出版社の日常-#4

書を持ち街に出よ

Prod: Yasuhiro Kaminaga(TWO VIRGINS)

People / oct.02.2018

“皆さまのライフスタイルにちょこっと混ぜていただきたい出版社”トゥーヴァージンズが、出版社ならではの視点で切り取った本のこと、書店のこと、出版業界のことをあれこれと綴るこの連載。
第四回は、本が持つかっこよさとその正しい使い方をご紹介。



「書を持ち街に出よ」
かつて、そんな名言がありました。
いや、ないか。

ところで現代、人は月に何冊くらい本を読むのだろう。
私は読書家ではないので月に1〜2冊読むか読まないかといった程度だが、「本」は常に持ち歩いている。
いわゆる「スマートフォン」が従来のケータイ普及率を上回ったのは2013年で、それからまだ10年も経っていないが、人々のライフスタイルは急速に変化した。その例を挙げればきりがないが、そのひとつが、圧倒的に本と向き合う時間が減ったということ。

出版業界に従事する身ではあるが、実は私、これは非常にいい状況だと考えている。
皆がスキマ時間にスマホを見る事が当たり前の時代に、おもむろに後ろポケットから(スッと)文庫を出し、読み始めるところを想像してみて欲しい。

「え?ちょ、あの人。本読んでる! 知的! 素敵!」となる。

いや、ホントホント。

今回はそんな本来本が持っている「かっこよさ」を検証し、その正しい「使い方」をいくつかの事例を交え紹介したいと思う。

【scene1・移動】


身支度に手間取ったといえばそうなる。
髪型が決まらなかったんだ。今日は初デート。
急いでタクシーを捕まえなきゃ。



解説:タクシーを停めるにもスマートさは必要である。
ただ手を挙げるだけでは通り過ぎてしまう可能性が高い。
本でアピールする事により、乗車率を上げる事ができる。

タイトル:(株)貧困大国アメリカ(岩波新書)
版元:岩波書店
初版:2013年6月


【scene2・待ち合わせ】


待合場所は原宿駅改札。
約束の13:00前には到着。
彼女を待たせる訳にはいかない。



解説:ただでさえ通行量の多い都心の改札では大型絵本がおすすめだ。
あ、いた!と見つけやすいから。大型であればあるほどやさしさが溢れる。

タイトル:すてきな三にんぐみ(大型絵本)
版元:偕成社
初版:1969年12月


【scene3・蕎麦屋】


Lunchに気取った店はいけない。
初デートならなおさら。
ましてやシティボーイを謳ってるオレには行きつけの蕎麦屋くらいいくつもある。



解説:蕎麦屋といえば、まず思い浮かぶのが暖簾。こいつが厄介だ。くぐるか、よけるかで印象はずいぶん変わる。
ここは、右手で優しく払い、小脇に本! 大抵はこれでキマる。

タイトル:MEZZANINE vol.1
版元:TWO VIRGINS
初版:2017年6月


【scene4・代々木公園】


彼女のどこが好きかって?
そりゃ、いろいろあるでしょ!あえて言うならば?…
え、ちょ、ここカットしてくださいよ~笑



解説:彼がどんなセリフを吐いたか知る気も無い。ただ、照れた顔を本で隠す彼女がかわいい事に変わりはない。赤色の新書という選書のセンスも良い。

タイトル:ルポ貧困大国アメリカ(岩波新書)
版元:岩波書店
初版:2008年1月


【scene5・別れ】


悪気なんてないですよ!泣 
浴衣をほめるつもりが、彼女に言わせれば元カノと比べてるって。
どうして俺は、いつも…



解説:とはいうものの本の角でゴッチンされるのは逆になかなかありません。うらやましくも見えます。

タイトル:性を強くする法 ~大人の性教育教室~
版元:三洋出版社
初版:1961年12月


【scene6・コンビニの前でべったり座る】


いいんです。別に。
全然気にしてないですよ?おれモテますからね。
昔原宿歩いてたら、芸能事務所から…



解説:いい大人がコンビニの前でカップ麺を食うなんてありえないが、フタの重しの替りに本。洒落てる。

タイトル:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
版元:日経BP社
初版:2011年12月


【scene7・もう寝る!】


あ~寝っむい!
昨日全然寝てないから寝っむい。
寝てないから今日いつもの実力だせねぇ~よ~



解説:ホントに寝ているのかどうかは知りませんが、夕日とUVを本でカットするところがニクい。

タイトル:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
版元:日経BP社
初版:2011年12月



以上である。今回挙げた使用例は、ごく自然に生活に「本」が溶け込んでいる一例に過ぎない。紙の本は読むだけではなく、いろいろなシチュエーションにコーデできる優れた文化である事がおわかりいただけたかと思う。せっかくなので皆さんもこれを機に、とりあえず「本」を片手に街に出てみてはいかがだろうか。


STAFF
Photo:黒川デザイン事務所
Performance:長島(営業)/石田(編集)
Prod :神永

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