「女と男の観覧車」を語る男と女

TYPE OF MOVIE-映画を観る男と女 #3

「女と男の観覧車」を語る男と女

Illustration : TOMIMURACOTA

People / 2018.06.19

同じ映画を観ているのに、男と女で楽しみ方が全く違うことがある。印象に残っているシーンも、心に刺さったセリフも、劇中の曲に対する評価も違う。それなのに、意外と同じ場面で一緒に涙を流していたりして……。コンテナー初の映画レビュー企画「TYPE OF MOVIE」では、そんな男と女の感性の違いにフォーカスを当てながら、今注目の映画を紹介していきます!


【今回の映画】

「女と男の観覧車」



舞台は1950年代のコニーアイランド(ブルックリン区)。主人公のジニー(ケイト・ウィンスレット)は、元女優で、今はコニーアイランドの遊園地にあるレストランで働いている。再婚同士で結ばれた夫のハンプティ(ジム・ベルーシ)、そして自身の連れ子と観覧車の見える部屋で暮らしている。しかし彼女は、夫に隠れて海岸で監視員のアルバイトをしているミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と付き合っていた。平凡な毎日に失望していたジニーは、脚本家を目指すミッキーとの未来に夢を見ていた。だが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていたハンプティの娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れたことから、すべてが狂い始める。

【映画を観た男と女】
男(40歳)/若い頃は「パルプフィクション」、「ギルバートグレイブ」、「ナイトオンザプラネット」、「トゥルーロマンス」など90年代のアメリカ作品をよく見ていたが、最近は映画を見る機会がめっぽう減ったという男。今回、ウディ・アレン作品を初めて鑑賞。

女(28歳)/王道なら「グッドウィルハンティング」、最近の作品だと「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」「幸せの隠れ場所」などの泣ける映画が好き。そして鑑賞後は、もちろん号泣。L.A.を拠点にカリフォルニアを回ってみたいと言う女。

【男と女の映画レビュー】
Q.最も印象に残っているシーンは?
/コニーアイランドのビーチが賑わっている最初のシーン。冒頭から一気に映画の世界観に引き込まれました。

女/ジニーの息子のリッチーが、ビーチで放火をしている最後のシーン。大人の不純な恋愛にかきみだされ、恋人同士の喧嘩や失恋よりも実際に傷を負っているのは、自分の力じゃどうしようもできない子供のような気がして感慨深かった。

Q.「女と男の観覧車」のみどころは?
男/主人公の頭痛のシーン。とにかく息つく暇がないほど、主人公の喜怒哀楽の感情が激しく動き続ける展開で、良い意味でとても疲れる映画でした。

女/女性の執着心と男性の遊び心。女性は思い通りにいかない恋愛でもあんなにも執着し、感情的になるところに恐怖を感じた。男性はとっても大事な言葉をペラペラと簡単に伝えてしまうことことが、安易で罪だなと感じた。

Q.あなたが思うベストアクター賞は、だれ?
男/ケイト・ウィンスレット。偏頭痛持ちの主人公の不安定な感情がマックスになる度に頭痛が発生するのが印象的でした。

女/ジャスティン・ティンバーレイク。歌手として知っていましたが、彼の演技を初めて見て違和感なく演じていたのですごいと思った。やっぱり歌手だけに声が素敵!イケメンだし、チャラ男だと分かっていてもそれに魅了されて好きになってしまうジニーやキャロライナの気持ちは分からなくもないかも!?

Q.この映画の舞台、1950年代のアメリカにどんな印象を持った? タイムスリップできるなら、行ってみたい?
男/すみません、ストーリー自体に引き込まれたため、舞台がアメリカであること、50年代というところに全く目がいかなかったです。

女/広くて大胆で自由! 大雑把ですがそんなイメージを持っていて、この映画でもそのイメージのまんま。むしろ自分の思っていた広くて大胆で自由な部分は想像を上回っていたかもしれない。タイムスリップできるなら、行ってみたい! けど「男と女の観覧車」の世界に巻き込まれないコニーアイランドに行ってみたい。笑

Q.「女と男の観覧車」にキャッチコピーをつけるなら?
男/「400m走」
息つく暇のない展開で、全力で長い距離を走らされているイメージを持ちました。そして走り終わった後の充実感が、陸上の短距離走の中で一番距離が長い400m走と被りました。

女/「盲目の恋を知り、真実の答えに溺れていく」
恋は盲目というけれど、見えなくなってしまった真実を知った時、すでにもう溺れていて抜け出すことができなくなり、現実からも打開できない苦難を表している。

【そして、3人目(男)の映画レビュー】
「女と男の観覧者」について、ウディ・アレンは「恋愛は多くの人を苦しませ、争いを引き起こし、複雑かつ強烈で劇的な感情や状況へ導く。本作は愛と裏切りについて描いた作品だ」と語っている。恋愛に溺れている人を傍から見ると、愚かだと感じる。嫉妬からなのか、欲望からなのか、純真からなのか、恋愛のせいで人は思いがけない言動を発することがあるからだ。今作の主人公ジニーもそう。感情がぐちゃぐちゃで、不倫相手のミッキーへの執着心が強く、ときにモラルに反するような行動をとる。今回の映画を観た男も女も、ジニーの悪質な振る舞いに圧倒されている。でも、これが女性の、いや人間の性なのかもしれないと感じて、少し怖くなってしまうのも事実。恋愛は美しくもあるが、とても脆い。ウディ・アレンが描いた今作は、それを象徴するものだ。気になる相手と一緒に「女と男の観覧者」を観て、ジニーに共感できたか、それとも嫌忌したのか、鑑賞後に語り合ってみるといい。そうすれば、恋愛に発展したときの相手の身持ちが分かるかもしれない……。また、50年代のコニーアイランドもポップでキュートなため、映画の世界観にも注目してみて!


「女と男の観覧者」
公開日:6月23日(土)
監督・脚本:ウディ・アレン
出演ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジュノー・テンプル、ジム・ベルーシ
原題:WONDER WHEEL
配給:ロングライド
© 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
http://longride.jp/kanransya-movie/


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