欲望に忠実な女

To Me, Somewhere in the World #1

欲望に忠実な女

Contributed by Yoko

Trip / 2021.11.01

「世界一周がしたくて、30歳を機に思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#1

月の中旬まで真っ白だったはずの来月の予定が、気付いたら半分埋まっている。
それくらい私は旅が好きだ。

"HAPPY NEW YEAR!!"と印字された航空券と、大好きなチームのタオル(友達はアイドル)を携えてウユニで正月ジャンプ。



世界一周がしたくて、30歳を機に思い切って会社をやめた。
そうしたら、世界がコロナで変わってしまった。
会社員の肩書きと働く意欲を捨てたまま東京にいるのは辛くて、葉山に引っ越した。
今は、流れ着いたように長野にいる。

薄れゆく海外欲と戦いながら、世界に行こうか行かないかと考えることも疲れ。
代わりに、日本を好きなだけぐるぐる飛び回る日々を過ごしている。本当に自由に。

おかげで、この生活をしなければ出会えなかった大切な人たちにたくさん出会えた。
奥尻、道東、葉山、長野、金沢、今庄、屋久島、沖縄。その他たくさんの大切な場所にも。

やりたかったことができずにいた日々もまた、きっと良い意味で忘れないと思う。

北海道出身だがコロナ後に初めて訪れた奥尻島。1年後の2度目は同郷の友達を連れて。




子供の頃から好き嫌いがはっきりしている。

嘘が嫌いで、ストレートに物を言うことが正義だと思っていたし、やりたくないことをやる理由もわからなかった。
今はいろんな価値観に触れて、自分の世界線と他人の世界線を区別できるようになり、多分少しは優しくなれたはず。

だけど他人からの評価や価値観との戦いはある。
最近では「自由でいいね」と言われるたびに困惑していた。
だってこの先どうしようと悩む自分とのギャップがありすぎて、なんて返せばいいかわからないんだもの。


でも、他人にいちいち説明も言い訳もする必要はないし、今は好きなことだけしてみる期間があってもいいじゃない、と開き直ることにした。
悩み続ける日々から得られるものもあるけれど、今は今を楽しんでみようと。

週5日働かなくても、他人と同じような人生曲線を描かなくても。
今すぐ何かが死ぬわけじゃない。

オーストラリア・メルボルンセントラル駅。




旅行の話に戻る。

旅行好きに変わったきっかけは、大学生の時に経験したオーストラリアへの留学。

望んで入った大学だけれど、勉強よりアルバイトが楽しくて。
学校に行かないから友達はできないし、時間は無限にあるし。
若さを消費する日々に疲れ、人生つまんないモードに突入してしまった。
「フツウのジンセイ」ルートはそこから逸れている。


それでも、(暇すぎるので)そういえば憧れていたなと一念発起して留学を決めてみた。
結果としては、あの時やりたいと思ったことをやって本当によかった。
英語しか話せない日本語が通じない人にリアルに出会った時の衝撃は、当たり前のことだと頭ではわかっていてもなお、強いものだったから。

知らないことを知れること、見たことないものを見れること。
その衝撃と知る世界が狭いことへの強さ。
海外経験で得たものは、好奇心を満たす喜びと快感、学びだった。

和歌山・ヤッホーポイントに向かう橋の上で(揺れる)。



そうして帰国後は人が変わったように……なるはずもなくだらだら過ごし、9月卒業を選び、新卒就職には全てフラれ。
フリーター、フリーランスを経て、会社員として中途入社後、辞めた今は再びフリーランスとして生きている。


会社員になった時は、暦通りの休みになったことで逆に予定が立てやすく、「会社員は人生の墓場」と思っていたのに週末は旅をしまくる生活になり、自分でも驚いた。
休みが取りやすい柔軟な会社だったことに感謝。

ゴールデンウィークにしっかり休んでマチュピチュに行き、シルバーウィークは自主的に10連休を作ってモロッコを縦断したこともある。
当時の上司と先日久しぶりに話してみたら、「また行くの?」と少々呆れ気味だったらしい。笑


まあ、とにかく当時も今も、知らないものが見たい、この景色が見たい、この人に会いたい、といういろんな理由で旅を続けている。
「また」会いたいという理由も、最近強くなっているけれど。
本当に私は、旅が好きだ。

イタリア・フィレンツェのドゥオモ。ここが世界で一番好き。冷静と情熱のあいだ。



こう考えると本当に、欲望に忠実に生きてきた気がする。
やりたい時に、やりたいことを。
でもそれは選んで、考えてのつもり。自分を守るために、意図的に流されたこともあるけれど。

とはいえ、すごく自分を持っていて全てのカタチや思考が明確な人間とは言えない。
「これからどうしたいのか?」という面談でありがちな問いに、意図的にふわっと答えてしまうくらいには。
長期的なビジョンを持つのは苦手。


でも、今どうしたいか、何をしたいか。
思ったことを実現すると決めた時の速さと実行力だけは、多分、持っていると思う。

なぜなら「人生、一度切り」だから。
この言葉はなぜか幼少期から人生観として多分人よりも強く思っていたのだけれど、死ぬかも知れない交通事故に遭ってからはより強く思うようになった。

モロッコ・メルズーガ。砂漠は人生に一度で良いかも(砂嵐が痛かった)。



もっと知らないことを知りたい。場所も。人も。価値観も。文化も。
人生、一度切りだから。

そうして続ける旅の話を、時にリアルタイムで、時に振り返りながら、リアルに書いて行く予定。


以後お見知りおきを。そんな感じ。

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