さーふぃん

えもーしょん 中学生篇 #2

さーふぃん

2010〜2013 /カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2019.12.10

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#2 「さーふぃん」
(2010〜2013/カイト・中学生)

ごぉぉぉぉぉおぉぉぉおと
海が唸る、音が聞こえる。

興奮して起き上がる。ボク

ベットを飛び出し、パジャマを脱ぎ捨て
フルチンで廊下を走る。

ウエットスーツに着替え
ボードを取り出し
WAXを塗り、裸足で玄関を飛び出す。

昨夜の、豪雨で道路はびちょびちょ。

ペチペチ、パチパチとボクの足音。

周りの景色が見えない程に
海だけを見つめ、走るボク。

134を渡り
防風林を抜け、海へ出る

真っ青な空
真っ白な太陽
眩しいほどに光る海

周りを見れば
綺麗に割れる波。
突然の暑さで砂浜は蒸し
カラスもトンビも鳴いている

最高の景色が広がる。

波は肩〜頭
ボクには少し大きいけれど
へっちゃら。

軽くストレッチをして
海へ飛び込む。

冷たい水がウエットスーツの
ジップから染み込む。

ボードに乗り
沖へ向かいパドルする。

押し寄せる、台風の波を
超えては、潜り、超えては潜る。

生まれたての子亀のように
ひょろひょろなボクを
沖から心配そうに見つめる
みんな。

嬉しくて、嬉しくて笑いが止まらない。

沖へ出ると、みんながいた。

仕事前に、海へ来ているみんな。

「かいと、大丈夫か?」

ごぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉ。と
唸り続ける、波の音の中で聞こえる
優しい、スギの声。
ボクの大好きな師匠。

「ぜんぜん、よゆう〜」とボク

笑うみんな。

セットが見えると一斉に波を追いかける。

みんなの後を追うボク。

「かいと、ゴー!ゴー!」と

喝を入れるかのように叫ぶ、師匠と

ピーピーと、手笛吹き応援してくれる

みんな。

波に乗る。

それまでの
全ての景色が見えない。

見えるのは、波の斜面。

聞こえるのは、波とボードがパチパチと
当たる音。

足を伝い、感じるのは、波の振動。

クルッと、ターン

そろり、フローター

きっちり、ラストを決める。

乗り終わり、沖を振り返る。

みんなが手を広げボクを見る。

この景色がボクのすべて。

もう、今日は学校なんて行かないや。

そんな事を考えながら

少しゆっくり

少し遠回りして

家へ帰る。


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