NYC3日目

About Time #17

NYC3日目

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.11.30

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。

#17

さてさて、旅につきまとう("つきまとう"という表現が適切かどうかはさておき)のが「頼まれごと」そして「お土産」。これを全てカバーしなくては、母国へ帰るに帰れない。この日は可能な限りの頼まれごととお土産購入をクリアしようと企てた。



今日もスタートはCafe Integral。ここまで僕のコラムを読んで下さっている皆さんならもうお分かりだろう。僕は気に入った人、場所、店等には忠誠を誓うのだ。

今日もペイストリーが美味しそう!

今日はオーナーが直々にコーヒーをサーブ! やはり、オーナーによる一杯は格別だ。



飲みながらコラムを書きつつ、時間になったらサブウェイに乗る。行き先はThe Metropolitan Museum of Art aka The METだ。

MoMAストアでのお土産を頼まれているので、ミュージアムディストリクトへ行きたかった。

父からは「大谷の帽子を買って来てくれ」(大谷の帽子とはつまり、Anaheim Angelsのベースボールキャップということだろうw)と頼まれていたが、僕が滞在していたLAは完全にDodgers圏内でAngelsものは全く置いていなかった。それに、Angelsのキャップは日本でも買える。

The METのキャップは日本でもオンラインで買えなくも無いが、送料が商品代を越えるからバカバカしい。折角NYCにいるイマこそ買うべきだ。勝手にThe METのキャップをお土産にさせてもらう事にしたw



宮殿みたいでカッコいいよね。いつ来ても。ここへ最初に来るきっかけになったのは16年前、初めてNYCに来た時のことだ。おばあちゃんから、「ニューヨークに行くなら、絶対にメトロポリタン美術館に行きなさい!」と言われた。おばあちゃんっ子だった僕は彼女から言われた事は絶対なのだ。当時はアートの「ア」の字も理解できていなかった。
入って、それなりに楽しんだのだが、見ても見ても終わらない。4時間は館内にいたのではないだろうか? 一緒にいた友人から「いつまでいる?」とちょっとウンザリ気味に言われて、僕も完全に疲労困憊だったため、美術館を後にする事にした。
「行きなさい!」と言われたからには、館内全てを見ようとしたのだが、どうにもこうにも無理だった。一日中いても無理なのでは? その日、The METに行く時は見たいものに照準を定め、それを目掛け訪れるべきである。と学んだ。

今回はお土産を買うのが目的だ。ミュージアムショップに入るだけならチケットはいらない。さっと買って、MoMAショップへ...と思ったが、



ショップで、このOff Whiteの$500近いTシャツを見つけ、「何故Off WhiteのteeがTHE METに?!しかも、バカ高ぇw」とあっけに取られていたら、"In America: A Lexicon of Fashion"という魅力的なタイトルの展示が行われている事が発覚! 時間は無いが、この展示だけ見てみよう!



エジプト展示室を通り抜け...



展示会に辿り着く。この展示専用の列を作るための仕切りも用意されており、その人気が伺える。僕は朝一で行ったのですんなり入れたが、それでも日曜日だったのでそれなりに人がいた。



こんな感じでアメリカ・ファッションにおける国内外のデザイナーによるコーディネートの歴史を辿る展示だった。



これぞミスアメリカ的なコンテクストの中に花束という遊びを入れ、タスキには"WHO GETS TO BE AMERICAN?"(アメリカ人になれるのは誰でしょう?)という、エッジーなメッセージ。どのマネキンにも頭の上にスローガンが書かれていて、コーディネートと含め作品となっている。この作品のスローガンはご覧の通り"BELONGING"(何かに属するということ)だ。

メインエントランスもカッコ良い。



ファッションは温故知新。常に巡り巡る。トミー・ヒルフィガーはアメリカのみならず、世界中のファッションに影響を与えた。2000年にリリースされたトミーのクラシカルな星条旗セーターと、それを2019年に再解釈したメキシコ系アメリカ人デザイナーWilly Chavarriaによる"Falling Stars"セーター。星が国旗からこぼれ落ちてしまっているあたり、当時の絶望的な社会状況が反映されている。このトミーとウィリーのコントラストが素晴らしい。



左はDainel Dayによるレザージャケット。よく見るとヴィトンのモノグラムが本人の手によってシルクスクリーンプリントされている。自身が1982年に開いたハーレムの名店"Dapper Dan's Boutique"で売られていた。右はMiguel Adroverによるバーバリーのコートを裏表逆にし、さらにドレスにカスタマイズされたガーメント。"REALNESS"と"AUTHETICITY"とはつまりは「本物」という意味。ブートレッグの中にも感じられる「本物」感。興味深い。使い古されたレザージャケットやコートにプリントやカスタマイズを施して新しいプロダクトとして提示する姿勢は、現在ありとあらゆる所で叫ばれている「サステナビリティ」に通ずるところも。Dayは1988年に、Adroverは2000年に、すでに実行していたわけだ。色々考えさせられるし、だからこそファッションって面白い! と思わせてくれる展示だった。

帰り道に日本展示室もあったので、ふらりと立ち寄る。

京都にいるかと思わせてくれる厳かさ。

名和晃平さんの作品も!



