さよならのハグとキス

Greenfields I'm in love #45

さよならのハグとキス

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2021.07.30

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#45

春からベビーシッターをしている子供、サクちゃんが7歳になった。バターシーパークにある動物園で行われるバースデーパーティーの招待状をもらった。プレゼントは、大英博物館の近くにある可愛いスタンプ屋さんにあった蝶々やハートのかわいいスタンプセットにした。
小学生の頃、おうちにいっぱい人を招待するお誕生日会があった事を覚えてる。手を離したら空まで行ってしまうバルーンがあったり、プレゼントが山のようにあったり、自分のはもちろん、友達のパーティーにお呼ばれするのもすごく楽しかった。
海外の子供たちは、お家より、こうやってテーマパークでやったり、映画館やプールを貸し切ったりすることが多いみたい(オランダに住む従姉妹が言ってた)。

バターシーパークはすごく広くて、中の動物園まで時間がかかった。少し遅れて動物園につくと、司会のさくちゃんは可愛いドレス、妹ミレちゃんはいちごのワンピースを着ていてすごく可愛い。パークのスタッフが先導して、色んな動物に触ったり、餌をやったりしている。主役だけど、みんなに声をかけて気を遣ったり、泣いて叫んで忙しいお友達のそばへ駆け寄ったり、とにかくさくちゃんはしっかりしていて、おもてなし上手だ。
ちょっと話は逸れるけど、いつもベビーシッターをしていて、たまに子供達がいう言動行動がおかしかったら、きょうこさん(ママ)は、頭ごなしに怒るのではなくて、なぜそう思ったのかに重きを置く。そのほとんどが寂しさの反動だったりして、そしたらきょうこさんは、しゃがんで目線を合わせ、そんな気持ちにさせた事を謝って抱きしめてあげる。すると、不意に子供たちは涙ぐみながら自分の悪かったことを言ったりして、一体は温かい雰囲気になるのだった。
さくちゃんの思いやりはきっと、こんな教育方針のパパとママの影響だと思う。
動物たちと仲良く遊んでいる途中、半分くらいカラフルなタイルが貼られた未完成の壁があった。タイルはそれぞれ名前が書かれている。そう、これはお誕生日をここでお祝いした子供達が記念に名前を刻むところ。さくちゃんはパパに肩車されて、背の高いところに自分のタイルを張った。

大きくなっても記憶に残ってたらいいなぁ。



えさやりの説明中。



動物と触れ合う時間が終わってランチを食べ、お待ちかねのバースデーケーキは、きょうこさんが朝、日系のケーキ屋さんまで車を走らせて受け取ったという日本のケーキだ。西洋とは違う控えめで優しい味がすごく懐かしくて美味しかった。

ケーキは大好評。ミレちゃん美味しいね。



帰ったら、最後のランニングへ行った。最後の、というのも、今日はサラのホームステイで過ごす最後の夜。ランニングをするだだっ広い公園の中に併設された野外ジムみたいなスペース、そこに寝そべってここから見る景色が大好きだった。
ここを出ること、出る理由を伝えることは一苦労した。悩みに悩んでホームステイを変えるという本当の理由はやっぱり言えず、友達とフラットシェアをすることにしたという嘘をついた。
嘘をついて罪悪感があるけど、これはいい嘘だった、ということにしようと思う。

最後の週末はみんなでキンパを作った。



サラは初めてなのに、海苔巻きを切るのが上手かった。



サラのティラミスは世界一だ。



このマグが私のお気に入り。



大好きな夜ごはんの時間。1日の報告会。



引き出しやクローゼットからありとあらゆるものを引っ張り出し、スーツケースに入れた。思った以上に物が増えていて、パンクしそう。やっとこさ荷物をまとめ終わって部屋を見回す。この広くて素敵な部屋が大好きだった。荷物が多いから、引っ越しはウーバーをつかうことにした。
とうとう、ホストファミリーのサラとヤンとお別れの時が来た。来なさい、と肩を寄せ、ぎゅーってハグをして、大好きよと言ってほっぺにたくさんキスをしてくれた。私がクラスを変えたり、インターンしたり、新しいことに挑戦するたびに褒めまくり、いろんな話をしてくれたサラ、全然喋らないけど、いつもニコニコと可愛かったヤン、サラの子供みたいにクシャッと笑う笑顔と、毎晩7時きっかりに家中に響き渡るヤンの"女の子たち、ごはんを食べに来なさい"という声が、私はきっとすぐに恋しくなるだろう。

ウーバーの後ろ窓から。



スーツケースに入り切らなかった大荷物を一緒に運んでくれたウーバーの運転手は、よく喋る楽しい人だった。私の名前、アヤは、彼の故郷の言葉で、comeの過去形なんだとか(特別嬉しくも悲しくもない)。陽気な彼のおかげで、センチメンタルだった私の心も、ワクワクへ変わっていた。

新しいおうちは、イーリングという地域にあった。ちょっと上に行くと、日本人街があるって、駐在をしてる友達が言っていた。そういえば最近その辺りで家の荒らし事件が相次いでるみたい。

程なくして、新しいお家の前に着いた。素敵なところ! 玄関からドアまでのタイルが白黒ですごく可愛い。
4月、サラの家に来た時と同じように、ドキドキとワクワクの気持ちでドアノックを鳴らす。
続きはまた来週!


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