THIRTY-AGERS #004 - Keita Syojinaga

「30代だから……」そんな重荷はない!

Photograph:Kenji Nakata

People / may.18.2018

学習塾を運営する株式会社highbrow共同代表、小路永啓多さん33歳。彼は28歳のときにhighbrowを設立。そこから5年間で、300人以上の生徒を抱え、東京、埼玉、千葉に校舎を構えるほどにまで会社を成長させた。設立以来、規模拡大だけでなく、新しい事業への挑戦も続けている。新事業をスタートする際は、“おもしろそう”かどうかを基準に『速く、軽く、小さく』始めることを大切にしている。時には失敗もするけれど、後悔や自責の念に捉われたことはない。そして、現状に対する焦りや不安も一切ない。そんな彼に “30代の歩き方”を聞いてみた。


30代で掴んだひとつの確信


––30歳からの3年間、短かった? 長かった?
短かった。つねに忙しく過ごしているわけではないけれど、最近は考えることが増えてきて……。考えごとをしていると、時間が過ぎるのが早い。highbrowでは『DIET STUDY』という塾を運営していて、数年前までは毎日教壇に立っていたんだけど、今はその機会が減った。生徒や校舎が増えて新しい授業の形態を考えたり、社員が増えたことで講師の育成について考えてみたり。会社の仕組み作りに費やす時間が増えてきた。

––30代はどう? 20代のときと変わった?
30歳になって、気持ち的に軽くなった。これまで自分がやってきたこと、そして今やっていることに確信を持てたのが30歳のときだった。それは、今まで自分が取ってきた方法論が正しいということではなく、『速く、軽く、小さく』新しいコトへ挑戦する、という考え方。何か新しいことを始めるとき、覚悟を決めたり、具体的なプランを構築したりして、一歩目を躊躇する人は多いと思う。けど、その覚悟やプランはいらないなって。とにかく軽い気持ちで踏み出すことが大切なんだって。始めてみれば、案外なんとかなるということに確信を持てた。

––軽い気持ちで始めて失敗する。そのリスクは考えない?
小さく始めれば、失敗しても大怪我はしない。それに、何か新しいことを始めれば、そこに共感して付いて来てくれる人が絶対にいる。そういった人との繋がりが生まれるんだから、正直リスクなんてないと思う。実際、以前自分が勤めていたKEYENCEという会社から、先輩が2人、同期が1人、highbrowに転職してきた。新しいことをやっている会社でおもしろそう。きっと、そう感じてくれたんだと思う。



––新しい挑戦をする。その動機はなに? 自信? 単純な興味?
“おもしろそう“かどうかだけ。儲かる、儲からないは二の次に考える。自分がやりたいと思うことをとにかく始めてみて、それから運営方法などの手段を考えていけばいい。

––highbrowを立ち上げたときもそう?
もともと、人の選択肢を広げるような仕事をしたかった。そして、塾がそのひとつだと思っている。自分自身が志望大学に受かり、そこでさまざまな人と出会い人生の選択肢を広げることができた。志望校に受かった自信やキャンパス生活で得た経験が、生徒ひとり一人の将来の選択肢を広げていくと考えている。生徒たちには、多くの選択肢のなかから自分の人生を切り開いて欲しいしね。そのサポートをするために塾の仕事を選び、highbrowを立ち上げた。


柔軟に捉えて、出たとこ勝負


––会社を設立するとき、新事業を始めるとき、どんな目標を設定する?
目標を決めるのは好きじゃなくて、出たとこ勝負の方が好き。それに、同じ目標をずっと掲げ続けているせいで、柔軟な判断ができなくなる方がよくないと考えている。生き延びるためにも、変わることは大切。だから、会社のみんなを振り回してしまうことも時々あって(笑)。そっちじゃなくて、やっぱこっちみたいな。でも、考えを変えるのには理由があるし、それは毎回ちゃんと説明しているつもり。

