
About Time #13
LA8日目。やっぱりヒーロー。Anwar Carrots
Contributed by Sho Mitsui
Trip / 2021.11.24
#13
こうなることは分かっていた。Tyler, The Creatorにそう簡単に会えるわけがない。
冷静に考えれば、グラミー賞受賞者で、全米No.1アルバムを2枚もリリースしている、超有名ラッパーが、パンピーの僕に時間を割いてくれるわけそうそう無いのだ(例え、それがTylerの為だけに手作りしたトイ・カーを渡す為だったとしても)。
とにかく、Anwarは翌日11日にラスベガスへ旅立つし、僕は2日後の12日にニューヨークだ。チャンスは今日しかない。とりま、素敵な朝食を食べて気合いを入れる事にした。

バナナチョコチップパンケーキ、ベリー乗せ。美味い。パンケーキとピザはやっぱり圧倒的にアメリカが美味い。チープな感じも含めてまさに「味」だ。食べながら、AnwarにDMを送る。
「今日は一日中Tylerの為に空けてある」
Anwarからハートのタップが返ってくる。こうやって、既読になりさえすれば、安心だ。
実は予定が2つあった。1つはBrain Dead。カスタム・トイ・カー・カンパニーでコラボをするための具体的なミーティングをする事にずっーとなっていた。が、リーダーのKyleは本当に忙しい男で、LA在住の仲間達も「あいつを捕まえるのは結構、難しいよ〜」と口を揃える。こちらも、Kyleと密に連絡を取り合い、彼が「今なら!」というタイミングを狙うしか無い。が、Brain Deadの定例ミーティングに招いて貰い、思っていたより事がスムーズに進む。

デザインチームのZachに直接会えたので、彼にもカスタム・トイ・カーを見せてそのクオリティーを確かめてもらう。出来にもすごく感銘を受けてくれて、「是非とも作ろう!というか、もうすぐにEdと取り掛かっちゃうよ」とZach。もう、Kyleとは7ヶ月近くやり取りをしていたので、やっとコラボが実現しそうだ。
やはり、オンラインよりも"会って5分"で仕事を片付けられるならそれに越したことはない。

ミーティング場所はもちろんBrain Deadが運営するカフェ・レストラン、Slammers。食事はする機会がなかったけど、コーヒーはイケてる。
「さて、ここからはひたすら待ちだなー」と腹を括っていると、Anwarから電話が。
「1時間後にウチかFairfaxかだ。まだ、分からないからFairfaxにいろ」
おお。実現しそうだ。この電話はAnwarとTylerが連絡を取り合っている証拠ではないか! めちゃくちゃテンションが上がり、まさにFairfax上に位置するSlammersでそのまま仕事をしながら待つ事に。
ここならTylerの店も近いしね。
程なくして、「よし。うちに来い」
という連絡が。
ヤバい。
実現する。
実現しちゃう...
いつもより0.5秒早くスマホをタップし、Uberを召喚。久々にアメリカに帰って来て感じた事はUberが格段に捕まりにくくなった気がすることだ。あと、確実に高くなった。LA移動代かかりまくりな件。
FairfaxからAnwarの家までは車で40分。Tylerを待たせる訳にはいかないから、とにかく急がないと!
着いたら奥から声がする。Anwarは1人じゃない! まさか、Tylerもういる?!

...と思ったらAnwarの友達でしたw
今日も元気にお父さんしてます! 本当にカッコいいお父さんだわぁ...鏡だわぁ。
からのここからが長かった。
「お。6時に来るって」
6時15分位になり、
「あと5分で家出るって」
おお...流石やなぁw 到着予定時刻15分後の更に5分後が出発時刻か...
実はこの辺りになって焦り始めていた。というのも、The InternetのPatrickが実家で家庭料理を振る舞ってくれると言うので、他人(特に海外からの)を実家に招いてくれるなんて、これは大変光栄なことだから、断る訳にはいかないのだ。なので、夜6〜7時辺りにPatrickの家的なバイブスの予定にはなっていた。
当初、Tylerと会うのは午後3時頃と予想していたので6〜7時にはPatrick宅に着けていると思っていたが、甘かった。そうだ! ここが、LAだってコトを忘れていた!
「〜時に...で」なんて約束はあってない様なもの。だから、Tylerがなかなか現れないのも至って当たり前の事。
しかし、その理屈はご実家への訪問には当てはまらないだろう。「ご飯を振る舞ってやろうって言っているのに、何時着か不明とか、何事か!」ってなるでしょ。
でも、今回の旅の一番の目的はTylerにトイ・カーを手渡すこと。これを達成するのが最優先。Patrick本当にごめん! もちろん、Patには遅れる事を伝えると
「ああ、全然平気!むしろ、俺も美容院で遅れてるから!」
マジで良かった。この辺りからソワソワしてくる。ってか、Tylerマジで来るのかな? Carrots宅内も翌日のベガス旅行の為に準備開始だ。娘ちゃん達も寝る時間だし、お邪魔してるのもだんだん申し訳ない気分に...

