社で“メディア”を運営するということについて僕が思うことを、少しずつ書いていこうと思います。マスメディアはその役割が大きく変化し、SNSを中心としたパーソナルメディアもそろそろ飽和状態になってきた今、“メディア”のあり方はまた大きな変化の時期を迎えているような気がします。

すべて僕の個人的な体験や感想なので大いに意見が偏っているとは思いますが、これから小さな会社でメディアをスタートさせたいと思っている方々に、少しでも参考にしていただけたらと考えています。

クリエイティブカンパニー“mo-green”がスタートしたのは15年前のことでした。代表の森が創業した会社に、フリーランスのエディターだった僕が合流させてもらって、「ごく自然な感じで」制作業務をスタートしたのがその始まりです。

アパレルカンパニーから監査法人、学校法人から自治体まで、あらゆるジャンルのクライアントのさまざまな「伝えたいこと」を、「編集」と「デザイン」という手法を使って、最高に魅力的なかたちで伝えるのが僕らのメインの仕事です。

ただ、この業界に身を置くエディターの端くれとして「いつかは自分たちもメディアを持ちたい(特にその頃は雑誌創刊)」という夢はおぼろげながら描いていました。ただその頃は、メディア、なかでも雑誌を創刊することは、数名しかいない小さな会社にとって、本当に高い高いハードルでした。

会社がスタートした15年前といえば、「出版取次」という独特の流通システムや「再販価格維持制度」という古い慣習が強く残る雑誌業界は、実績や信用がない新参者のスモールカンパニーにはなかなか門戸を開いてくれない時代でしたし、ウェブテクノロジーの圧倒的な進化の前に「そもそも雑誌業界に明るい未来はない」とまで言われている頃でしたから。

なので、今こうして僕たちが自分たちで雑誌を出版したり、そのスピンオフとして新たなウェブメディア運営にチャレンジできているということは、自分たちのアイデアや努力の賜物、と言いたいところですが、一番大きいのは、たった15年の間に、遅ればせながら前時代的だったメディア業界にも、いよいよ驚くような変化が始まった証拠なんだと思います。

僕たちのメディア運営が本格的にスタートしたのは2013年秋のanna magazineの創刊からですが、実はそれよりも10年ほど前、containerの前身をフリーペーパーとして発行したことがありました。



自分が尊敬するさまざまな人々に、一つのテーマで自由に表現してもらうというコンセプトのフリーペーパーでしたが、コンセプト設計、テーマの設定、制作スタッフのモチベーション維持、コスト管理、配布ルートなど、あらゆる面で惨敗に終わり、当然のことながら一号でお蔵入りとなりました。

苦い思い出がたっぷり詰まった僕たちの初メディアですが、それでも、現在のcontainerのコンセプトへとつながる萌芽のようなものは、なんとなく感じ取れるかもしれません。

僕たちのメディアづくりは、すべてここからスタートしました。

そこで今日は、自戒の念をこめ、あえて12年前の僕たちの(特に僕自身)、若さゆえのその青臭く独りよがりな序文をすべて掲載させていただきたいと思います。

次回は、この幻のフリーペーパーの大失敗を分析してみたいと思います。



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「コンテナ」とはその名の通り、

なんでもない「入れ物」のこと。

ただの大きな箱でしかないコンテナが、

中にさまざまな荷物を入れることで

本来の目的を果たすように、

このフリーペーパーもまた、

真っ白な紙面をたくさんの人々の

自由な言葉で満たすことで、

ペーパーメディアのあらたな可能性を

探っていきたいと考えています。

 

例えばあるひとつの言葉がそこにあるとします。

たくさんの人々の、

それぞれの解釈がそこには存在し、

人の数だけ正論が存在します。

自分たちの意図に合わせて

その情報を取捨選択し、

広く伝達するのがメディア本来のあり方ですが、

「container」はたくさんの表現者たちの言葉を

自分たちの意思によって

判断するのではなく、

ありのまま、掛け値なしに

伝えることが最も重要なことだと考えます。

 

判断をしない、という判断がもたらすものーーーーー。

それはあまりにも漠然としすぎていて、

このメディアの意味すら

曖昧になってしまうかもしれません。

ただ、それもまた、混沌としたこの現代の

空気感そのものだと、私たちは考えます。

 

このメディアを偶然手に取った人々が、

そこに表現されたさまざまな情報の中から、

それぞれの解釈で何かを感じ取っていただければ幸いです。


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