––「目標を決めない!」普通とは真逆の考えのような……。
当たり前のようにまかり通っていることを、真逆に捉えてみたらどうなるだろうって学生時代からよく考えていた。高校のとき、サッカー部のキャプテンをやっていて、上下関係をなくすとか、プレー中の敬語を禁止するとか、いろいろ試してみた。同級生からは、大ブーイングを浴びたんだけどね……(笑)。自分が下級生のとき、上下関係を気にして、力をうまく発揮できないことがあったから提案してみたんだけど、同じ考えの人は全然いなかった。


マイペースにゴールを目指す


––同世代と自分を比較して、焦ることはある?
焦ることは全くない。経営している会社の規模だったり、年収だったり、自分より上の人はいっぱいいるけど、特に気にしない。「結婚していないから焦る」とか、「年収が少なくて焦る」とかで悩んでいる同世代もいるけど、なんでそんな周りを気にするのかわからなくて……。多分、自分はタイプとしてカメなのかなと思う。童話「ウサギとカメ」のカメ。『最終的にカメが勝つ』ってことを言いたいんじゃなくて、相手を比較対象として捉えているかどうかの違い。ウサギはカメのペースを気にするから途中で寝ようとするし、カメはウサギのペースを気にしないから黙々とゴールを目指す。ウサギみたいに考えるから、周囲と比較して焦ったり、優越感に浸ったりするんだと思う。

––周囲と比較せず、どうやって現状の良し悪しを判断するの?
結果云々でなく、今の自分がやりたいことをできているかどうかで判断している。そう言うと「やりたいことがないから困っている」と返してくる人もなかにはいて、「やりたいことをどうやって見つけるのか?」とか、「モチベーションはどこにあるのか?」とか聞かれることがある。でも行動していないのに、やりたいことって本当に見つかるの?って思う。気になるのなら、とりあえず一回やってみるといい。そうすることで、やりたいことかどうかの判断ができるんじゃないかな。



––自分のなかで決めているルールや大切にしているマインドはある?
『成功は失敗のもと』っていう考え。

––『失敗は成功のもと』じゃなくて?
失敗から学べることはもちろんある。それとは逆に、成功体験が返って悪影響に運ぶときがある。外部環境が変わっているのに、前回成功したときと全く同じ手段で取り組んでもうまくいかない。状況や人に合わせて、考えや手段をつねに変えていかないと。そういった意味で『成功は失敗のもと』という考えを、つねに心がけている。



「変わり者」は武器になる!
独自の考えを持っている人、突飛なアイデアを発言する人のことを「変わり者」と一言で括ってしまうことがある。ただ、その言葉が長所なのか短所なのか、ずっと曖昧だった。しかし今回、小路永さんの話を聞いて「変わり物」は長所でも短所でもなく、ひとつの“個性”なんだと感じた。「目標は好きじゃない」「成功は失敗のもと」「挑戦にリスクはない」など、彼は独自の考えを持っている。いわば、彼も「変わり者」のひとりなんだと思う。けど、その独自の考えは、経験や疑問を積み重ねて生まれてきたものであり、状況に合わせて変えられる柔軟性もある。彼が「変わり者」であるけど、はみ出しものにならない所以はそこにある気がする。ヒトやコトによって帳尻を合わせることができるから、その個性が活きてくるのだ。「変わり者」はあくまで個性。それをどう活かしてプラスに働かすのかが、重要なんだと思う。


–Keita Syojinaga/1985年8月6日生まれ。株式会社highbrow共同代表。早稲田大学商学部 卒業後、株式会社キーエンスに就職。その後、塾会社での勤務を経て株式会社highbrowを設立。「DIET STUDY」「MILESTONE」「EDIT STUDY」を通じて、生徒たちの人生の選択肢を広げることを第一にhighbrowを運営している。




-Personal Items-



紙に書いて頭の中を整理することが多い。このペンを使って裏紙に、いろいろなことを書き込んでいる。紙に書き出すことで、文字が濃くなっているところは特に注力したいポイントなんだなって見返したときに気づく。そのため、ペンは文字の濃い薄いが出やすいものを使っている。


「EDIT STUDY」の授業で使う動画は、iPadを使って編集。他の塾がやっているような90分授業をそのまま流すのでなく、対話式授業に重点を置いているため、動画1本あたり5〜10分くらいでまとめている。

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