$HOW5(#テガキ)Vol.2

Contributed by Takashi Suzuki

People / dec.14.2017



数々の音楽アーティストのアルバムジャケットを描き続けるイラストレーターの$HOW5さん。ジャケットをモチーフにしたイラストは、似ているようで似ていない、似ていないようで似ている、そんなズレが心地いい。学生の頃から描き続けてきた膨大な作品の数々は、多くの音楽ファンの心をつかみ、「ローリングストーン」をはじめとした海外メディアにも度々取り上げられるほど。創作のきっかけから今後の野望まで様々なお話を聞いた。

先週のVol.1を見逃した方は、こちらをチェック。http://container-web.jp/people/2223.html

理想の世界への憧れ

―これから実現したいこと、野望などはありますか?

僕が思っている理想の世界があるんです。
それは、バスキア※を主人公にした「ダウンタウン 81」※という映画で描かれた世界。

この映画では、ポストパンクとニューウェーブとディスコとヒップホップといった様々なカルチャーが全部共存しているんです。81 年のニューヨークのアンダーグラウンドシーンを映しながら、ただバスキアが街を歩いているだけなんですけど、そこにブロンディとか日本のプラスティックスとかいろんなバンドだったり、アンディー・ウォーホルがちらっと出てきたりだとか。

この映画の時代って、「みんな誰もやったことない新しいことしようぜ」ってことだけが重要で、細かいことはなにも気にしてないんですよね。なにか新しいことをやっていたらすごいんだ、という感覚が大切で、「売れている」だとか「有名だ」とかそんなこと全然関係ないんです。無名だった男の子が、明日にはいきなりスーパースターになるかもしれない土壌だから、みんな同じ仲間という意識がある。

バスキアだから偉いなんてことはなくて、お前面白いことやっているよね、ってただそれだけ。誰もがフラット、僕にはそういう風に見えるんです。
今もこんな風に誰もやってない面白いことに挑戦しやすいような環境が、もっと沢山あったらいいのになと思います。



「ダウンタウン 81」のジャケットを描いた $HOW5 さんの作品



バスキアがカバーアートを手掛けた「Rammelzee VS K-Rob / Beat Bop」
映画に登場する日本のニューウェーブ・バンド プラスティックスのUS盤

TRIP/映画のワンシーンを思い出す旅

―今までの旅で印象に残っているエピソードはありますか?

初めて行ったニューヨークの旅ですね。
2002 年の9.11 の後。飛行機がかなり安くなっていて、ちょうどその時の彼女が1年くらい留学していたんです。お金はなかったけど、泊まるところはあるし、安いから行くならこのタイミングしかないと思ったんです。

旅の中で特に印象的だったのが、どこを切り取ってもジャケになるようなクールな街並み。「ダウンタウン 81」が大好きだから、エンパイアステートビルを見ただけでテンションが上がったり、セントラルパーク、ダコタハウス、グッゲンハイムとかバスキアが歩いていた場所を見ているだけで感動しましたね。

それと、映画の「キッズ」※で夜に学校のプールへ忍び込むワンシーンがあるんですけど、そのロケ地の学校の壁にキースヘリングの絵が描いてあるのを発見して、ニューヨークならではだなと興奮しました。

あとは、 A-1 レコードというレコード店。店内には有名な DJ の写真がずらりと壁に貼ってあったのをよく覚えています。欲しかったレコードの中身が入っていないとか、N.E.R.D※のキャップを被ったスケーターがずっと試聴機でスクラッチしてたりとか、とにかくカオスで面白かったです。いろんなジャンルの音楽が分け隔てなく一つのスペースに集まっているのが、このお店の特徴で、様々な人々が暮らすニューヨークらしい部分が垣間見られた気がして、嬉しくなりました。



ニューヨークの「A-1 レコード」を描いた $HOW5 さんの作品

―ニューヨークは$HOW5さんにとって特別な存在なんですね。その他にこれから旅したい場所はありますか?

フットボールが大好きなので、プレミアリーグ観戦とロンドンで作品展を行いたいのですが、まとまった資金がございません(笑)。


By(X)/共通の価値観から生まれる仲間意識


―ここで、少々話は変わりますがイラストの制作活動や DJ などを通してたくさんの人と接する機会が多いかと思いますが、$HOW5 さんにとって仲間とはどんな存在でしょうか。

たとえば、自分がよく行っているお店が好きだとか共通の好きなものがある人は広い意味で言えば仲間だと思います。

グルズ※っていうスタッフが全員スケーターの美容室が 企画参加していたパーティーがあって、そこでいろんな人と出会いました。バックドア※の友人もグルズを通じて仲良くなったので、「グルズに行っています」って人なら、それだけで信頼感があって、仲間意識が芽生える。そういう感覚はあります。

LOCAL/地元の新たな動き

―最後に $HOW5さんの地元は、兵庫県の尼崎や伊丹あたりとのことですが、その地に特別な思いはありますか?

僕の絵のバックボーンである音楽やサブカルチャーの知識、考え方、ものの見方は殆ど父親とDJを通じて知り合った、DJ旗本退屈男先輩から教わりました。数年前まで旗本退屈男先輩と一緒に東京、大阪でパーティーを主催していたので、また一緒に何か新しい事が出来たらいいなと思っています。

あと、僕が関西から東京に移動する時期、2000年代前半には 弟も当時のメインストリームHIHOP、R&BのDJをやっていたんです。その時は家族3人とも同じレコードを買ってきた日もありました(笑)初めてNYに行ったのもその2002年です。その時代の物事が今とても気になっいて、何か面白い事が出来たらいいなと思っています。

Profile
$HOW5(#テガキ)
レコードコレクターの父親の影響で胎児の頃からレコードに囲まれて育つ。ジャケットを空CDRやカセットに描き始める。そのサイトhttp://showfive.tumblr.comが EgoTrip(NY) ,FACT(UK),RollingStone , Samplingloveやスチャダラ通信などで紹介され世界中の音楽ファンの間で話題に。instagram:show5orizinal
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※バスキア
ジャン=ミシェル・バスキア。画家、グラフィティ・アーティスト、詩人、ミュージシャンとして活躍し、27歳の若さでこの世を去った。

ダウンタウン 81
バスキアが時代の寵児となる前夜の19歳の時に撮影された唯一の主演作。

ブロンディ
アメリカ合衆国出身のロック・バンド。 女性ボーカリスト デボラ・ハリーが在籍し、1970年代末から隆盛した「ニュー・ウェイヴ」の代表的グループとして知られる。

プラスティックス
1976年に結成された日本のニューウェーブ・バンド。

キッズ
1995年のアメリカの自主成長物語映画。ハーモニー・コリンによって書かれ、ラリー・クラークが監督を務めた。

N.E.R.D
アメリカ合衆国のヒップホップグループ。
グループ名はNo one Ever Really Dies(真の意味で死ぬ者はいない)の略と、
オタクを意味するスラング―ナード。

グルズ
Guru’s Cut&Stand  祐天寺駅から程近い所にあるスケーターが集まる美容室。様々な人が集まり情報交換できるNYスタイル美容室を目指している。

バックドア
代々木上原のセレクトショップ。BLOHM,Black Weirdos,BRAIN DEAD,ONLY NY,tone,crepuscule,UNUSEDなど数多くの人気ブランドを取り揃えている。

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