初めての依頼

海と街と誰かと、オワリのこと。#29

初めての依頼

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.23

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


ジンに紹介してもらった人はちょうど着ていたTシャツのブランドの人だった。

菊池さん「オワリ君にグラフィックを頼みたいんだけど、お願いできるかな?」

僕「はい、僕で良ければ是非お願いします」

菊池さん「ありがとう、連絡先を教えてくれる?」

僕「はい」

それから、ジンが一緒に付いてくれていたおかげでその場で詳しい話しをして菊池さんとは別れた。

僕「ジン、ありがとう」

ジン「全然、頑張ってね」

僕「うん」

ジン「そろそろ帰るか」

僕「そうだね」

ジンは、何人かに挨拶をして戻ってきた。

ジン「お待たせ」

僕「いえいえ」

ジン「オワリ、変なことを言うけど。あんまり大人の言うことばかり信じるなよ」

ジンが珍しく、意味深な発言をして驚く。彼の顔を見るとすごく曇っていた。

僕「どうしたの」

ジン「いや、深い意味はないけど。すごく親切な人がいる反面、変な人も多いから」

ジン「気がつくと呑まれてしまう時があるよ。って」

僕「分かったよ、話してくれてありがとう」

ジン「うん、ちょっとでも変だなって思ったら話さなきゃいいよ」

僕「分かった、そうするね」

ジンと僕はお店の前で別れた。ジンの言っていたことが何だか気になって、ゆっくり考えながら帰る事にした。すこし進んで振り返るとジンが信号を渡ろうとして目があったのでお互い手を振った。ジンが見えなくなるまで見送って、心の中でありがとう。と言った。再び進もうとしたとき。

さき「オワリ、」

ちょうど帰ろうとしていた、さきに声を掛けられた。

さき「歩いて帰るの?」

僕「うん、明日休みだし暇だから」

さき「途中まで一緒に帰ろうよ」

僕「いいよ、」

さき「ありがとう」

さき「オワリはいつもどこで買い物してるの?」

僕「洋服はあんまり買わないんだ」

さき「そうか、」

僕「買い物よくする?」

さき「うーん、ちょこちょこは買わないけど。必要な時に沢山買うよ」

僕「僕もこの前、まとめ買いしたよ。靴下」

さき「靴下 笑」

さき「オワリは1人暮らし?」

僕「うん、最近引っ越してきたの」

さき「どこに住んでたの?」

僕「海の方だよ」

さき「いいなぁ」

僕「さきは?」

さき「私はずっとこっち」

僕「僕からしたら、それがいいと思うけど」

さき「そう?」

僕「うん、実家から一番近いコンビニまで自転車で20分かかるもん」

さき「それは、遠いね 笑」

さき「オワリはいつも自炊するの?」

僕「うん、ちゃんと作るよ」

さき「おぉ〜、今度作ってよ」

僕「いいよ」

さき「明日、空いてる?」

僕「明日?」

さき「うん、」

僕「うん、明日は空いてるよ」

さき「じゃあ、明日デートしよ」

僕「よろしくお願いします」

さき「よろしくお願いします 笑」

さきにラインを教えて、明日は13時に神保町で待ち合わせする事になった。彼女は、また明日ね!と言ってタクシーに乗った。とんでもなく可愛かった…。

続く



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