Between the waves #9
新たな旅立ち
Contributed by Miki Takatori
Trip / 2021.11.15
#9
いくつになっても大切な人を失うというのは決して簡単にはならない。
朝6時前、起きて携帯のスクリーンを見ると
「おばあちゃんが亡くなったよ」と書かれた1通のメッセージがあった。
つい1ヶ月前にはテレビ電話で元気に笑いながら、バリのことや料理のこと、私の彼とも一緒に話していたおばあちゃん。
あまりにも実感がなさすぎて、時間が流れるがままにいつも通りその日も仕事を始めた。
お昼休憩の時間、ふとおばあちゃんのことを考え始めるとナシゴレンを食べながら涙が止まらない自分がいた。
こんな時になんで日本にすぐ飛んでいけないのか。
日本を出発する前に、もっときつくハグして大好きだよって伝えればよかった。
頭の中で色々なことを考えながら、この状況のもどかしさや悔しさを噛み締めなければならなかった。
振り返ってみると私は小さい頃からおばあちゃんっ子で、1時間ちょっと離れた佐賀に住むおばあちゃんの家に行くのが小学校の夏休み期間の一番の楽しみだった。
特に何をするわけでもないけど、夜はおしゃべりしながら一緒のお布団で寝て、おばあちゃんが作る美味しいご飯を食べてそれだけで十分だった。
大学を卒業して私の生活拠点が海外になるにつれて
「あまり遠くに行かないでね。」
「次日本に帰ってくるのはいつ?」と少し寂しそうに、でもいつも背中を押して応援してくれた。
2020年、コロナの影響で急遽オーストラリアから帰国して日本で過ごした1年間、
今思えばあの1年は、おばあちゃんと過ごすために与えられた時間だったのかもしれないと思えてきた。
数年ぶりにおばあちゃんの家でお正月を過ごしたり、一緒にスーパーへ買い物に行ったり、日本にいることの方が珍しくなっていた私にとってはそんな時間はちょっと子供に戻った気分だった。
バリに発つ前に、4月に最後に会った時は「もうこれが最後かもしれないね」と冗談半分で笑いながらお別れをした。
昭和生まれで80年以上、いつも家族思いで、好きなこともたくさんさせてくれて
何よりも深い愛を与えてくれたおばあちゃん。
楽しみにしていたお嫁に行く姿を見せられなくてごめんね。
この日の夕焼けはいつも以上に綺麗で、太陽が残したオレンジからピンク、紫、そして夜の青へとグラデーションでペイントされた空を見ながら「誕生」それから「旅立ち」を考えられずにはいられなかった。
海へ一緒に持っていったお花。
大切な人の死から人は常に誰かに想われながら、目には見えない大きな愛や祈りを注がれていることに気づいた。
当たり前すぎて普通に生きていると見逃してしまいそうだけど
いつも周りにいてくれる家族、友達、大切な人への愛、感謝を言葉にして伝えられる時に伝えていきたい。
Miki
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Miki Takatori
1996年福岡生まれ。旅のマストアイテムであるサーフボード、ビキニ、ウクレレをスーツケースに入れ海沿いの街を旅する。現在はオーストラリア人パートナーとバリの小さなサーフタウンに住みフリーランス通訳・翻訳・ライターとして生活している。サンセット、サーフィン後のお昼寝、抹茶をこよなく愛する。