ありあまるイタリア

True Feeling in Ireland #31

ありあまるイタリア

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2020.07.10

大学生のハセベさんが留学で過ごしたアイルランドの日々を記録した連載「True Feeling in Ireland」。あらゆることになぜを問いかけ、好奇心旺盛に活動する彼女が海外生活の中で、感じ、考えたことを日記形式で綴っていきます。

#31

冬休み後半戦、イタリアに来ました。目的は現地でジャパソのElisaに、ローマを案内してもらいつつ、イタリアを堪能すること。たっぷり10日間! 以前から、観光地をつまみ食いするような、その土地の表の顔しか見られずに終わってしまうような旅は性に合ってなくて、住むように旅をしたいからこそ、ひとつの地にはできるだけ長くとどまる必要がある。そういう選択が凶と出る時もあるけれど。

まずはローマ! 物価もそこまで高くないので、泊まるairbnbのグレードを高めた。バスルームには、家主さんのブランド香水の瓶がずらっと並んでいて、このレイアウト、将来のマイルームに採用したい。



部屋に荷物を置き、National Gallery of Modern and Contemporary Artめがけてバスへ乗り込む。行き方が分からず、そばにいた女の人に聞いたら、どうやら英語を話せないバスの運転手さんに掛け合ってくれて、そのおかげで美術館の最寄りで、バスのお兄さんが合図してくれた。ありがたい。



彫刻がたくさん展示された部屋があり、1つ1つにアフレコしながら鑑賞するのを一人で楽しんでいた。



MAXXIという、より現代アート寄りの美術館にも行った。途中までは歩いていたけれど、疲れたのでトラムにタダ乗りした。ローマ滞在中、交通機関でのお金の払い時がいまいち理解できず、誰かに指摘されたら払おうぐらいのスタンスでいたのだ。ここでは、入場する時なぜか自分の専攻を聞かれて、法学ですと正直答えたけど、どうやら建築だったら無料で入れたらしい。やられた...。展示自体はいかにも現代アートで、自由にとっ散らかった感じに終始ワクワクしていた。



初日の夕食は、airbnbの近くでふらふらしている時に見つけた、ローカルレストランにて。クロスがなんともかわいい。ホストブラザーのDavidが前に食べたいと言っていたカチョエペペと、来る前Elisaに「日本のコロッケみたいなcrocchette食べな」と言われたので、注文した。宿に帰ってから、暖かいベッドの中で、今更ながら「ローマの休日」を鑑賞。







次の日は、毎週土曜日しか開かないcolonnaギャラリーへと向かった。City centreに近いこともあり、多くの日本人が訪れるのだろう。珍しく日本語ガイドがあった。午後はElisaと彼女の友達のClaudiaと街をぶらぶらした。二人がしきりに、「店頭に英語メニューや写真を置いているとこ、あと大通りの近くのお店はマジでぼったくりだから気をつけて、たいして美味しくないし」と教えてくれた、さすが地元民。Claudiaは初めましてだったけど、サバサバしていて、日本の文化を好いてくれていて、とにかく優しかった。自国の料理に誇りを持つ彼女が、日本に行った時に立ち寄ったイタリアンは美味しかったから、絶対行けと言われた。絶対行きます。(笑)

翌日もElisaと会えると思いきや、なにやら家族の用事が忙しいとのことで、ローマで会えたのは1日だけだった。ノープランだった私は、ひとまず地元の人が朝ごはんを食べていそうな、airbnbの近くのカフェでエスプレッソをグイッと飲んだ。みんなカフェのスタンドでグイッとしてから、仕事に向かう。それをみているのが面白い。昼は、昨日の夜に歩いていたら、なにやら盛り上がっていたので、気になっていた広場に行ってみると、市場が開かれていた。その近くのOsteria de fortunataのニョッキが絶品だった。行列ができていて、店内もギュウギュウ。窓辺では職人さんがパスタをビヨーンと伸ばし続けていた。その光景、いつまでも見ていられるなあ。





暇と孤独、観光客の渦を紛らわすために、コロッセオから南に向かい、ピラミッドを見に行った。



夜、アーティチョークを食べに、ローマの外れにあるレストランへ向かう途中、向かいからメトロの職員を名乗るおじさんがやってきて、「今ストライキ中だから全部の交通手段が動かないよ」と教えてくれた。イタリアでストライキがよくあるってことは知っていたから、最初は「ああそうなんだ」と納得していたけれど、話を聞いていると、どこか怪しい。そして、この人はよく分からないチケットを売りつけようとしているのだと気づいた。自分としたことが、変なおじさんに捕まるとは。とりあえず、「今現金ないから、歩いて行くわ」と丁寧にお礼を言いながら逃げた。

ローマは治安が悪い! と言い切るのは違うと思うけれど、確かに街灯が少ないから物騒ではある。あまり夜遅くに出歩くのはおすすめできない。とはいえ地元民の夕食タイムはだいぶ遅くなってからが本番だから、その塩梅が難しい。レストランの一皿のポーションもお一人様を考慮していないから、シェアが前提。そこが一人旅には向いてない。



ふと、ローマを周り尽くした感覚になって、フィレンツェへ。まず、行った曜日が間違い。とにかくすべての美術館がクローズしていた。それでも、コインケースを買うというミッションを自分に課していたおかげで、グルグル回るだけでも楽しかった。





