動き出す人生

海と街と誰かと、オワリのこと。#42

動き出す人生

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.03.20

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


菊池さんのブランドから発売されたTシャツは人気だったようでとても安心した。FWも何か一緒にやろう。と言ってくれたけれど、これ以上は近づかない方がいいと思い断った。それから返信もなくInstagramの繋がりも絶たれてしまったから、あの時の判断は間違えていなかったようだ。ジンは僕の個展に向けて準備を進めてくれている。今日はメインに使う作品を選びにカメラマンの人と来てくれる。この狭い部屋で作品を撮影できるか少し心配だけれど。彼に任せておけば大丈夫だろう。

さきと別れてから、久しぶりにひとり暮らしをしている。と感じる。朝起きて静かな部屋の天井を見つめシャワーへ向かう自分の動く音と冷蔵庫のモーターの音。シャワーを浴びて体を拭いて一息つくと何か喋ったように思う。けれど実際は何も喋らず静かな部屋をただ感じるだけだ。ジン1人なら特に片付けなくてもいいけれど、知らない人が来るから洗濯物だけは片付けることにした。冷蔵庫の中を確認すると、以前ジンが大量に買って来てくれた小さなパックの野菜ジュースがまだ残っていた。

ーーピーンポーン

ドアを開けるとジンと大きなバックを持った同い年くらいの男が立っていた

ジン「おはよう」

僕「おはよう」

2人を家に招き、野菜ジュースを差し出す。

ジン「これまだ飲めるの!?」

僕「全然、大丈夫だよ。賞味期限もまだまだだよ」

ジン「本当だ、」

ジン「彼はオサム、同い年でフォトグラファーやってんだよ」

オサム「初めまして、この前オワリのTシャツ買ったよ笑」

僕「本当に!?ありがとう笑」

僕「今日は何を撮るの?」

ジン「告知の時に使うメインの作品と、ポスターに使う作品を撮ろう」

ジン「もうほとんど出来てる?」

僕「うん、とりあえず言われた数は出来てるよ」

ジン「お!見たい!」

部屋の端にずらりと並ぶキャンバスをジンとオサムのもとへ運ぶ。

ジン「すごいな、よくこれ手で描くね」

オサム「え、これ手描きなの?!」

僕「そう、めっちゃ疲れるけど。。。」

作品は全部、撮った写真を網点にして手描きした。大変だけれどシルクスクリーンは納得できないからこれでよかったと思う。

オサム「これは、俺も頑張らないと」

ジン「よろしく!」

僕「ありがとう、お願いします」

オサムは大きな三脚を広げストロボなど、準備を始めた。僕とジンはオサムがスムーズに撮影できるよう片付けたり、作品を順番に並べたりする。しばらくライトの確認をして、試しに数枚写真を撮る。光の当たり具合で飛んでしまっている色がないかオサムは何度も確認してくれた。それからはオサムが撮り、ジンが作品を入れ替え僕が撮り終わった作品を再び片付ける。という流れで進んだ。全部で30点の作品を撮り終え休憩した時には、すっかり夜になっていた。

オサム「もう、ヘッとへと」

ジン「俺も、今日帰れないわ」

オサム「わかる、動きたくないよね」

僕「2人ともありがとう、お寿司出前頼むよ」

ジン、オサム「まじ!!!」

僕「まじまじ、お寿司食べても動けなかったら泊まって行っていいよ」

ジン、オサム「ありがとう笑」

お寿司を念のため4人前頼み、2人はどの作品をメインにするかパソコンで悩んでいた。きっと2人はお寿司を食べたらシャワーを浴びて、自然な流れでパジャマを貸してくれ。と言うだろう。先にクローゼットからスウェットとTシャツを出しておく。ブランケットも何枚か出してパジャマの下にそっと置いた。

お寿司が届くと、2人はパソコンを閉じて3日間何も食べていなかったかのように物凄いスピードでお寿司を食べる。綺麗に一貫づつ僕に残してくれていることがわかって笑ってしまった。ジンがかっぱ巻きは、絶対食べるな。とオサムに言った。流石だ、僕はエビやマグロ鯛よりもかっぱ巻きが一番好きだ。むしろこの頼んだお寿司はかっぱ巻きさえ食べることが出来るなら他はいらない。

3人でお寿司を食べ終わった後は順番にシャワーを浴びて、2人とも明日は休みだから残りの作業は明日やろう。となった。


続く



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