THIRTY-AGERS #002 - Tact Sato

「 30代は自分のペースで歩く」

photograph:Shin Hamada

People / may.18.2018

「30代って今が楽しければOKというよりも、その先のことを見つめるようになる年齢なんじゃないですかね」。LUKE magazineのコンセプトBOOK(5/18発売のanna magazine vol.11にブックイン)にイラストを描いてくれたイラストレーターTact Sato。一見ゆるやかなタッチの線画でありながら、背景のディティールやキャラクターの個性を緻密に描いた彼のイラストから感じられるのは、「物事を見据える感覚」。春日部市の団地で今日も自分の世界を表現する33歳、Tact Satoの30代の歩みとは。


自分の決めた道のりを長く続けるためにどうするか


––Thirty-agersのコンセプトを聞いた時どう思った?
30代はまだ未完成ってことを言いたいのかなと思いました。僕が子どもの頃に見ていた30代の人たちは、ものすごく落ち着いて見えたものだけど、いざ自分がなってみると、未だに悩んだり、新しいことを学んだり、一旦立ち止まってみたり。そんな風にコツコツと暮らしを過ごしていってるのが現状。周りの友達もそうやって暮らしている感じだけど、そうやってひたむきに過ごしている人たちの姿は、人間味が溢れていて、格好いいと僕は思いますね。

––どんな世界観をイメージしてイラストを描いたの?
周りのリアルな30代を通して、Thirty-agersのイラストを描こうと思いました。彼らが学んだり、悩んだり、立ち止まったりしている状況を、それぞれに意見交換ができるような、30代同士のハブ空間のような場所をイメージして描きました。今29歳の人が、これから30歳を迎えるときに、「30代はなんか面白そうだぞ」って思ってもらえるように、にぎやかな雰囲気にしてみました。

––同世代のことは普段意識したりする?
意識しているわけじゃないけど、よく遊ぶ人たちに30代が多いので、自然と刺激は受けているのかもしれません。次はこんな計画があるとか、こんなことにチャレンジしてるとか、姿勢や態度で見せられるから、ライバル関係とかではなく、同世代の人間って格好いいじゃんって感じることが多いですね。

––姿勢や態度ってもう少し具体的に言うと?
20代は刹那的に生きてる人が多かったように感じるけど、30代は自分の進む道が見えている人が多いような気がします。やりたいこと進むべき道がはっきりしているから、どうすれば長くやり続けられるだろうかって考えて行動している。例えば、カレー屋さんを経営している友達は、美味しいカレーを出すだけじゃなく、従来のカレー屋さんのイメージとは違った店内でゆっくりできるような居心地の良さだったり、格好いいメニュー表だったり、カレー以外の部分でけっこう工夫してたりする。その仕事を長く続けるために、あらゆる努力をしてるんだと思う。

––30代になって今だけじゃなく、先のことまで考えるようになったと。
そうですね。僕は、漠然と70歳くらいまでのことすでに考えてたりしますね(笑)。これから歩き続けていく長い道のりが見えてくるのが30代なのかなって思いますね。

––他に30代になって変わった部分ってある?
買い物の仕方が変わりましたかね。20代の頃は「流行ってるからこの服買ってみよう」とかだったけど、最近は「おじいちゃんになっても着れるかな」って基準で考えてます。本当にどこかのおじいちゃんが着てたんじゃないかという感じの古着とか(笑)。CDを買う時も同じように、これからずっと聴き続けられる音楽なのかって基準で選ぶようになりました。歳を重ねるうちに自分の好き嫌いもはっきりしてきて、単純に買うものが減っている気もしますけど。でも、部屋にこれだけ物が溢れてると説得力ないかも(笑)。


二人になるとどうにかなるもんです。
気持ちの面とか経済的な部分とか。


––30代になって不安を感じたことは?
今のところないです。今年から本格的にイラストレーターとして仕事をはじめたんですが、ちょこっとづつ仕事はいただいていて、着実に仕事を進めていけたらと思っているんですけど。

