僕の親友、ミスター人参

About Time #2

僕の親友、ミスター人参

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.11.09

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。

#2



人参が好きだ。野菜の人参はもちろん、着られる人参も。
「Carrots」というコンテンポラリー・ストリートウェアブランドを知ったのは2015年に僕の大好きなラッパー、Tyler, The CreatorがTシャツを着ているのを雑誌で目にしたから。
「Chloe」のフォントをサンプリングした「Carrots」というレタリングが相当キャッチーで、一体どういうブランドで何者なのか気になっていたのだ。

2015年の10月「Carrots」は盟友の「Rare Panther」と原宿の名店「TOXGO」でジョイントポップアップを開催したので、「こりゃ買うっきゃない!」とドカ買いして、ファウンダーであるAnwar Carrotsの気を引く形となった。英語が話せた僕の格好を見て、ストリートウェア好きである事を見抜いた彼は、「日本の観光案内をして欲しい」と僕に依頼した。鎌倉やジブリ美術館等、思い付く限りの観光スポットを紹介して遊びまくった。

AnwarはTyler , The Creator率いるOdd Futureの一員Casey Veggiesのマネージメントを担当しつつJosh Peasと共に「Peas & Carrots」というブランドをやっていた。Caseyがメジャーデビューする際に「Peas & Carrots」のライセンスを持ち逃げされてしまい、本人は高校時代からのあだ名「Carrots」(髪の毛がオレンジ色だから)を冠した「Carrots by Anwar Carrots」を立ち上げたのだ。

Anwarの名前はTylerの初期の名曲「Yonkers」の中の一節"Wearin' synthetic wigs made of Anwar's dreadlocks"にも出てくるし、とにかくそんな彼と知り合えた事に僕は感動を覚え、震えた。が、Anwarは僕を普通の一友人として見てくれる。彼が日本のアーティストとブランドとコラボをする時に通訳の手伝いをなんとなく手伝っていたら、いつの間にか、「Carrots」の日本ブランドコラボレーションプロジェクト通訳担当になっていた。笑



彼との思い出は数え切れない程あるが、2017年のComplex Conで「Carrots」の売り子をやったり、Anwarがお母さんのヘアーサロンを自分のポップアップスペースに変えるのを手伝ったり、彼が自分の姓を「Washington」から「Carrots」へ法的に変える瞬間に立ち会ったり...

その中でも一生の思い出はTylerとのランチをセットアップしてくれた事だ。AnwarがTylerと親しかったと聞いて以来、僕はLAに行くたびに彼に「ねぇ。Tylerに会えないかなぁ...」みたいな感じで、ことあるごとにそれとなく訊ねていたw



その努力(?)が実り、2016年のクリスマスは僕の目の前でfacetimeをTylerにかけてくれ、2017年の夏にはTylerとのナイジェリアンレストランでのランチに招待してくれたのだ。Tylerの友人(Anwar)の友人(僕)としてTylerに接する機会はそう滅多にない!!! 僕はファン心を完全消し去り、至ってクールに装い、なんてことない雰囲気でランチを楽しんだ。その時分かった事は、Tylerはナイジェリア人の血を引いているのだが、ナイジェリア料理を食べるのはこれが初めてで、その料理は全く彼の口に合わなかったという事だw



以降、Tylerとは幸運にもLAや東京で何度かバッタリし、「お前、一体どこに住んでいるの?」と突っ込まれる位までに認知度を高めるまでに至った。更に、僕がインスタにTylerのコスプレともいえるコーディネートを投稿する度、AnwarがそれをTylerに送ってくれるおかげで(やめとけw)Tylerは今でも充分、僕の事を覚えていてくれるそうだ(良いか悪いかは別として)。

今回渡米する理由が出来たのも全てAnwarのおかげだ。彼がTylerとのミーティングをセットアップしてくれると約束してくれたお陰で僕は迷わず飛行機のチケットを取ることが出来た。それは、ファンとしてでも、友人の友人としてでもなく、また新たな形でTylerと関わるチャンスを貰えた事を意味し、僕の中ではこの上ない喜びでもあるわけだ。



ミスター人参(Carrots)は僕の親友でありヒーローだ。Anwarの事が大好きだし、心の底から彼を尊敬している。今回の旅でまた彼とのかけがえの無い思い出が、また一つ増えることになる。


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