波に乗ってエスケープ

えもーしょん 高校生篇 #35

波に乗ってエスケープ

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.05

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#35
「波に乗ってエスケープ」
(2013〜2016/カイト・高校生)

季節は夏。

時間は、昼。

やることもないし

なんか、イライラするし

イライラして

なにかしようと思うけど

なにもないから

イライラして

旅に出ようと思うけど

暑すぎて、動きたくない。

プールへ行って涼むのも悪くないけど

プールへ行くまでが問題。

家のドアを開ければ

灼熱のサマー

一瞬、くらっとしてしまって

それっきり。

なんて、こともあり得るので

やっぱり

外には、出られない。

出ない方がいい。

夏の過ごし方がわからない。

朝焼けは、じめっとした空気に

柔らかく、差し込んで

夕焼けは、疲れたボクに

お疲れ様。と優しく

語りかけるほど綺麗だ。

家の外は、天気が良くて

空は高いし、雲はいい形で

なんだか、気分まで晴れるのに

気温が…

気温が、高すぎる。

軽井沢、北海道?

避暑地?

とんでもない。

避暑しない。

避暑もったいない。

それなら、外へ出て

旅へ出よう。

そう、思い

リュックに

お菓子と、お水と、パンツと靴下

Tシャツと、海パンを入れて

いざ、外へ出る。

目的地はない、とにかくまずは

電車に乗って

どこかへ行く事が最優先だ。

一歩、また一歩と

駅へ向かう道のりが

砂漠のようだ。

暑すぎて、本当に溶けそうだ。

無理だ。

家に帰ろう。

ボクのたった3歩の旅は

戻るのに5歩を要した。

なんてこった。

やっぱり、無理だ。

冷凍庫から、アイスを取り出し

片手にはポカリスウェット。

ボクは、自分のもやしっぷりに

呆れ、眠ってしまった。

首が痛くて、起きたのは

17:30のことだった。

外は、気持ちのいい風が吹いている。

まだ、なにもしなくても

汗が止まらない気温だが

なんとか、海までは行けそうだ。

ボクは、ボードを抱え

海へゆく

波に乗って、このまま

エスケープ。

なんて気持ちのいい言葉を

波の上で吐いた。

夏の思い出。

えもーしょん。


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