嵐

えもーしょん 大人篇 #77

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.29

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#77
「嵐」
(2016~/カイト・大人)

想像と違った、女の子とデートした日はとっても疲れる。

そんな時に限って気を使って帰れないし

大体、夜ご飯も食べて帰るから

家に着く頃にはもう、くったくた…

でも、今回はレベルが違った。

半ば強制的に告白を強いれられ、付き合ってしまった。

ヤンキーだからすぐに別れようなんて言ったら

元彼とか出てきそうだしさ…やばいよ…どうしよう…

と、悩み寝落ち。

2、3時間が経ってごろごろしながらテレビをつけて、年末感満載の番組を見ていた。

そろそろ、スーパーへ買い物しに行こうかなぁと

玄関で靴を履いたその時だった。

ピーンポーン、ピーンポーン、ピーンポーン

インターホンの鳴り方で、いいことではないことは確か

チェーンはつけたまま、ドアを開けると

「まだ?」

そこには、158cmの金髪のヤンキーが

見たことない大きさの毛布を抱え、洋服が入った衣装ケース三段を足元に置き立っていた。

ボク「え、何してるの?」

彼女「引っ越してきた」

ボク「急に!?」

彼女「ってか、寒いんだけど」

ボク「いや、急には無理だよ?」

彼女「無理って言ったって、引っ越してきたから」

ボク「ええぇぇ…」

一回、鍵を掛けてみる。

帰るんじゃないかな…覗き穴を見ても毛布を持って立っている

ダメだ…帰らない

結局、ボクは鍵を開け彼女を中に入れてしまった。

それから、なんと3年間も一緒に住んでしまい

悲しいが、部屋の契約更新とともに彼女とは別れてしまった。

あれから、何年経っただろうか

スーパーニート、いやプロニートにしてくれたのも彼女だ

今のボクがあるのも、少しは彼女のお陰と言ってもいい。

いつかの、彼女からのお小遣いがなければ

ボクはこうして世に出ていなかったから。

今、どこで何をしているか…

知りたくないな…思い出すのはやめよう

でも、きっと大人になって

おっさんになって、おじいちゃんになっても

忘れることはないだろう

初めての1人暮らしが始まって3日でヤンキーが引っ越してきたなんて。

もう、えもーしょんがラストランなので

遠い記憶を引っ張り出しました。

なんでも出来る気がしていた、あの頃が羨ましい

電気、ガス、水道が止まったあの5畳のアパートも

隣のウザいおっさんも

みんな辛かったけど懐かしいななぁ。


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