ボブ・ディランも物思いに耽る喫茶店。

Contributed by anna magazine

Local / mar.20.2019

東京の中でも、とりわけ景色の移り変わりが激しい街・代官山。いつも涼しげなこの街には珍しい、物思いに耽るための静かな場所がある。駅からほど近いビルの階段を下るとたどり着く「カフェ・フォリオ」は、まさに「オールドスタイル」の喫茶店だ。正方形の小さなテーブルと、古い皮のチェアー。小鉢に入った粒の大きなザラメと、真っ白のカップ&ソーサー。小さい頃に母親に連れられて来て、漫画を読んで暇をつぶした場所。


ぼんやり明かりの灯った焦げ茶色の店内に、ついつい長居させられてしまう。

マスターは、叔父さん家族が営んでいた喫茶店に通って育った、生粋の喫茶店っ子。この店も自分が通った喫茶店の雰囲気を大事にしているというから、なるほど昭和がそのまま残っている。壁には、物憂げにうつむくモノクロのボブ・ディランの絵が一枚だけかかっていて、もちろん喫煙可能。でも、静かにピアノが流れる店で、他の人が居づらさを感じてしまうような大声でのおしゃべりは厳禁。


この店にとてもよく似合う、カッコいいボブ・ディラン。


「物がしかるべきところにある」、なんだかこの店のスタイルを表しているよう。

「普通に来て、普通に帰って欲しい」
そう語るマスターの姿勢は一貫している。まず、メニューは決して多くないし、特段目を引くような変わったものはない。コーヒー、カフェオレ、コーヒーゼリー、少しお腹が空いたらクロックムッシュ。名物のレアチーズケーキは形こそ変わっているけど、味はどれも奇を衒わず、確かに美味しい喫茶店メニューだ。
「どんな店に通うの?って言ったら、やっぱり日常使いできる店だと思うな。そういう店でありたい」


変わった形のレアチーズケーキ。コーヒーとの相性は抜群。

マスターが着ている白いカッターシャツと黒のベスト、整頓されたシンプルな清潔感のあるコーヒーカップは、この喫茶店の態度をよく表している。
「マグカップで出せば、それはカフェっぽい雰囲気になるし、それも一つのスタイルだと思う。でもうちは白いコーヒーカップ。昔ながらのね。うちはそういうスタイルってだけ」
「特別なことは何もしてない」というマスターは、こう続ける。
「スペシャルなメニューを出すよりも、自分は店を清潔に保つとか、そういう小さなことの方が大切だと思う」


白いカップの整列が気持ちいい。

そして、なんといってもこだわりのオリジナルブレンドは、オールドビーンズを深煎りし、ネルで丁寧に淹れた逸品。淹れた直後に空気に触れさせることで、よりまろやかな口当たりになるそう。月並みな言葉だが、「冷めても美味しい」まさにオーセンティックな味わいだ。
「うちはコーヒー一杯500円。おかわりは300円。食後にちょっと一服したいひとにも来てもらえるようにね」


酸味は少なく、どっしりとした苦味と深いコクが口の中に広がる。

毎日来ても飽きない、日常の中に当たり前にあるお店でありたい。そんなマスターの思いが随所に垣間見えるこの喫茶店は、「特別なことは何もしない特別さ」が確かにあった。代官山という忙しない街で、ひととき時間を忘れて一杯のコーヒーを飲む。そんな時間を過ごしたくて、この店は今日も「ついつい今日も足を運んでしまった」そんな感じのお客さんで溢れている。

【お店情報】
CAFFE FOGLIO(カフェ・フォリオ)
〒150-0033東京都渋谷区猿楽町23-3鳥居ビル B1F
03-3464-0512
11:00~22:00日曜営業(定休日:第1・第3水曜日)

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