案の定、美術館の入り口に戻って来られなってスタッフ5人程に聞きまくり、20分くらいかけてようやく戻ってこられたw

父へのお土産、Miguel Lucianoによる"EL MET"のキャップを買ってミュージアムを後にする。次に向かうはMoMA。
MoMAストアのチャンピオン、リバースウィーブクルーネックを「頼まれた」。これは日本でも買えるのだが、第一NYCの方が安いし、まだ日本ではリリースされていない新色が出ているとの事だ。今年から来年にかけてのクルーネックブームはハンパない。みんなもそうでしょ? もう最近フディー着てないでしょ?w



ところが、ストアに行くとお馴染みのグレーしか売ってない。スタッフに尋ねると、なんとカラバリはソーホーのポップアップにしか置いていないとのこと...嘘でしょ...だったらわざわざ、ここへ来なかったし...まあ、仕方ない。MoMAクルーネックは後回しだ。


お次はブルックリン。そう、元教え子に「頼まれた」ものを探しにSupremeブルックリン店へ。
正直、今回の旅でブルックリン店は行かなくても良いかなーと思っていたが、信者は信者らしく聖地巡礼をすることにしようではないか。



最寄りのBedfordはブルックリンの中でも活気があり、オシャレさんもたくさん。面白いお店、美味しいカフェが沢山だ。巡る時間が無いのが惜しい。



いい加減お腹が減ったので、ピザ界の「家系ラーメン」ことJoe's Pizzaへ。
「LAよりNYC!」なんていう人もいるが、全然。クオリティーをコントロールされてる気がする。どちらも同じくらい美味しい。ここのスクエアピザも問題なく美味しい。もちろん、Prince St.には敵わないがw



お腹も一杯になって元気に歩き出し、たどり着いたのがSupremeブルックリン店。このレンガ造りの建物が無骨で逆にカッコ良い。

ブルックリン店の名物、スケートボウルとアイドル犬。

映えな写真が撮れること間違いなしのバックドロップ。ボックスロゴのマットレス欲し過ぎる。

残念ながら、「頼まれて」いたものは売り切れでムダ足にも思えたが、まあSupreme信者としてはこれらの写真も撮れたし良しとしよう。因みにニューヨークでSupremeに行こうと思っている人はブルックリン店にまず行くことをおすすめする。バワリー店は平日何曜日でもほぼ並ばないと入れない。ブルックリンは在庫が少ない欠点もあるが、木曜日以外はおそらくすんなり入れるはずだ。

さて、次に向かうはミートパッキング・ディストリクト! ホイットニー美術館やハイラインがある事で有名だが、地下鉄を降りてとりあえず見えたのが、

Googleニューヨーク支社。

ここに来たのはUFO907から連絡があったからで、なんとALLOUCHE GALLERYでグループ展をやっているというではないか!

初めて来るギャラリーだったが、ホイットニー美術館の目の前という好立地。



Stickymongerがキューレションした"SPRAY PAINTERLY"という、スプレーで絵を描くアーティストに特化した展示。
Stickymonger, Michael ReederそしてUFO907の個展には、村上隆さんが営む中野のヒダリジンガロで開催されたこともあり行った事があった。これらのアーティストを一気に見られてしまうのは本当にお得だ。



Stickymongerの作品は秀逸だ。まるで、Mr.さんがアナスイ系のモデルをMadsakiさん風に描いたら的な作風(全く的を得ていなかったらごめんなさい)。このアンニュイな目線がグッとくる。



UFO907の作品も最高! ピザが路面に落ちていて、ネズミがいて、ゴミ箱にはUFOのタグがあって...
僕がUFO907を気になり始めたのは2016年にVOILDで彼が個展をした時期だ。その後、東京のストリートのありとあらゆるところで彼のグラフィティーを見かけるようになった。VOILDで実際に彼に会い、一枚絵を買ったのだが(めちゃくちゃ安かった!)、なんと彼はニューヨークでMadsakiさんとルームメイトだったというではないか! そこから、彼のグラフィティーを東京でさんざん探しては写真を撮りまくった。グラフィティーは面白い。追っていくと、ライターの歩き方が手に取るように分かる。そうすると、まるでライターの足跡を辿っている様な気分になり、「あ。ひょっとしてここでご飯食べたのかな?」とか「あ。ここのコンビニ入ったな?」等、思い巡らせながらストリートを歩く様になるのだ。

Michael Reederの作品はこの凹凸感が魅力。



Trevor Andrew aka Gucci Ghostの作品は初めて見た。
元々プロスノーボーダーでミュージシャンでもある彼がオマージュで描いたグッチのグラフィックを、2016年にミケーレが見つけ実際にグッチの商品に採用したのが始まり。以降AndrewはGucci Ghostと名乗る様になり、アーティスト活動を活発化させていったのだ。"Life is Gucci"ってことね?

