やっぱり君はスパイなのかい?

えもーしょん 中学生篇 #69

やっぱり君はスパイなのかい?

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.17

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#69
「やっぱり君はスパイなのかい?」
(2010〜2013/カイト・中学生)

雪が降り続くなか、やっとキャンプ地を決め

心配していたけどちゃんとテントを持ってきていたジュン。

「建てよう~」

と、彼が取り出したテントは絶対2人用じゃない。

ボクはこれをテレビで見たことがある4~5人用で家みたいなテント。

中学生がお小遣いで買えるような値段じゃないこともボクは知っている。

笑顔でテントを組み立てるジュン。

ボクの心の奥底で、やっぱりジュンは

どこかの国のスパイなんじゃないかという思いが湧き上がってくる。

テントを建て終わると、ジュンはボクの心を読むかのように

「かいと、靴下乾かそう」と言った。

彼はバックからキャンプ用のコンロと荷紐を取り出し

木に紐を結んで靴下をかけた、そして濡れていない小枝と

なぜか松ぼっくりを大量に集めコンロで火をつけ焚き火を始めた。

彼は、いったい何者なんだろうか。

テントが完成してからこれまで、5分ほど

流れるように黙々と手を動かし、火をつけボクの靴下を乾かし

ボーッとしていると、キャンプ用の鍋やフライパンを取り出しては

どこから出てきたのか、野菜とお肉を調理し始めた。

彼は、絶対スパイだ。

もう、すでにボクのママよりも美味しいご飯を作っている。

こいつはやばい。

もしかすると、今晩のメインディッシュはボクか?

いや、それならとっくにそうなっているか。

ジュン、もうサバイバルとか言っていられないよね。

普通に贅沢なキャンプだし

どうして、中学生のキャンプにステーキが出てくるの?

ボクがクラムチャウダー好きって言ったかい?

いつ作ったんだい?

ジュン、君はどこの国のスパイなんだい。

2泊3日? ボクは今日帰る。

君が、怖いよジュン。

いや、考えすぎかな。

「ジュン、今日なにする?」

「お菓子食べながら漫画読もう」

「持ってきたの?」

「もちろん!」

「なに持ってきた?」

「ナルトとブリーチ!」

ジュン、やっぱり君はおかしい。

どうして、ボクが読みたい漫画を知っているんだい。

ジュン、君はやっぱり…。

ボクの疑いは晴れることはなかった。

雪は三日間しっかり降り、ボクはビクビクしながら

彼と2泊3日を過ごした。

彼は、やっぱりおかしかった。

絶対にボクが眠るまで眠らないジュン。

朝は魚、昼はラーメン夜はお肉。

彼の完璧すぎるご飯と完璧な装備。

やっぱり彼はどこかのスパイだったかもしれない。


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