SeanはRound Twoという古着屋を経営する傍ら、ファッションデザイナーとしても活躍している。Carrots姉妹の足元は可愛くも、フレッシュ! とか、考えつつも焦る気持ち。

気を紛らわせるために、Bellaをひたすら撫でる。Bellaは娘ちゃん達との折り合いが悪く、娘ちゃん達を見ると逃げるw かなりガチで逃げる。でも、僕が遊びに行くと、必ず出てきて
「ニャーぁ(撫でてー)」
と言いつつ、身体の側面で体当たりしてくるw これが、めちゃくちゃ可愛い。愛おしい。ねこ欲しい。
19:00過ぎ「あ、着いたみたいだ。外に行こう」
玄関外のソファーまで出て行くと、Tylerが!!!!
僕を見るなりいきなりハグ!
「よー。遅くなってごめんな」
いや、とんでもないっすよ。つか、本当に来てくれてありがとうございます!!!!!
さあ、とうとう本人にトイさんカーを渡す時が来た!

「カスタム・トイ・カーのカンパニーを始めるってなった時に、僕は個人的にTylerの車を作りたい!って思ったんだ。だって、クルマ好きじゃない?チームのみんなにも伝えてCherry Bombのゴーカートを作った。そうしたら、Call Me If You Get Lostがリリースされて、これまたMVは車のリファレンスでいっぱいだったから、急遽このピンクの車も作ったのさ!」
とりあえず事の経緯とありったけの敬意を込めてTylerに説明する。

「うぉー。やべぇな。Cherry Bombのゴーカートの精巧さとかハンパ無いね」
「おお!ピンクの車の俺、ちゃんとウシャンカハット被ってんじゃん!すごいな。これ。え?動くの?マジか!」
本当に感激してくれていた。
「Anwarに写真見せて貰った時はよく分からなかったんだけど、実物見るとすっごい良いね!」
プロダクトを気に入って貰えて素直に嬉しかった。
やはり、写真では伝わり切らない良さというものがあるのだ。直接、手渡して正解だった。思い入れのある部分等、間違いなく伝える事も出来るし、何よりこちらの熱量の伝わり方が違うはずだ。
「もし良かったら、Golf Le Fleur(Tylerのシューズライン。今後は服もこちら名義でリリースする予定)とのオフィシャルコラボでトイ・カーを作らせて貰えないかな?」
Tylerはニヤっと笑い
「ちょっと考えさせて(I'll marinate on it.)」
うむ。これは非常に丁寧に断られたな。と、適切に状況を把握する僕。
「でさ、Tyler...僕から個人的なギフトがあるんだけど...」
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そう。実は僕はこの日「あるもの」を用意していた。A級セレブの時間をこちらの都合でいただくのだ。いくら、友達の友達だからという理由で手ぶらで行く訳にはいかない。
本当に相手を喜ばせるギフトとは。「相手想いでなくてはならない」という事だ。それは贈り手は勿論のこと、贈り物自体もが"相手想い"でなくてはならない。なので、「これは日本の超いい物でー!どーたら、こーたら」とか言ったところで、もらう相手が興味を示さなければ、それは物置き行きが良いところだろう。
良い贈り物が出来るか否かは、もらい手の人となりをいかに理解しているかの1点に尽きる。
僕はTyler研究家だ。ネット上にあるインタビューは全て見たし、読んだ。掲載されている雑誌もほぼ持っているし、内容も事細かに覚えている。だから、Tylerのテイストが日々変化している事もよく分かっている。
今のTylerはトランクにご執心だ。ステージのプロップとしてもトランクを多用してるし、今回のアルバムのMVにも多く登場した。
Hot 97のインタビューでTylerが日本の雑誌や本の作られ方が素晴らしいと語るクダリがあり、更に自身がルイ・ヴィトンのトランクにハマっている言及する場面も。
そこで思いついた。よし。Tylerのお土産は「日本語のルイ・ヴィトンのカバンに関する本」にしよう。