グループ展最終日前日に間に合って良かった! ありがとうUFO907!


残念ながらチェルシー界隈のギャラリーのほとんどが日月曜日は定休日。ALLOUCHE GALLERYが開いていただけでも奇跡だ。折角なので近くのアートブック系の本屋でNYのアートブックフェアを主催したりするPrinted Mattersへ。

zineやアートブック、写真集等を探している人は断然ここがオススメ。

本があり過ぎて探しにくいのが難点だが、目星をつけているものがあるなら、店員に聞けば良いし(英語が喋れない方は是非、僕の英語レッスンを受けるか、欲しい本のスクショでも店員に見せて下さいw)フラッと入ったなら、適当に店内を物色すれば良い。きっと、あっと驚く様なお宝に巡り合えるはずだ。Sean Pablo, Ari MarcopoulosそしてWeirdo Daveのzineをゲット。どれも日本で探していたものばかりだったので、大満足!
さて、ソーホーへ出発だ。



ぶらぶら歩いてたらStussyニューヨーク店をたまたま発見。ここにも行列が...
Stussyは企画によってアメリカでしか売られないものもあってちょっと覗きたかったが、列に並ぶ時間は無い。



はい! MoMA Design Store ソーホー店に到着でございます! ところが、この新色のクルーネックは非常に人気で、「頼まれて」いたSサイズはこの赤のみ。
この記事が出る頃には日本でも発売されているはず。日本でも即完の予感なので、狙ってる皆さん、買えていることを祈ってます。



更に進んで行くと、ストリートのUFO907を発見。HUFのニューヨーク店が近いからなのか、故Keith Hufnagelを忍んでのことなのかは定かでは無いが、本人の個展を見た後にストリートで見かけるグラフィティーは格別だ。
さて、本日最後のストアはMast Books!



ここも感度の高いアートブックをたくさん扱っており、書籍ファンは足を運ばざるを得ない。洋書って日本で買うとバカ高いし、じゃあ直接取り寄せようとすると送料もバカにならない。なので、店内に入るとつい買ってしまう。が、本って重いので案外スーツケースの敵だったりもする。
厳選して友達のManonとPeter Sutherlandの新書をゲット。数ある中で買うならやっぱり友達が出しているものにお金を落としたい。



更に歩くとこれまた、たまたまKAT'Sに!!! どでかいパストラミサンドをついつい食べたくなる。
映画"When Harry Met Sally..."で登場したことでも有名だ。が、本日は夕飯の予定があるので、写真だけパシャリ。airbnbに帰り、荷物を置いたら夕飯を食べにブルックリンへ向かう...



目的地はDavid Changの番組"Ugly Delicious"のピザ編にも登場し、JayZがアメリカ1好きなピザ屋であるという"Lucali"へ!
なんと、17:30の開店に合わせて席を取るには14:00頃一旦店前に来て名前を書かなくてはいけないとか(妹が当日教えてくれた。もっと前に聞いておけば良かった)。
何も知らないで行ったので、レストランの中で食べる事はもう期待せず、テイクアウトだけでもお願い出来ないかと聞くと、
「良いけど、1時間半はかかるわよ」と受付さん。この子がまためっちゃ可愛かった。写真はない。
「全然待つよ!」と僕。
「オッケー!じゃあ21:45に戻って来て」時は20:00。
え、1時間45分じゃんって思ったが、そこは素直に了解し、時間の潰し方を考える。こういう時、お酒を飲める体だったらバーにでも行くのだろうが、お酒がダメな僕は、ソーダファウンテンへ。

ここも映えなカフェだ。パステル調で非常にグッド。



店内は雑貨屋? と思わせるくらい所狭しとグッズや調味料、オイル、シロップなど様々なものを売っていた。BLMのサインが素敵だ。



普通だったらここでミルクシェイクを頼むのだろうが、ピザを一枚まるまる食べたいし、さらにカルツォーネを絶対食べろと、妹から指令を受けていたので、カフェラテにした。大体、雨が降っていてクッソ寒かったのだ。カフェラテで1時間45分を外のテーブルで過ごすことにした。
多分、このコラムを書きながらpodcastかなんかを聴いていた気がする。時はあっという間に過ぎるものだ。たとえ、待ち始める時は永遠に感じたとしても。