長らくアイルランドで見ていない晴天と夕陽。川沿いのアパートのバルコニーで友達と喋るような時間がある生活、送ってみたいなあ。

フィレンツェのデイトリップを終えて、ローマ最終日。予約していたバチカン美術館に朝イチで入り、なんと閉館時間までいた。世界史を勉強してこなかったので、ピンとこない点が多く、オーディオガイドに聞き入っていた結果、夜までいても回りきれないという事態になってしまった。出た後は、ひたすら脳みそが疲れて、お腹が空いて、なにも考えずにパスタスタンドに駆け込んだ。





おじさんも見入るほど、確かに圧巻だったのです。

その夜、夜行列車に揺られてミラノへ向かう。ビビリだったので、あらゆる貴重品に南京錠をつけたけれど、実際はぐっすり眠れるほど快適だった。日本人には割と人気ではないかというオシャレな街ミラノ。ジャパソでGeorgetteに「ミラノは1日でいい、行くとこなくて飽きちゃうよ」と忠告された地。それならば行って確かめようじゃないか。

早朝に着いてしまったので、airbnbのチェックイン時間まで、with大荷物で行動することに。まずはレオナルドダヴィンチの「最後の晩餐」を見に行った。作品の保存の観点から、極端に鑑賞人数が制限されており、時間指定も細かい。せっかくオープンの時間に合わせて行ったのに、結局待つハメになり、その間に絵の予習をした。ネットで調べると、この作品はダヴィンチにとっても実験的にとった手法で描かれており、劣化が他の作品よりも早いことは織り込み済みだったということがわかった。後世に永遠に残り得ないとわかりつつ、試してみたいという気持ちが勝った作品だったことに少し感動した。いざ入館できても、実際に鑑賞できたのは10分ぐらい。しかもこの大聖堂は、その作品以外展示しておらず、みんなあの「最後の晩餐」を観るためだけに来ていた。わたしはそれをする価値があると感じた。



昼からはショッピング。ミラノは周るところないよって言葉にちょっと納得しつつも、永遠に買い物ができる街だと思う。ミラノ発のKIKOやWYCONといったプチプラメイクブランドやセレクトショップは結構いい。Galleria内の美術書に特化した本屋で、母にお土産で塗り絵用の本を買った。自分には旅行の思い出を綴る用のノートを買った。











商業地帯の街角にたたずむ、騙し絵のある教会。遊び心が面白い。

翌日はトリノへ。目的はエジプト博物館と地方都市のローカル感を味わうこと。とにかくアイルランドにはない、カラッとした晴天で、この天気ごっそり持って帰りたいほどだった。
エジプト博物館に行った理由は、エジプトのピラミッドや王朝に興味があり、イタリアに世界で二番目に大きい博物館があると聞いたから(もちろん最大の博物館はエジプトにある)。エジプトに興味ありと言っても、にわかファンレベルで全然知識はないのだけれど、なんとなくそのエキゾチックさに惹かれる。加えて母がエジプトのミステリー特集の番組をよく観ていたことも影響しているかも。ここでも4時間ぐらい滞在して、外に出たら真っ暗になっていた。





翌日は朝から活動的に、ビチェリンの総本店に行く。ビチェリンとはミルク、エスプレッソ、チョコレートの3層のドリンクで、最初は混ぜずに飲むのがスタンダードらしい。おばちゃんに言われた。日本にも最近上陸したらしいけれど、かなりリッチな飲み物。



その後、山の上の教会を見るべく、ケーブルカーに乗る。このケーブルカー、1時間に一本しかなく、目的地でも教会以外のエンターテインメントはまるっきりない。教会に見惚れていて、帰りのケーブルカーを逃すという惨事が発生。一人で、山の上で、お腹を空かせながらなにもすることがなかったので、ひとまず自力で下山を試みる。





すると、途中で素敵なこじんまりとしたレストランを見つけたので、飛んで入った。そこで、この短い人生で一番美味しいトリュフパスタに出合う。偶然が偶然を呼んだ、そんな素敵な経験だった。



無事、平地に戻った後はひたすら美術館・博物館巡り。現代美術館、映画博物館をハシゴした。現代美術館は、あまりにも地元の人しかおらず、静けさが漂う空間だったので、早々に切り上げた。映画博物館の前にはラジオ博物館もあって、興味深かったが時間切れ。もっと巡りたかった、名残惜しい気分。







最後はまたローマに戻ってきて、やり残したことをやる一日。それはジェラートです。それと、トリッパを食べに家庭料理を提供するレストランに行った。そんな10日間の旅。総評としては、イタリアは食の国、しかも名物がだいたい炭水化物なので、とにかく一人旅にはおすすめしない(笑)。また、ローマはどこに行っても観光客が多く、街の本当の姿が見えにくい分、ミラノ・トリノは生活感が満載だった。わたしのお気に入りはトリノ。自分が街に溶け込んでいる感覚になれたのと、現代アートに力を入れているので、ストリートアートが多く、美術館も豊富だったところがポイント。陽気な人との会話と、太陽がカラッとした気持ちの良い天気(ただ風が強くて寒い)で、終始快適だったけれど、予想外に一人の時間が多く、ちょっと寂しさも感じる旅だった。




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