another side of ALASKA

吉森慎之介「あらすか」を撮る。

インタビュー 前編

Photographer: Shinnosuke Yoshimori
Text: Mayu Sakazaki

Trip / 2019.03.12

1992年生まれの26歳、鹿児島に生まれ熊本で育った写真家・吉森慎之介さん。2018年の3月にアラスカで3週間を過ごした吉森さんは、そこで撮った作品を展示した個展「あらすか」を同年5月に青山スタジオで開催しました。雪山、野生動物、オーロラ、過酷な寒さ。そんな漠然とした「アラスカ」のイメージだけでは伝わりきらない、身近な生活としての“アラスカの暮らし”を切り取りたい。そんな思いで開催した写真展について、そしてアラスカでの旅について。『anna magazine』のアラスカ特集で紹介しきれなかったインタビュー(前編)をお届けします。



ーまず、写真を始めたきっかけを教えてください。

写真を始めたのは大学生の頃です。4年生のときに休学してニューヨークに行ったことがあったのですが、帰国したときに「せっかく行ったのに、何も撮らないとはもったいないことをした」と思ってフィルムカメラを買ったんです。その前はタイ、インド、ヨーロッパなんかにも行っていて、旅は好きでした。それからはフィルムとデジタルを使い分けながら、大学でスナップを撮るようになって、だんだんと写真にはまっていって。卒業してからはファッションショーの制作の会社に就職して、演出家の方のアシスタントとして働きながら、趣味として写真を続けていました。仕事自体はすごくやりがいがあって楽しかった。ただ、趣味で続けていた写真がどんどん楽しくなってきて、仕事の楽しさを写真の楽しさが超えたときに“写真で食べていきたい”と考えて会社を辞めました。インターン時代を合わせると2年ほど働きましたが、写真への気持ちが大きくなったのが一番の理由です。その後、青山スタジオに入社して1年半ほど基礎を学び、10月に独立しました。



ーアラスカに行こうと思ったのはどうしてですか?

アラスカに行ったのは2018年の3月ですが、さらに遡ると、「ぼくらの会いたいひと」というイベントを2月に開催したことがきっかけなんです。青山スタジオのOBで友人の猪原悠さんと“写真以外の活動も何かしたいね”と話していたときに、トークショー形式のイベントをしよう思いついて。僕らが共通して好きだったのが写真家の星野道夫さんだったので、奥さまの直子さんに出演してもらえないかと思い、アポを取って千葉の星野道夫写真事務所まで会いに行ったんです。何度か事務所に通うなかで、当時のフィルムを見せてもらったり、直子さんに話を聞いたりして、トークショーの内容を詰めていって。2月15日に「ぼくらの会いたいひと」の第一回目として、青山スタジオの一番大きいスタジオで開催したのですが、100人を超える人が集まってくれました。

そういった流れもあって、改めて自分のなかでアラスカのイメージがすごく湧いてきたというか、より身近なものになったという感覚がありました。イベントでは直子さんが道夫さんの写真の説明をしてくださったり、このときはこんなことを言っていたとか、そういう話もしてくださって。アラスカに行きたいという気持ちが大きくなったことで、3月に行くことを決めたんです。



ー吉森さんが、星野道夫さんの写真に感じたアラスカの魅力ってどういう部分でしょう?

やっぱり動物や被写体との距離感というか。動物たちがすごく良い表情をしていて、変な言い方かもしれないんですけど、動物を友達みたいな感覚で撮っている人だなって。そういう写真だったり、本人の人柄の暖かさとか、直子さんから話を聞いて改めて再確認できたという感じです。アラスカとか北極圏の動物を撮っている写真家って道夫さん以外にもたくさんいますし、例えば NHKのドキュメンタリーなんかで出てくるホッキョクグマとかアザラシのイメージってすごく強いと思うんです。でもそれだけじゃなくて、そこに街があって人がいてっていう当たり前のことも、直子さんから話を聞くなかでイメージが湧いていました。だからみんなが撮っているものだけじゃなくて、もっと手前にある“人の生活”を撮りたいとすごく思っていて。なので、北極点にキャンプを張ったりするよりも、普通に街で暮らして写真を撮ろうっていうのは最初から決めていました。



ーアラスカでの3週間は、どんな毎日を過ごしていましたか?

最初の1週間は、星野さんも暮らしていた小さな街フェアバンクスで過ごしました。後半はアラスカで一番大きい都市でもあるアンカレッジにも足を運びましたが、結果的にはフェアバンクスで過ごした時間のほうが心に残っています。アンカレッジはシティ、フェアバンクスはタウンというイメージでした。フェアバンクスは一日でほとんど全部回れるくらい小さいので、バスで北極圏のほうに行ってみたりしながら、けっこう楽しく過ごせたと思います。そこに暮らしているような感覚で写真を撮りたかったので、なるべく普通にというか、予定を入れずにダラダラ過ごしたいなと思っていて。毎日散歩したり、ご飯を食べたり、写真を撮ったりしていましたね。

ー小さい街の方が良かったというのは、どういうところが?

やっぱり街が大きいと貧富の差があり、ホームレスの人がいたり、治安が良くなかったりして、夜出歩くのがちょっと怖いなって感じるところもあったんです。でもフェアバンクスは平家とかログハウスみたいな家が多かったり、暗くなってもそこから光が漏れていたりして、どこかあったかい感じがして。街灯が少なくて夜は暗いんですが、そんなに怖くなかった。泊まっていた家の近くにあったカフェに毎日のように通っていたんですが、そこのマスターもすごく良くしてくれて。日本から来たと言うと星野さんの話をしてくれたり、いろいろと話しかけてくれました。週末になるとそのマスターがバンド仲間とお店でライブをやっていて、それを聴きながらコーヒーを飲んだり(笑)。スープとかもすごく美味しくて、毎日そこにばかり通っていました。アンカレッジは街が大きいぶん、そんなに親密な距離感で話せる人はなかなかいなかったように思います。



ー動物の写真もありますね。

やっぱり、アラスカの人たちと動物ってすごく密接な関係というか、考え方も距離感も日本とは少し違っていて。動物たちがいて当たり前で、そこに人が住まわせてもらっている、みたいな感覚なんですよね。だから人と動物が対等で、うまく共生しているという感じがしました。ムースっていう大きなシカがいるんですが、普通に街の道路とかを歩いていたり、庭にも糞が落ちていて近くまで来ていたんだなってことがわかったり。ちょっと街に出るとたくさん動物がいるので、わざわざ写真を撮りに行かなくても自然に撮れるっていうことに驚きました。泊まっている家にも猫がいたんですが、日本の猫よりもキリッとした感じで、可愛かったです(笑)。



→後編に続きます。

profile
吉森慎之介/1992年鹿児島県生まれ、熊本県育ち。青山スタジオ勤務を経て、2018年より写真家として独立。雑誌などで活動するほか、個展「あらすか」やトークイベント「ぼくらの会いたいひと」を開催。また、2019年より地元である熊本県の江津湖のほとりでポートレートを撮影する「みずうみの写真館」をスタートするなど、さまざまなフィールドで活動の幅を広げている。

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