ちょっと無理

えもーしょん 中学生篇 #63

ちょっと無理

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.11.25

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#63
「ちょっと無理」
(2010〜2013/カイト・中学生)

初めての年上彼女ができてすっかり浮かれるボク。

みんなに、自慢したいけど「内緒なら」と言ってしまったので

あんまり言えない。

それどころか、同じクラスの友人のお姉ちゃんだって事を思い出し

ますます言えるわけがない。

こうなると結構まずいな…全然口が固くないからついポロリしてしまいそう…。

難しい…でもみんなが気付くのも時間の問題だろう。

だって、毎日迎えに来ているから…。

彼女は弟を迎えに来ているように見せかけているけど

「一緒に帰ろう」とLINEしてくるので一緒に帰る。

同級生の友人は、「なんでかいと?」と言葉にはしないけど

頭の上にハテナが浮かんでいる。

が、まさか自分のお姉ちゃんとこのバカなかいとが付き合うなんて到底思わないので

「かいとバカだからなんかついて来た」くらいにしか思っていないだろう。

ボクは、何故か誰にも疑われずに普通に彼女と同級生の弟と一緒に

彼女の家に3人で帰り、時には夜ご飯も食べることもあった。

しかし、そんなある日。

彼女の家で彼女と彼女の弟、彼女のパパ、ママとご飯を食べていた時のこと。

ちょっといい感じに酔っ払った彼女のパパが「お前たち付き合ってんのか?」と

遂に、ポロリ。

おそらく、家の中では話題になっていたのだろう。

彼女のママは箸を置き、じっとこちらを見ている。

同級生の弟は、目を瞑り気配を消している。

胃が痛くなるような沈黙が流れた…。

沈黙は続いた…彼女のママはポロポロと涙を流し笑っている。

色んな感情が混ざり、おかしくなってしまったようだ。

ここは、もう言うしかない!

そう、思い「はい、内緒で!」とちょっと元気よく言ってみた。

彼女のパパは笑い、ママは泣いた、弟は未だに目を瞑り気配を消している。

彼女のママはもう狂ったように質問責め

「いつから!?」「本当なの!?」「ねぇ、本当なの!?」と言うので

ボクは「はい、内緒で!」「内緒です!」しか返せなかったが

彼女のママはもう納得したようだ。

ご飯を食べ終わり、修羅場も潜ったところで

彼女のパパが「今日は泊まっていけば?」と言った。

彼女はキラキラした目でボクを見た。

ボクは、「いや、それはちょっと無理です」

と、答えると彼女は怒って部屋に行きボクは家に帰った。

無事、帰宅したことを伝えるとなんで泊まらなかったのかと

大喧嘩に、「やっぱガキね!!!バーーーーカ!」みたいなことを言われた中学三年生の秋。


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