ボクとサーフィン

えもーしょん 高校生篇 #32

ボクとサーフィン

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.02

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#32
「ボクとサーフィン」
(2013〜2016/カイト・高校生)

サーフィンとは、難しい。

今となれば

サーフィン=スポーツ。

例えば

「サーフィンって、難しいスポーツだよね」

と、誰かが

簡単に口にする世の中になりつつある。

しかし、そんな簡単な話だろうか

自然と共に、生活し

自然を理解する必要がある。

彼らは、ボクらのコントロール下には

決して、なることはない。

もっと、もっと難しいのだ。

話は戻って

ある大会へ向かう車の中。

デコピン大会が、終わり

眠っていたボクを

怒鳴った先輩は

ぐっすり、夢の中。

目的地に到達すると

ホテルの部屋へ。

彼らの、荷物を運ぶのが

ボクの仕事だった。

彼らは、移動の疲れを癒しに

足早に、部屋へ向かい

ゆっくり、休むのだ。

荷物を運び終わると

今度は、コンビニへ。

買い物を頼まれ

買いに行く、みんなの元へ届け終わる頃には

夜になり、やっとボクは

眠りに就くのだ。

朝、4時

みんなを起こしに、早めに起きる。

部屋をノックし

起こすが、うるさいと

怒鳴られる朝。

ホテルの目の前の会場。

わからないまま、また

試合開始のホーンと同時に

海へ向かう。

どんなにボクが気持ちよく

波に乗ったとしても

それは、時に悪となってしまって

ボクが、自分をなくして

乗りたくもない、波に乗って

走りたくない、ラインを描く事が

それが、正義となってしまうのだ。

負けた後の、すれ違う人の

視線は、氷よりも冷たい。

勝った後に残るのは

葛藤しかない。

ボクにとって、大会とは

それだった。

戦う理由がわからない。

正直に話をすると

永遠と、怒鳴られたこともある。

結局、みんなもわからないのだ。

「この大会で、プロになれなかったら
ボクはもう、サーフィン辞めるね」

ママに、そう伝え

家を出た。

ヒートの残り時間は

ラスト、5分。

ボクに必要なスコアは

3.8pt

たった1本

セットをつかんで、乗れば

それでよかった。

遠くの沖からやって来るセット

漕ぎ出すパドルが重くて仕方がない

「乗りたくない」

「もう、サーフィンしたくない」

ボクは、正々堂々と反則をした。

カウントダウンよりも前に

海から上がり

先輩達が、ボクを怒鳴る。

けれど、どこかスッキリしたボクには

なにも聞こえない。

笑いが止まらない。

彼らが、惨めに思えたのは

不思議だった。

大会に、どれだけ

みんなが、囚われていること。

結果に囚われて

本当に気持ちのいいサーフィンを

忘れてしまった彼らが

可哀想だ。

初めて、ボードに立ったあの瞬間。

波の上に、水の上に、立ったあの瞬間

波の上を滑る、あの感覚を

彼らは、コントロールし始め

支配し始めてしまったのだ。

波をえぐり、波を蹴飛ばし

波から飛び出すなんて。

そうじゃなかったはずだ。

大好きな人が、ボードを押し

ボクは、立った。

1人で、沖まで出ると

今度は、2人で波に乗った。

そうすると

友達ができて、みんなで波に乗った。

それだけが、ボクとサーフィンだったのだ。


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