21:45きっかりにLucaliに戻る。さっきの可愛い受付ちゃんに手を振って帰ってきた事をアピール(ここのレストランすごくて、ドアがこちらからはほとんど開けられないようになっている)。

「ごめんね。まだ出来てないのよ。ちょっと待ってて」

いやー。もう1時間45分待ったがな! 寒過ぎて体は限界に近づいて来ている。
周りでは僕の様に席を取る事が出来ず、テイクアウトにした人々が賑やかにピザをほうばっている。めちゃくちゃ羨ましい! 早く出来ないかな! 僕のピザ!

今日、アメリカでは極端に減ったキャッシュオンリーのお店。火曜は定休日。

こちらがメニュー。

基本はチーズで、あとは自分のトッピング次第ってとこに気付かず、ピザはマルゲリータを頼んでしまった。
例えば、マルゲリータとペパロニのハーフアンドハーフなんかも出来るらしい。みんなそれを頼んでいた。

更に待つ事20分。凍えそうだし、お腹は必要以上にペコペコだ。
「Sho!出来たわよー!」
はいはいはーーーーい!
待ちに待ってました! $45を支払い、受付ちゃんには$2札のチップを。
「良いのよ」
と言われたけど、可愛いからあげるw
$2札しかチップとしてあげられる札が無かったのだ。よく考えればテイクアウトなので、確かにチップを支払う必要が無いのだ。でもさ、コーヒー屋ではテイクアウトでもチップを払うじゃん? 払う場面と払わない場面が、まだしっかりと分かっていない。

さあ! ピザのお出ましだ!



まあ、慌てるな。まずはピザボックスだ。Lucaliのスペシャルボックスに入ってくるかと思いきや、これはニューヨークの至る所で見られる至ってポピュラーな箱。
そして、いざ! オープン・ザ・ボックス!!!



おお! なんか2時間待っただけあって、どこか神々しく見える...ここはイタリアンピザレストランなので、ホール売りしかしないのです。大ぶりのバジルが四隅に配されているのも、なんかイイ!
とりあえず、ガブリ! いや、めっちゃ美味い!!!! チーズが美味い!!!! モッツァレラとパルメジャーノのコンボが絶妙! ソースも美味い!!!!
そして、四隅のバジルをちぎりピザの上にトッピングして更に食べていくっ! チーズうまっ! ソースうまっ!
夢のワンダーランド状態の中さらにバジルの風味が追いかけてくる! このバジルがまた美味しい。フレッシュで香り高くて、味が良い。確かに、かなりレベルの高いピザだ。が、ハーフ&ハーフでペパロニも食べてみたかった...

さあ! お次はカルツォーネ!

見た目は小さく見えるかもしれないが、これかなり巨大。これでsmallサイズ。largeは一体どれ程大きいのだろうか?
中にはトロトロの3種のチーズが閉じ込められており、マリナーラソースにダンクしながらいただく。確かに美味い。が、僕はピザ派だ。
交互に食べつつ、ピザを優先する方向性。

2時間待ったピザも10分でこの状態w

耳を残した理由はカルツォーネを食べるため。しかも、耳は特段に美味しいというわけではなかったのだ。ここが僕のLucaliを最強認定できない点だ。正直、耳でいうと、日本の聖林館の方が圧倒的に美味い。ただ、ピザそのものの味は抜群だ。
ちなみに、この耳だけピザの写真をインスタのストーリーズに上げたところ、多くのアメリカ人の友達から「ピザに対する冒とくだ!」との厳しいお言葉を多数いただいた。友よ、分かってくれ。これも全てカルツォーネのためなんだ。



半分弱くらいまでいけただろうか? 残念ながらここまでが限界であった。確かにとても美味しい。しかし、ピザを殺してまで食べるものではないかな? というのが僕の感想だ。本当に勿体無いし、フードロス反対派の僕が自らフードロスに加担するのは非常に気がひけるが、ここまでとした。持って帰ることも考えたが、airbnbにレンジが無かった気がして諦めた。

本日の教訓。Lucaliは友達と来よう! 1人ではこれが限界ですwww



帰り道に見かけた家の前のインスタレーション? がカオスなのでパシャリ。でっかいイタリア国旗とミニ星条旗のコントラストとnyではお馴染みのロゴが非常にポップ。この辺りのエリア、イタリアンが多いのかな?

お腹も一杯になったところで、幸せに満たされぐっすり寝たのでした。


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