折れたボードはお箸で繋ぐ

えもーしょん 中学生篇 #35

折れたボードはお箸で繋ぐ

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.05.29

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#35 「折れたボードはお箸で繋ぐ」
(2010〜2013/カイト・中学生)


見事なまでに、一直線のダンパーさん。

「あ!」

と、言いつつも

少し覚悟を決めて

降りる事に。

フワッと浮いて

ストンと落ちる。

バキッ! と音がして

ボクは巻かれる。

グルグルグルグルと

巻かれているボク。

左足のリーシュ。

なんだか、軽い。

嫌だ。嫌だ。嫌だ。

絶対、嫌だ。

こんなにも、巻かれていたい。

なんて、思うのはこの日だけだった。

頭上に光が見え

ぷは! と浮上する。

そこに待っていたのは

あまりにも、切なく

無残な、ボクの新しいボードだった。

彼は、見事に真っ二つに折れ

もう一方の片割れは

ビーチに流れ着いていた。

巻かれている間リーシュコードで

引っ張られ

リーシュカップがえぐれている。

「あー、最悪だ」

とにかく、折れた

テール側のボードを拾い

次に来る波に

ビート板のように乗り

ノーズ側を迎えに行く…

ビーチにたどり着くも

足が重い。

亡骸を拾いに行くなんて

心臓がえぐられるほど辛い。

折れたボクの新しいボード。

くっつくか、くっつかないかなんて

今は想像も出来ない。

パパとかママとか、みんなは何て言うだろうか

ボクが悪いわけでもないから

なんとも言えないこの気持ちを

誰か、理解してほしい。

2つの亡骸を抱え

完璧な台風スウェルを背に

ボクは、とぼとぼと

ビーチを歩く…。

さっきまでの松林も

なんかムカつく。

車のいない134。

なるべく帰りたくないボク。

珍しく、陸橋を渡る。

濡れたアスファルトも

落ちている、葉っぱも

だんだん、イライラしてくる。

家の前の、倒れたゴミ箱。

少しいい気分。

家の門は、今までで

1番、重い。

ギィィィ。

と、門を開けると

すぐにシャワーへ向かい

ボードを一旦隠す事に。

シャワーを浴びて

こっそり家に入り

服を着て、タオルを持って

工具箱に入っている。

ソーラーレジンをありったけ

かき集め

机の引き出しに入っている。

割り箸を6本持ち

亡骸のもとへ。

よし。と

テール側に割り箸を3本差し込み

ノーズ側に3本。

ぴったり、水平を保ちながら

2つをグイッとくっつける。

少し、押したり引っ張ったりしながら

なんとか、何事もなかったかのように

くっつける。

仕上げに、ありったけの

ソーラーレジンを塗りたくり

そぉっと、倉庫に入れる。

次の日の朝

「かぁぁぁぁぁい!!!!!!」

と、パパの叫び声で起きる。

涙が止まらない。


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