ACME Buying Diary #6

家具ブランドACME Furnitureの買い付け日記

Contributed by Kenichiro Tanaka

Trip / 2020.06.03

インテリアブランドACME Furnitureの海外買い付けの模様をレポート。どこで、どんな風に、なにを見つけて日本へ商品がやってくるのか。ディレクターの田中健一郎さんがリアルなバイヤー視点で紹介していきます。

#6

ロサンゼルス買付け出張6日目の朝は、久しぶりに快適に目覚めることが出来た。
時差ぼけも無くなり疲労のピークも超えたようで、ようやく体が現地に順応してきたようだ。
いつもなら宿泊しているモーテルで軽い朝食を済ませるのだけれども、今日はここから5分程先にあるアメリカン・ダイナーで朝食を食べるという目的のため少し早起きをした。



モーテルで食べる朝食が飽きたわけではなく、いわゆるアメリカっぽい雰囲気の場所で、当地のありふれた日常を体験したいが為の好奇心で来てみた。



店内には出勤前のような装いのお客さんが数人席に着いていた。
近くに座っていたお客さんは、メニュー表には載っていないようなテクニカルな注文をしていたので耳を傾けてみると、卵の焼き方や追加トッピングまで細かく指示していたようだ。他にもなにか言っていたようだけれどよく聞き取ることが出来なかった。
私も真似して色々と注文しようと思ったが今日はとりあえずメニュー表に載っている定番メニューのパンケーキ&ベーコンエッグを注文した。



期待通りのアメリカンボリュームのパンケーキ。二人で食べてちょうど良さそうな量だ。これが食べたかったのだ。



料理もコーヒーもアメリカらしい大ざっぱな味で特に感動は無かったが、アメリカ映画のワンシーンのような雰囲気で食べる朝食は十分に楽しむことができた。
さて、ほぼ満足したのでそろそろ出発しよう。



出発前のガソリン補充。
アメリカのガソリンスタンドはどこもセルフサービスなので自分で入れなければならない。
相棒の15ftトラック君は毎日とても良く働いてくれるけれど、ガソリンも大量に食べてくれる経費泣かせのやつだ。

今日は、先日会った馴染みのディーラーに紹介してもらったディーラー仲間の倉庫に行ってみることにした。
向かう場所はノース・ロングビーチ。ラッパーのスヌープ・ドッグの出身地だ。
久しぶりに彼の代表作「Doggystyle」を聞きながら徐々に気分を高揚させて行く。



目的地に到着すると、古びた建物の中からディーラーらしき男性が出迎えてくれた。
首に巻いた赤いバンダナが良く似合っている。
簡単な自己紹介を済ませて倉庫内に入ると、庫内には大量の商品が所狭しと並んでいた。
山積みの商品の中を掻き分けながら行う宝探しは楽しくもあるが、とても手間の掛かる作業である。
見落としが無いように隅々を探す。



真っ先に目に飛び込んできたこちらの椅子。
一見シンプルなデザインではあるが、脚のデザインが特徴的だ。





昆虫のような、エイリアンのような、不思議な形状のアルミキャスト脚。
AZCASTという80年台に消滅した家具メーカーだという。
これはかなりレアな椅子だ。



強い存在感を放つこちらの天秤。
一つ一つのパーツのデザインが細かく施されていて、柱と皿のパーツがセラミック素材になっている。



ロゴのデザインがかっこいい。
1731年に創業した歴史の古いメーカーで、現在ではAvery Weigh-Tronixとして世界中に名を轟かせている一大企業のようだ。



ディーラーのプライベートルームに入らせてもらえた。



あらゆるモノが散乱しているように見えるが、すべて大事にしているコレクションとのこと。
中には譲ってくれそうなものもあるとのことで引き続き気合を入れて宝探しをする。



バイクのハンドルのようなもので可動するミキサー。
面白いが衛生面に不安があるので買うのはよそう。



ギャグレベルの高いスイッチプレート。
個人的には面白いと思うアイテムだが、日本で販売するには生真面目な国民性を思うと無理かな?



経年変化で良い味が出ているレザー製のサンドバッグ。
観賞用として、ストレス発散アイテムとして、インテリアの一部として取り入れても良さそうだ。
これは買うことにした。

その他、いくつかの家具や雑貨などを買い付けた。
初めて訪れる場所は期待外れになることも多いが、ここはまずまずの成果だった。
ここは必ず次回もアポイントを取って来ることにしよう。



本日の遅い昼食はこちら。
今アメリカで人気急上昇しているファーストフード店Popeyes Louisiana Kitchen(ポパイズ・ルイジアナ・キッチン)だ。
昨年発売したチキンサンドイッチが一躍人気となり、店舗にチキンサンドを求める客が殺到し、わずか2週間で品切れとなってしまったほど。
テキサス州ではそれに激怒した客が銃を発砲する事件まで起きたという。
アメリカらしいアホな事件で思わず笑ってしまいそうになったが、周囲にいた人達にとっては全く笑えないどころか、生死に関わる恐怖の出来事であったに違いない。



恐ろしい前評判を聞いた後で食べるチキンサンドイッチは評判通りの絶品であった。
フライドチキンのサクサクとした衣の中から溢れるジューシーな肉汁がやみつきになり、あっという間に完食してしまった。
個人的にはケンタッキー・フライドチキンよりもこちらの方が好みだ。

フライドチキンといえば、ソウルフードを代表するメニューの一つだが、アメリカ社会では人種と根強く結びついており、見方によってはセンシティブな意味を背負う食べ物でもある。
フライドチキンの歴史は、アメリカ南部にまだ奴隷制が敷かれていた時代まで遡る。
南部の白人農園主は、鳥をオーブンで焼くローストチキンを調理する際に、肉の多い胸肉や足以外の部位は捨ててしまうのだが、使用人として働いていたアフリカ系アメリカ人たちは不要になった部位をもらい、高カロリーのラードで揚げて骨まで柔らかくなるように食べやすく調理をした。つらい肉体労働に苦しむ彼らにとっては良い栄養供給源であったのだろう。
現代では形を変えて様々な場所で愛されているフライドチキンであるが、誕生は奴隷制を通して生まれたアフリカ系アメリカ人の伝統料理であることを今一度思い返してみたい。
冗談でも彼ら に向かって「チキン好きなんでしょ?」なんて言わない方が良いであろう。
親しい間柄でもなければ、他人種に言われると侮辱と感じる人も中にはいるかもしれない


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