古本で探し当てた。めちゃくちゃ分厚そうだし、「伝説のトランク100」ってネーミングが気に入った。コレだ。
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袋から取り出して、手渡す。不安は一つ。彼がこの本を持っていた場合...まあ、でもそしたら2冊目ってことで、自宅用、オフィス用ってしたり出来ていーじゃん。みたいな軽い考え。
「何これ?!え?!日本のヴィトン本?!しかも、トランク専門の?!マジで言ってんの?!ヤバっ!!!!」
ヤバい。Tylerめちゃくちゃ喜んでるよ...正直、車より喜んでるよ...本末転倒やwww
でも、気持ちは伝わった。
「お前すげーな。俺は贈り物ってものが好きじゃない。母親からのプレゼントなんか最悪だ。欲しくない物を押しつけられるからな。分かるだろ?俺は自分の欲しい物は自分で買える。貰う必要がないんだよ。こういう本以外は!!!!」
「めっちゃ長いハグをさせてくれ!」
Tylerにめーーーーっちゃ長いハグをして貰う。
...タ、タイラーす、すごく良い匂い...
からの本に目を通し始める。
「うわっ!何このカバン?みたことない!」
(え?Tylerが持ってないヴィトンのトランクなんてこの世に存在してたんだ? ←僕の心の中)
「ルイ・ヴィトンはモノグラムの前にストライプがトレードマークだったんだよ!すごい。ちゃんとそのカバンの写真もある!」
興奮しながらページをめくっていく。
「Tyler、Shoはすごいぞ。こうやって相手に合わせてアテンドしてくれるんだ。色々知識もあるし、美味い店も沢山知ってる。日本に行ったらShoに任せろ。俺は中途半端な友達はお前に会わせない。Shoのことは俺も本当に信頼してるんだ」
ここに来てAnwarが、僕の事を激推ししてくれる。
「だろうな。こんなに欲しい物をドンズバで貰ったのは初めてだよ。日本にはしばらく行けないよ。来年の8月までスケジュールが一杯なんだ。でも、その後...行ければ行きたいな」
とTyler
「日本に来たら連絡してよ、本を一緒に沢山探そう。美味しいワッフルとパンケーキ屋さんにも沢山連れて行くからさ」
すると、Tylerの車からモデルでインフルエンサーのReign Judgeが。彼女かな??(何とこの数日前にLACMAのGALAにTylerはReignと登場し、話題を集めていた様だ)
Tylerが本から車までをReignに見せる。
「すごいねー!車のデカールも素敵。この本もすごいね!Gucciのこんな本もあれば良いのにね!」
とReign。
「ほんとそれな。Gucciの歴史が写真と一緒になってる本が無いんだ」
とTyler。決まった。次のプレゼントはGucciの本だw
「わりぃな。こいつが腹減っちゃってるから行くわ」

