等待我啊! 台灣!

MY FAVORITE MOVIE #3

等待我啊! 台灣!

【先に愛した人】

Contributed by MFM CULB

People / 2023.04.19

「映画を」楽しむ、じゃなくて「映画と」楽しみたい。別に映画に詳しくなくたってお気に入りの1本があったらそれでいいじゃん。「僕」と「誰か」が繋がって語られる、映画との日常。

僕は『台湾』を正直なめていた。今となっては大好きだけど、数年前はその魅力に気付いていなかった。きっかけとなったのは友達に誘われた台湾旅行。それと台湾映画。今回は台湾での思い出とお気に入りの台湾映画についてのお話。

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【先に愛した人】





「今一番行きたいところは?」と言われたら即答で台湾だ。日本からのアクセスもかなり便利だし、2日休みがあれば行ける。もちろん欲を言えば1週間だけど。
初めて訪れた時から台湾の魅力にハマってしまった僕。すっかり気に入って3ヶ月後には1人で行ったり、そのまた3ヶ月後には先輩と。「これからは定期的に!」なんて思ってたのに、あのウイルスのせいで行けなくなってしまったのだ。だから今の僕は台湾に恋焦がれている。それも猛烈に。

Taiwan










帰宅してもべっとりこびり付いちゃう八角の香りとか、市場のガヤガヤ。
みんなのんきで優しい感じとかね。

いいよね、いいよね。

こんな感じで当時はたくさん台湾を満喫していた。

そこから同時進行でハマり始めたのが台湾映画。僕はこの土地の独特な空気感も含めてマルッと台湾にゾッコン。あとは言語? っていうのかな、耳に入ってくる言葉の感じも心地良い。もし現実的に移住するとしたら「台湾かな」なんて真剣に考えたりもした。

好きな台湾映画はたくさんある。まずは王道にエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』、定番だけどやっぱりいいよね。劇中の「映画が発明されて人生が3倍になった」というセリフに大共感したりもしたなぁ。あとはこれからの夏にぴったりな『藍色夏恋』はセクシャルマイノリティという一つの視点を通して、友情と恋の曖昧さを真っ直ぐ丁寧に描いていて、素敵なラブストーリーを堪能できる。『ラブゴーゴー』と『熱帯魚』、『1秒先の彼女』の監督を務めたチェン・ユーシュン作品はチャーミングなキャラクターとコミカルな作風が僕の好みドストライクなんだよね…。

いろんな映画を思い出した結果、(毎度のことだけど)気に入っている映画が多すぎる!!!! 今回は一つに絞ってNetflixオリジナル作品の『先に愛した人』をピックアップしてレコメンドしたい。



ちょうどコロナ禍真っ只中の時、当時勤めていた会社が一時的にお休みになった。1ヶ月半ぐらいだったかな? そんな時「家から出れない〜」って落ち込んでいても仕方がないから、いい機会と捉えて映画をとにかく毎日観ようと決めた。そしてInstagramのストーリーに毎日UPしようと決心したのだ。その中で出会った作品の一つが『先に愛した人』、舞台はもちろん台湾。最初ゆるーいイラストと共に語り口調ではじまるんだけど、そのスタートからすでに“いい映画感満載”。つまりオープニングからエンドまで最高なんです。

物語は三角関係の構図で、ソン・ジュンユエンという男がキーの人物。彼が亡くなった後、彼の側面を知らずに残された3人で物語はスタートする。ソン・ジュンユエンの息子が最初の語りのチェンシー。そしてソン・ジュンユエンの妻であるリウ、ソン・ジュンユエンの愛人だったジエ。ソン・ジュンユエンは同性愛者だったが、妻のリウと息子のチェンシーはそのことを聞かされていなかった。そして亡くなった夫の保険金受取人となっていたジエの元へ訪ねて初めて2人の関係を知る。そこからジエとチェンシーはなぜか仲良くなって、一緒にスクーターを走らせたり、お互い話し相手になったりと新たに構築される3人の不思議な関係は作品の見どころの一つ。誰が悪いとかではなく、責められる対象の相手がいなくなってしまったことで辛くなってしまう3人に共通するのは“大切な人を失った人たち”ということ。この大きな核でつながれる3人が、どう自分自身と折り合いをつけていくのかというストーリーなのだ。



この映画はどのキャラクターにも情が入るっていうのがいいところで、劇中はほとんどこの3人しか映らない。だからこそ、それぞれの感情に入り込めるし、それぞれのことを理解できる。そして3人の中でバランスを取っているのが息子のチェンシーで、淡々とした態度や俯瞰した姿がこの物語をうまーく中和していく。反発し合うリウとジエを繋ぐのもチェンシーだ。僕はこの作品を観た時に、題の意味がよく理解できた気がした。

人生には分かろうとしても分かりきれないことがどうしたって出てくる。知らなかったことに対して責めたり怒ったって仕方ない。ただその余白があったことを受け止めるしかない。題と物語がリンクした時、僕はたくさんの涙でいっぱいになった。理解したくないことが理解できてしまった時、その瞬間に人の温かみに触れられたから。最後のシーン、少し緑がかった台湾の空は、いつにも増して晴れやかな空になっていた気がした。


もう一つ、この映画のことで伝えておきたいことが!! それはジエの部屋のインテリアとムードについて。彼の部屋にはビビットなネオンライトとコテコテの中華風雑貨たちが共存し、国のムードが雑多に混じり合っている。このミックス感がたまらない……。ごちゃごちゃなはずのに引きで見るとまとまっているような、本当に見ていて飽きない部屋だ。バスルームのカーテンは魚のイラストが描かれたチープさ溢れるビニールカーテン。この『こだわらないけどなんかいい』が彼らしさを映し出していて堪らない。もし今から観るよっていう君はジエの部屋にも是非注目してみてほしい。



写真を見返しながら感じた台湾
映画を思い出しながら感じた台湾

かすかに残った記憶から映し出される情景だけでもお腹いっぱいだけど、追い討ちをかけて映画のサントラも!!

僕の休日は妄想トリップで台湾一色になりました。
めでたしめでたし。





今回は台湾映画でのお気に入りを一つ挙げたけど、本当はもっともっと書きたい作品がたくさんある。だからまた今度、台湾にもう一度訪れたら台湾映画特集をしようかな。その時まで『等待我啊!台灣!』


END



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