カラフルな人たち

Greenfields I'm in love #27

カラフルな人たち

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2021.02.19

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#27

ビデオグラファーをしている友人のもっさんの、33才のお誕生日。お祝いのメッセージを送ると「今日、ある日本人作家のExhibitionがあって、オープン初日だから遊びに来ない?」とお誘いをいただいた。もっさんは彼の存在を日本にいた時から知っていたそうだ。ロンドンで知人に紹介してもらい、意気投合したそう。彼はロンドンでレジデンシー(滞在アート制作)をしていたから、その制作風景をもっさんが撮影することに。いかにも、もっさんらしい人や仕事との出会い方だ。
そんなこんなで、送られてきた住所へ行ってみることに。ギャラリーはとても賑い、たくさんの人がいた。でも、人が多過ぎて何が何だか分からないし、もっさんも見当たらない。とりあえず中の方に行くと、2階からカメラを持ったもっさんの声。ちょうど撮影していたみたい。さっそく、今回展示会をしている作家・大河原健太郎さんを紹介してくれた! けんたろうくんは大きな体でハグをして、「来てくれてありがとう!」と耳元で叫んできた。

Public Galleryというギャラリー会場。



「さっきまで、ものすごい人だったよ」ともっさん。そう、私が行ったのはオープンからだいぶ経った後で、なんなら終盤に近づいていた頃。残りわずかな時間、駆け足で展示された作品達を見る。大きなものから小さなもの、モノクロからカラーまで、何十枚もの作品が敷き詰められていたが、これらはなんとこのイギリス渡英中に制作したものらしい。
けんたろうくんが描く、ニヤ〜とした表情の生き物たち(彼の絵に出てくるものはみんな顔がついていて、生きている)と、スプレーを使った彼独自のスタイルは、丸っこさとシャープな感じが合わさっていてすごく素敵だ。





作品だけでなく、わたしは彼のキャラクターに魅了された。けんたろうくんは太陽みたいな人で、私にはオレンジやグリーンのオーラが見える。彼の楽しそうな声は、ギャラリーから外へと溢れ出ていた。

“Happy Birthday もっさん!”



そうこうしてるうちにオープン初日は大盛況のうちに幕を閉じた。けんたろうくんの「みんな行こーぜー!」という声につられ、早々ギャラリーの近くにあるパブへと移り、お誕生日のもっさんと乾杯。今日で13個歳の離れた”おじさん”はグビグビ美味しそうにビールを呑む。
実は、今回のけんたろうくんの初ロンドンExhibitionには、けんたろうくんの弟、あつしくんも来ていた。彼はプロのボート選手で、オリンピックに向けて頑張っている。けんたろうくんとはまた違ったキャラクターなんだけど、彼も独特の個性がある。兄弟揃って持っている人を惹きつけるパワーと、先のアクションが全く読めない不思議な感じがすごく面白い。
例えば、あつしくんはパブに着くや否や、「財布を無くした!」と焦り、すごく速い足どり(あ、スポーツ選手だった)でどこかへ消えていったが、数分後、にんまりした表情でなにやら手に持って帰ってきた。そこで目にした彼の"財布"とは、真っ二つに切られた靴下の切り口に無理やりチャックがくっつけられたもの。ほら、彼はやっぱり変。「これなら誰も財布だと思わないでしょ」と嬉しそうなあつしくん。もっさんは大爆笑。ああ、わたしは変な人が本当に好きだ。



とにかくけんたろうくんは上機嫌で、終始楽しそうに喋ったり踊ったり。彼が、外国人にも日本人にも本当に分け隔てなく接し、超フレンドリーにおしゃべりして周りに紹介するおかげで、みーんな打ち解けてパブ全体が暖かく明るい雰囲気に包まれている。愛ってすごいよね、幸せだよね。みんなが大好きだと話すけんたろうくんは、それだけではなく、今まで見た事ないほどのハグ魔。Exhibitionのタイトルも"HOLD TIGHT"だったから、本当に愛に溢れた、わたしが見えたオーラまんまの人だ! と思った。(ただ、あれからちょうど1年後、彼と日本で再会したのだけど、私のことをあまり覚えていなかった。あとから聞けばこのロンドン、ものすごく酔っ払っていたらしい)


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