––30歳を迎えた時も特に感じたことはなかった?
なかった気がします。気付いたら普通に30歳になっていたって印象。当時、彼女と付き合って10年以上経っていたから、いつ結婚したらいいんだろうとかその方が心配でしたね。

––結婚はどうやって踏ん切りをつけたの?
お互い同い年で、付き合って10年目の時に、一緒に暮らしたら、もっと人生が楽しくなりそうと思ったので、結婚しようかって自然となったと思います。周りも既婚者が多くなってきたけど、お金が貯まったから結婚とか30歳になったから結婚とかいうより、自然と結ばれたって友達が多いので、結婚は二人のタイミングかと思いますね。

––結婚するのに心配はなかったんだ?
むしろ二人で暮らし始めてからの方が、不安のようなものは、解消されたと思います。家でイラストを描いていると、「絵を描いているだけでいいのかな?」「やっぱり他の仕事もしながらの方が…」とか思うことがたまにあるんだけど、帰ってきた奥さんが、「このイラストかわいいね」とか言ってくれたりする。あと、二人で話していると、絵を描くアイデアとか、絵を描く気力とかが湧いてくるので、そういうことでも、プラスかなと思います。

––結婚して良い関係が築けてるって理想だね。
結婚をするかどうかで、悩んでいるのであれば、してみるのも良いかと思います。結婚は、一大イベントだから不安に思うこともあるだろうけど、こんな僕でも成し遂げられたので、「大丈夫だぞ」って言いたいですね。二人になることで気持ちの部分とか経済的な部分で強くなれる。お互い支え合えば、やれることの幅が広がるかもしれないし、好きなことに費やせる時間も増やせるかなって思います。


Thirty-agersが目指すべきはさんまさん!


––30代のうちにやっておきたいことってある?
いま33歳だからあと7年。東京オリンピックのような大きなイベントに関われたら面白いなって思ってます(笑)。それで考えたのが自分のイラストを使ったスケボーデッキを作ること。スケートボードが五輪の種目になったから、自分のデッキがリリースされて、かっこいい選手に使われたら、嬉しいなと思っています。

––30代の格好いいってどういうことだと思う?
マイペースでいること。自分のペースで動けているのがいいんじゃないかなって思います。20代は「とりあえず何者かにならなきゃ」とか、なんとなく立ち止まれないムードがある。けど、進むこともできるし、止まることもできるようになるのが30代なんだと思う。自分をコントロールできる余裕を持てたら格好いいですね。

––そのマイペースを体現している人はいる?
自分が30歳超えてから格好いいなって思えたのが、芸人のさんまさん。昔は単純に面白いって部分をすごいと思っていたけど、生き方にブレがないのが、本当に格好いいなと思います。仕事でもプライベートでも姿勢を変えることなく、常にみんなを笑顔にする芸人で居続ける。それって、それだけ自分の中に確かな道があるってことだと思うので。Thirty-agersが目指すべきはさんまさんの生き方じゃないかな(笑)。


信頼できる同世代の仲間


LUKE magazineのイラスト発注がきっかけで出会ったTact Sato。今回改めて彼がどんな思いでイラストを描いてくれたのか、Thirty-agersとしてどのように生きているのか話を聞くことができて、とても面白かった。特に僕自身も悩みの真っ只中にいる結婚について、『「大丈夫だぞ」って言いたい』という言葉を聞けたのはなんだか嬉しかった。ブレることなく歩みを進める彼のイラストは、きっと東京オリンピックで使われるスケボーデッキの裏も飾るんだろうな。

Tact Sato/イラストレーター。1984年生まれ。イベントのフライヤーを描き始めたのがきっかけで、
夫婦で友達のお店のBGM、ZINE、CDジャケット、Tシャツ、トートなどを作って、マイペースに活動中。企業向けのイラスト制作、各地で個展開催やイベントにも参加。HP


−Personal Items−


Tact Satoがいつもイラストのアイデアを書き込んでいる小さなノート。都内での打ち合わせが多いため、移動中行き帰りの電車の中で書き込むことが多いのだとか。


彼の憧れのイラストレーターロバート・クラムと真鍋博の書籍。他にも部屋の中には好きな雑誌や参考資料がたくさん置かれていた。

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