東京の空気

海と街と誰かと、オワリのこと。#18

東京の空気

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.06

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


1人暮らしの初めての朝。まだ視界がぼんやりしているほんの2、30秒、起き上がって、布団から出る、歩いて顔を洗う。自分の動きの音が静かに部屋に響いた、これが1人暮らしの家の音か。。。。誰の気配もない、とても静かな空間の中に自分の存在だけを強く感じる。

窓を開けて空気を入れると、風に乗って葉が揺れる音や鳥の鳴き声が部屋にやってきた。心地良い春の空が目の前に広がっている。

ーー「やぁ、東京。初めまして。」

目一杯ベランダで深呼吸をしても、海の匂いを感じないのは初めてかもしれない。これが東京か、少し寂しいけれど。僕の新しい暮らしが始まった。

「ブーーーーッブブッーーーー」
「ブーーーーッブブッーーーー」
「ブーーーーッブブッーーーー」

ーー携帯のバイブレーション

携帯のバイブレーションが家具のない部屋のせいかすごく大きく響いた。

母「おはよう、そろそろ到着」

ーー11:43

思ったより引越しで疲れていたようだ、2人が来る前に急いでシャワーを浴びた。服を脱いでベッドに投げる、洋服が宙を舞う姿でふと思った。

ーー「洗濯機ないな」

あとで電気屋さんに見に行ったらいいか。と蛇口を回して暖かいお湯が出るまでボーッとする。取手にシャワーを掛けていつものように頭からただシャワーに打たれる。しばらくして体が温まると、そういえば石鹸がないことに気が付いた、朝だからまだセーフ。それにしても、今日はいろいろ買い物に行かないといけない。洗濯機に冷蔵庫、電子レンジにコップやお皿、フライパンとか歯ブラシとか。探検しながら買い物に行くのが楽しみだ。

ーーピーンポーン

早い、おそらく両親がやってきた。ガチャっと音がして

母「お邪魔しまーす」

父「おはよう」

とお父さんに渡したスペアキーで2人が入ってきた。

僕「はーい、ちょっと待ってて」

母「はーい、タオルどこにあるの?」

と母がクローゼットを開けながら言った。あぁ、そうだ。タオルも買ってなかった。。。。

僕「ごめん、なんでもいいからTシャツとって欲しいです」

母「タオル買うの忘れてたんだ、家から持っていけばよかったのに」

はい、とTシャツを受け取りお気に入りのStussyのTシャツで体を拭く。今日は何よりも先にタオルを買うと心に誓った。

母「今日は洗濯機とか色々買わないとね」

父「着替えたらすぐ行くぞ〜車回してくるから下で待ってて」

母、僕「はぁい、ありがとう」

着替えて、車に乗り目黒通りを走ると目の前に東京タワーが見えた。ここからでも見えるんだ。と東京タワーを見て東京で暮らしている実感が湧いた。
お父さんにまずはタオルを買いたい。とお願いをして代官山のニトリでタオル、バスマット、枕、ベットシーツ、布団を買った。昨晩はベットが届いたけれど布団がなくてパーカーを2枚重ねしてフードを被って眠った。

ニトリを後にして、渋谷のヨドバシカメラに到着。2ドア冷蔵庫と洗濯機と電子レンジをお父さんが引っ越し祝いで買ってくれた。とっても嬉しい。疲れたお父さんは喫茶店で休憩、お母さんと食器や生活品、机と椅子を買ってから少し洋服を見に行った。洋服は足りているから、疲れなさそうなスニーカーを探してニューバランスを買って帰宅。

今日買った家電は明日届く予定だから、机と椅子を組み立てる。僕とお父さんが組み立て作業をしている間にお母さんは、他の買ってきたものを片付けてくれた。2人のおかげで1日で快適なひとり暮らしの準備が整った。本当に感謝。

母「他に必要なものは自分で揃えてね」

父「具合悪くなったら、連絡しろよ」

僕「ありがとう、帰り気をつけて」

2人は仲良く帰って行った。


続く



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