2人が去る前に3人の写真をパシャリ。つか、3人とも背が高すぎ。ここに僕が入ると小人になりますw
Tylerが右手に大切そうに抱えているのがヴィトンの本。RiegnがCherry Bombのトイ・カーと、お土産の抹茶キットカットとブラックサンダーを持っていってくれた。2人のバッグが深緑でお揃いなのがポイント。つか、Tylerのオールブラックのスタイルカッコ良すぎ...
その隣、白いStussyのパックteeにヤンキースNew Era青短パンSupreme/Hanesの紫ソックス、そしてBEAMS/CROCSで全く引けを取らないプレゼンスを誇るAnwar最強すぎ...
夢の様だった...
これの為にアメリカに来たんだ。これが実現するとしないとでは、今回の渡米の価値には天と地の差が出てくる。チャンスはこの日しか無かった。それを実現してくれた、Anwarはやっぱりヒーローだ。僕はこの男の為なら何でもしたいし、何でも出来る。それをしたとしても、感謝しきれないくらいの借りが出来てしまった。でも、Anwarの素晴らしいところは、彼はこれを貸しとすら思っちゃいないのだ。だから、彼と僕は友達なのだ。
「...マジか。心臓止まるかと思ったよ。Anwar、本当にありがとう!ファン感消すのに必死だったよ」
「良く出来てたぞw これで、あいつはもうShoの事をちゃんの覚えているよ。良かったな」
Tylerと連絡先を交換しようなんて口が裂けても言えないし、インスタでフォローバックが来るとも思えない。でも、別れ際にもう一度
「日本来たら連絡してね!」
と念を押した。
「ああ。そうするよ」
とタイラー。
GUCCIの本持って待ってるよ。
因みにタイラーと僕の会話の記録特別編を改めてアップするので、そちらもお楽しみに。
Anwarも次の日はベガスで早いので、ここでお別れ。
ありがとうございました。
!!!!!
やべぇ! Patrickの家に行かないと! 時計は既に19:45を回っている。UBERで見るとなんと、1時間以上かかるの?!
でも行かない訳にはいかない。UBERに飛び乗り向かう。
Patrickの家はいわゆる"LA County"というエリアに位置するそうで、Azusaというエリアだった。梓だ。由来は「A to Z USA」(一から百までなんでも揃ってるUSAみたいな意味)だそうで、日本語は関係ないみたい。家は超ナイス! LAで見た家の中でも1番素敵な部類!
まずは、PatrickのBassコレクションをチェック。

MTD BassとエンドースしているPatのコレクションはdopeそのもの。1番後ろに見えるFender Stratocasterはバンドメイト、Steve Laceyからの贈り物。
「Sho、俺のマーチ欲しかったんだよね?」

と、フディーやTシャツを段ボールから取り出し始める。
「サイズは?S?そうか。フディーはボディーが小さいからMにしとけ」
昔だったら、頑なにSにこだわった僕だったが、今やブランドによってはSを作らなくなった。ジャストフィットで街を歩くと「つんつるてん」と言われてしまう時代だ。致し方ない。
このマーチに関してはフディーのデザインを担当したリョウジ君を紹介したので、個人的に完成をめちゃくちゃ楽しみにしていた。すごく良い出来だ。
リョウジ君のデザインも素晴らしいしプリントのノリも良かった(写真は撮ってないw)

とりま、Patの2作目にして初のフィジカルアルバム"If I Fail Are We Still Cool?"のレコード盤にサインを貰う。友達のレコードにサインを貰うのは僕の趣味だw
何だか長文書いてくれちゃって、とても嬉しい。
ここからが、本日の夜のメインイベント。Patのおばあちゃんによるリアル家庭ソウルフードの登場だ!

チキンはもちろんなんだけど、実はマックンチーズが楽しみだった。本場のマックンチーズって日本ではなかなかお目にかかれないよね。超美味しかった。
LAで1番美味しかった食べ物ランキング、余裕でぶっちぎりの1位だ。
こんな素敵な滝沢クリステルもびっくりの「おもてなし」を受けるなんて、これこそ旅の醍醐味。
ご飯を食べ終わると辺りを少し案内してくれると、ドライブへ。

近所のLA Cityが一望できる丘。キレイだった。
家に戻ると、最近ハマっているという特製ティーを振る舞ってくれる。

何か色々入ってたw オレンジ果汁、ブルーベリー果肉、生姜、ミント、あと赤っぽい何か。ハニーがたっぷり入って仕上げにブラックティーバッグ。
帰りは遠いのにわざわざ送ってくれるという神対応。Patrickが今度来日する時は妹の料理を振る舞わないと...
Patのソロインタビューもあるのでお楽しみに!
LA出張の1番大切な日が無事成功した。
この時期に旅をするのは色々大変だったし、果たして正しい選択なのか迷った事もあったが、この1日で全ての答えが出た気がした。

Anwar、本当にありがとう。
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Sho Mitsui
元英語教師、現カルチャーコーディネーター。チャンネル登録者121万人越えのYoutuber、PDRさんと一緒に隔週で放送している「痛いおじさんズPodcast」が大好評。いつかはプロPodcasterとして生きていくことを夢見つつ、世界中のセレブにご飯を食べさせて貰いながら、どうにかこうにか息をしている。
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