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海と街と誰かと、オワリのこと。#20

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Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.08

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


加藤さん「こんにちは、オワリ君」

背が高くひょろっとした男の人がやってきた。年齢は30歳前半だろうか、お洒落な人だ。

僕「こんにちは」

加藤さん「加藤です、よろしくね。社長は少し遅れて来るって」

僕「はい、わかりました」


加藤さんに案内されてオフィスに入る。とても明るいオフィス、グレーのカーペットに学校の先生が使っていそうなグレーの机と椅子にスーツを着た人たちがたくさん働いている姿を想像してたけれど。全く逆だった、とても大きな窓から光がフローリングの無垢材を柔らかく照らしている。大きな植物が沢山息をしているようだ。先生の机を想像していたけれど、カッコいいスチールのテーブルが点々と心地良い感覚で置かれている。

加藤さん「オワリ君のデスクはね、ここを好きに使ってね」

案内された場所は1番窓に近いけれど植物が近くに沢山あって過ごしやすそうだった。

僕「ありがとうございます」

加藤さん「ここはね、前まで僕が使っていた場所なんだよ」

僕「いいんですか、使っても」

加藤さん「もちろん、お昼食べると暖かくて凄い眠くなるから気をつけてね」

僕「ありがとうございます」

加藤さん「社長がね、椅子を買って来るって言ってたからそれまでこれ使ってね」

加藤さん「オワリ君、手ぶらだけど家近いの?」

僕「はい、自転車で10分くらいです」

加藤さん「いいねぇ」

加藤さん「そんなに忙しくないし、みんなのんびり働いているから緊張しないでね」

僕「はい、ありがとうございます」

林さんが来るまでPhotoshopをなんとなく教えてもらう。お昼の時間になって加藤さんがハンバーグを食べに行こうと誘ってくれた。

オフィスの鍵をもらって開け方とセキュリティの解除方法を教えてもらう。それから、2人でエレベーターに乗ってすぐ隣のロイヤルホストへ入った。


続く



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