DINER #16 Wailana Coffee House

Text: Maiko H. Izon

Local / mar.11.2019



ライフ・ゴーズ・オン

久しぶりに訪れたダイナーでは、いつ訪れても変わらないほどほどの混み具合と、いつも見かける耳にピアスがたくさんついた年配のウエイターの柔らかな物腰に迎えられた。



ちょっとビックリするくらい薄いホットコーヒーと、友達は看板メニューの「エンドレス・パンケーキ」、私は意外性を求めて「ステーキ」をオーダー。これまた看板メニューの「エンドレス・サラダバー」付きだ。





定番のレタスやトマトのサラダに加え、ロコが好きそ うなマカロニサラダや春雨サラダ、そしてキムチが並ぶのもハワイならでは。バランスよくいろい ろトッピングして席に戻り、食事を始める。いままで何度も体験したことのある、何気ないダイナーでのひととき。訪れるたびに思うのは、いつも異次元の空間にいるような気分になること。大きな窓の外にはワイキキ西部の大通り、アラモアナ通りがある。窓で音が遮断され、たくさんの車と旅行者が行き交う様子だけが無声映画のように流れる。まるで、この店内だけが時間の流れが違うように、家族連れの子供たちが騒ぐ声や電話の呼び出し音、常連たちがウェイターと話す声がノスタルジックな空 間に溶け込む。



「ワイラナコーヒーハウス」の創始者が、現在の場所に24時間営業の「カピオラニ・ドライブイン」 を開業したのは1949年のこと。駐車場で駐車したままオーダーできるカーホップサービスなどを提供し大盛況。その後ファミリー向けのレストランとして経営形態を変更し、1969年に現在の「ワイラナコーヒーハウス」をオープンした。24時間営業だから、朝、昼、晩とプライムタイムには旅行者が行列を作り、ダウンタイムには近隣に暮らす学生やロコが軽食や勉強に利用する。そして夜中には飲食業の従業員や夜遊び帰りの若者が集い、 1日を通してさまざまに客層が移り変わる人気のダイナーだった。 誰もが、ここは永遠にみんなの憩いの場だと信じていた。薄いホットコーヒーも、大き過ぎておかわりなんてできそうもないパンケーキも。元気な年配のウエイターやウエイトレスのおじさんや おばさんも。ずっとずっとあると思っていた。の に......。8月の終わり、近年のレストラン業の競争の波に飲まれ、年老いた共同オーナーたちが辿り着いた答えは、新しい未来へのステップアップではなく、幕引きだった。9月末で閉店と発表され、その後10月15日まで閉店が延びた。もしや、このまま延び続けるのでは? という期待をよそに、ついに予定通り48年の歴史に幕を閉じた。48年間、ワイキキの変遷を見守り続け、目まぐるしく変わる周囲とは裏腹に、オープン時から変わることなく訪れる誰もを温かく迎え入れてくれた場所。Life goes on.



profile
Maiko H. Izon/ホノルル在住。現地メディア・コーディネーター、ライターとして、ハワイ州オアフ島を拠点に活躍中。ガイドブックや情報誌、女性誌など多岐に渡り、日本で出版されている雑誌や書籍のハワイ企画取材コーディネートや執筆活動をしている。

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