漂流物語 サバイバル篇

えもーしょん 高校生篇 #23

漂流物語 サバイバル篇

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.08

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#23
「漂流物語 サバイバル篇」
(2013〜2016/カイト・高校生)

30分ほど、最高な三角ピークを

眺め、気がついた。

サーフボードがない。

これは、致命傷だ。

と、言うよりも

この事実を自覚した瞬間

完璧な、パラダイスが

一瞬にして、過酷なサバイバルに

変わったのだ。

そう、ボクは

ミルキーなきめ細かい砂浜。

完璧な三角ピーク。

微かに揺れる、ヤシの木に

まんまと、騙されて

やって来てしまったのだ。

なんてこった。

いきなり、帰りたくなって来た。

冷たい、オレンジジュース。

いや、冷たい炭酸水。

いや、冷たい飲み物ならなんでもいい。

コンビニへ行きたい。

チョコチップメロンパンが食べたい。

パニック寸前だ。

落ち着け、落ち着け。

まずは深呼吸。

ふぅ。

よし、ここには

冷たい飲み物も、チョコチップメロンパンも

なにもない。

あるのは、そう

ヤシの木に、ミルキーなきめ細かい砂浜に

完璧な三角ピーク。

まずは、これが栄養だ。

よし。

木を切ろう。

そして、ボードを作ってから

家を作ろう。

その前に、まずは

木を切る石を探さなくては…。

島の中央部へ、

草をかき分け、進む。

大きな石を1つ

砂浜へ運び

小さな石をその上で擦る…。

斤の形になるように

ひたすら、擦るが…

ガリッ

「いてぇ!」

つい、何度も手を一緒に擦ってしまい

しばし、静止。

こんなの、何時間かかるんだ。

完璧な三角ピークが

嘲笑うかのように割れている。

イライラがつのる。

よし、こうなったら!

と、服を脱ぎ捨て

全裸になり

完璧な三角ピークへと

クロールする

そう、ボディサーフィンという

強行手段を選んだのだ。

さて、クロールで向かうが

ピークまでは、約150m程だろうか

25mプールでいうと

そうね、3往復ほど。

サンサンと照りつける太陽と

ひたすら割れる波に

何度も挫けそうになりながら

クロールをしては、潜り波をかわし

クロールをしては、平泳ぎになり

陸を見ては、今帰るべきか…

と、悩み

沖を見ては、あと何メートルかと

推測し

なぜ、ボクは泳いでいるのかと

完全に我を失いつつある。

そして、何か違和感を感じ

一度、立ち泳ぎをし

止まる。

そして、陸を見ると…!

やはり、そうだ!

どんどんと、塩の流れに乗り

遥か彼方へと、流されているではないか!

クソォォォ!!!

なんてこった!

どんどん、流される体を

腕力と脚力だけを信じ

必死に、陸の方へ泳ぐ

なんとか、ギリギリ足のつく場所まで

辿り着くと、即座に

泳ぐことをやめ

サンゴなんて、気にもせず

陸へ向かって走る。

ミルキーなきめ細かい砂浜に

倒れ込み

叫ぶのだ

「なんて日だ!!!」と。

ありったけの体力を使い果たし

砂浜に倒れ込んでいるわけだが

これから先、どうするかなんて

考える、体力も残ってはいなかった。

そう、ここからは

サバイバルではなく、本格的な

“遭難”が始まるのだ。

続く…。


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