THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE / UNKOWN STORY-#1

サイズのおかしな道具たち

Photo&Text: ACME Furniture

People / 2018.06.26

35年にわたりアメリカを中心としたヴィンテージ家具を取り扱い続けているファニチャーブランド、ACME Furniture。
昨年出版された『THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE』は、そんなACME Furnitureがこれまでに買い付けてきたアイテムがずらりと並んだブランドの歴史を感じることができる一冊だ。
本連載では本誌では語られなかった、アイテムのバックストーリーを紹介していく。
第一回目となる今回は、「サイズのおかしな道具たち」のお話。


BOSTON郊外のフリーマーケット会場で出合った全長6mのカヌー。100年以上前に製造されたもので本体内側に均一に貼られた木板の造形美に魅了されてしまい即決で購入。これを売っていたディーラーの話では、「Old Town Canoe」という現存する老舗カヌーメーカーのものらしい。その昔、アメリカ北東部とカナダ国境付近に点在する湖が水路で結ばれていて、付近の交通手段や物資の運搬などの貿易手段として活躍していたという。カヌーは形状によって様々な呼び名があるがこのアイテムは「カナディアンカヌー」と呼ばれており、北米でインディアンが使用していたものが起源とのこと。
通常カヌーの本体は釘などを使わずに木板の組上げによって作られ、本体外側はキャンバス生地で貼り包みした上にエポキシ樹脂を塗布してコーティングする作りになっている。今回見つけたものはキャンバスが剥がされたままの状態で販売されていたので、内側だけでなく外側も曲線が特徴的な美しい木工作品のようだ。
私が乗ってきたトラックの荷台にはとても入るサイズではないので、急遽現地の物流会社に依頼して会場から持ち帰ることに成功した。
日本に到着後、カヌー内部に照明器具を設置して逆さの状態でお店の天井に吊るしてみる。圧倒的なインパクトを持つ企画外サイズの天井照明が出来上がった。


Item 02:Advertisement Spoon



Size:L 1,600mm

フリーマーケットで見つけた等身大サイズのスプーン。グラスファイバー素材で作られていて表面に銀色の塗装がされている。見るからに量産されたプロダクトではなく、誰かが何かの目的のため手作業により一つだけ作られたプロダクトのようだ。恐らく販促物として飲食店かどこかの壁にアイコンとして飾られていたのだと想像する。
日本に到着後、オーナメントとして店内の壁に飾る。とあるお客様がこれを見て「これを作った人はバカだなぁ~」と笑いながらスプーンの隅々を見回す。「これを買い付けたバイヤーもバカだなぁ~」と笑う。「でもそんなバカげたプロダクトを買う俺もバカだよな!」と言って購入して頂きました。バイヤーにとって「バカだなぁ~」と思ってもらえるようなプロダクトをお客様に紹介出来たことは最高の喜びなのである。

Item03:Amusement Park Ride





Size:Park Ride “Tank” : L 1,200 × W 900mm / Park Ride “Rocket” : L 1,400 × W 700mm

戦車とロケットの乗り物。これらは 1950年代のニューヨーク郊外の遊園地で実際に使われていた子供向けのアトラクションの乗り物である。本体に記された僅かな情報から調べてみたところ、「Allan Herschell Company」という1910年代から続く老舗メーカーによって製造されたもの。同社は回転式アトラクションやローラーコースターなどスリル満点な乗り物の製造を専門としていたようだ。こうした昔のアトラクションの乗り物が出回ることはたまにあるが、手元のピストルが二丁完品の状態で付いていることは珍しい。年代の古いものなのでピストルやパーツが欠品しているものが多く、逆にピストルパーツだけ高値で販売されていることもある。これらは現在何の用途も持たないただのアルミ製の“物体”だが、見ているだけで昔のアミューズメントパークを想像することが出来て楽しい。


Item04:Catcher Mitt Chair



Size:W 900 × H 1,000mm

キャッチャーミットの形をした一人掛けのチェア。プラスチックで形成されたこのキャッチャーミットは内部が空洞になっているので簡単に持ち上げることができる軽さ。底に小さな穴が開いていて内部に砂か何かを入れることにより加重を設けられる作りになっている。メーカー名や製造年月日などは不明。恐らく球場か野球用品店に置くアイコンとして作られたプロダクトだと想像する。コネチカット州のローカルフリーマーケットでこのキャッチャーミットを見つけた時、誰かがこれに座っていることを想像するだけで笑えてくるので即購入を決断した。キャッチャーミットにしては不恰好なデザインだが座り心地はとても良い。真面目でクラシックなインテリア空間にポイントとしてこのギャグのようなチェアを提案したい。


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