The Route #10「anna magazine編集長の取材日記」

シャンプーとキメ顔。

anna magazine vol.11 "Back to Beach" editor's note

Contributed by Ryo Sudo

Trip / may.28.2018


「シャンプーとキメ顔」


3/27。

朝、熱いシャワーを浴びる。

ジャニスが亡くなったHighland Gardens Hotelは、意外に現実的な価格だった。フロントあたりのギラギラした雰囲気はいまひとつだけど、木漏れ日が気持ちいい中庭やプール、奥の建物はLAとは思えないほど静かで、とても感じのいいホテルだった。



今回の旅で気づいたこと。
大きな街になればなるほど、ホテルのシャンプーの泡立ちが良くなるということ。シャワーブースは驚くほど小さいけど、気持ち良いシャワーを浴びる。

パーティーのオーガナイズとか、ディージェーのブッキングとか、カタカナばかりで僕にはいまひとつよくわからないけど、とにかくコーディネーターの彼はその段取りが本当に素晴らしい。ミスター「気配りのススメ」だな。

今日はLAで静かに流行中だと言うサボテンのお店をいろいろと紹介してくれるとのこと。助手席に乗った彼は、弊社スタッフのパンチドランカーさながらのヨロヨロ運転の面倒を見つつ、道中、まるで「はとバス」のガイドさんのように、街の耳より情報を教えてくれる。この付近には最近、こんな感じの連中が住み始めてるとか。数年前からシルバーレイクが人気になって家賃が高騰したから、今はエコーパークやハイランドパークが現実的で人気が高いらしい。



近い将来は、街から少し離れた山の近くで暮らしたいのだという。パーティーとかイベントとか、人の密度もテンションも異常なほど高い仕事を生業にしているのにも関わらず、自然や庭がすぐそばにあるような、ゆったりとした暮らしに憧れている。やっぱり人生にはスピード感の強弱が必要みたいだ。

1軒目のサボテンショップは、アリゾナのおしゃれ姉妹が始めた店。細かなところまでとても可愛くディレクションされていて、サボテンビギナーに優しいショップだった。この取材のために朝早くから一生懸命掃除していたらしく、本人たちも、いつもよりずっとおしゃれな服を着てきてくれたようだった。キュートだね。カメラを向けると最高の笑顔でキメるのが、アメリカ人っぽい。



2軒目はタイ人の6姉妹が経営している店で、さっきの小さな店とは規模が違った。最初はみんなとても取材を恥ずかしがって、特にリーダーっぽい女性は奥に隠れてしまっていたけれど、ライターがあれこれとサボテンについて質問したのが心に響いたのか、時間が経つにつれて熱心に話をしてくれるように。お店そのものはホームセンターのような佇まいだったけれど、サボテンはもちろん、育てるための土づくりとか、最適な鉢とか、ディテールまでこだわった店だった。そういう部分がアメリカとアジアの文化の違いなんだと思う。



アメリカ人の多くは、ディテールを追求するよりも、全体をセンス良く楽しそうに演出するのが上手だ。それに比べてアジア人の多くはとても繊細で、ディティールまで意識を向けるのが好きだ。どちらも魅力的だと思うけど、長く付き合うのならアジア人カルチャーがベースの方が心地いいかもね。

コーディネーターは「植物に携わる人は優しい人が多いんだ」と言っていた。僕もその通りだなと思う。サボテンのように「生きている」相手とコミュニケーションするのは、多分とても繊細で、思い通りにいかないことばかりなんだと思う。いつだって相手の状況を考えることに慣れているから、人に対しても優しくなれるんだ。

3軒目はとてもクールだった。あらゆるディティールが、モダンにディレクションされている店。論理的にサボテンの魅力を語るオーナーの隣で、「プロフェッサー」と呼ばれていたサボテン博士のパートナーの言葉は直感的で、脈絡がほとんど感じられなかった。



4軒目は最高だった。本業はTVの大道具をつくる会社のオーナーらしいのだけど、小さい頃からのサボテン好きが高じて10年前に店を出したらしい。店の案内もそこそこに、「プライベートコレクションを見せてやる」と自宅に誘ってくれた。素人でもひと目で理解できる「本物」が、自宅の庭とは思えない巨大なスペースにこれでもかというほど並んでいる。彼は心から楽しそうに、可愛がっているサボテンの自慢をする。「好きなもの」を追求し続けるって、やっぱりかっこいいね。



「今回の取材は、僕自身を試されている感じでした。媒体とかそういうことよりも、僕自身を信用してもらえないと、そもそも取材を受けてもらえないから。自分の現在地を知るためにも、この機会はとても良かったです」と帰りの車の中でコーディネーターは取材を振り返っていた。
彼の視点はとても面白い。アメリカに住んでいるから彼もローカルのひとりには違いないのに、あくまで日本人として、どこか「外側」からの視点で語る。まるで外国映画を観たあとに、誰かにストーリーを話す時みたいに。



UCLAに通っていたことが今の彼のスタイルを作ったらしい。アメリカ、ロンドンはもちろん、クロアチアやコソボまで、世界中にUCLA時代の友達がいる。世界のどこに行ってもつながれる誰かがいる、ってすごいことだ。彼はジャーナリストがうらやましいとも言っていた。どれだけ仲が良くても普段の会話では話さないようなことを、取材となると、出し惜しみすることなくスラスラと話してくれるからだという。紹介してくれたサボテンショップも足繁く通っていたのにも関わらず、今回の取材で初めて知ったことがたくさんあったらしい。編集という仕事の面白さを実感できてとてもうれしかった。



最後は州立大学の演劇学科に通う女の子たち。ひとりひとりでも可愛いけど、4人が並ぶとさらに可愛いなと思っていたら、並んだ場合のベストなバランスを緻密に考えてオファーしてくれていたらしい。最高だね。
彼女たちはクラクラするほどまっすぐだった。
少しも照れることなく自分の夢を熱く語る4人を見ながら、僕は大好きだったアメリカのドラマ「フェーム」を思い出していた。



近頃、anna magazineに参加した人たちから「これってannaらしいと思わない?」と言う言葉をよく聞くようになった。それは「情報の取捨選択の基準」がはっきりしているってこと。つまり、このメディアのコンセプトがきちんと伝わっているということなんだと思う。軸がぶれないメディアは、とても強いメッセージを端的に伝えることができる。

夜は明日の撮影の打ち合わせ。初めてUberを使ってみた。
便利すぎる。
こんなテクノロジーが世界を劇的に変えるんだ。

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