To Me, Somewhere in the World #3
「好き」に理由っている?
Contributed by Yoko
Trip / 2021.12.01
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。
#3
日本中を旅したけれど、搭乗ゲートをくぐる瞬間まで見送ってもらったのは与那国島と釧路でだけだ。
ゲストハウスコケコッコー前の道。
釧路。
“何のゆかりもない”と言っては失礼な気もするが、北海道(道央)出身の私でさえ親近感を感じることはなかったまち。
しかしそのまちに、今やコロナ後だけで8回行っている。
行くたびに、
「よくこんなに来てくれるよね」と、定宿と化したゲストハウス①でも②でも言われ、
「また行くの!?」と、友人には言われる。
やれやれ、である。
だって好きなんだから、仕方ないじゃない。
釧路駅。
記憶ある初訪問は数年前。
18歳まで住んでいた北海道だが、当時に訪れた記憶は無い。釧路は道東エリアに位置しており、
“とても、とても遠い場所”という印象だった。
何せ、道央から道東は気軽にドライブする距離ではない。例えば札幌から知床までは少なく見積もっても6時間以上はかかる。
道内だからと行って、家族で気軽に行ける場所ではなかった。なんなら東京から行く方が時間的には近いと思う……。
阿寒湖。紅葉の時期。
さておき、週末旅行にハマっていた会社員時代、たしか帯広in〜釧路〜知床〜女満別outの行程(全て公共交通機関での移動)で訪れた釧路の印象は、実はそんなに良くなかった。
「なにも無い」
正直なところ、以上、である。当時は本当に「少し寂しいまち」という印象しかなかった。
駅は古めかしく、人は少ない。唯一の観光地という夕陽が見える橋では物悲しさすら感じて、再訪はないかなと思っていたくらいだった。
ゲストハウス コケコッコー。
季節はめぐり、再び釧路(正確には阿寒町)を訪れた時に泊まったゲストハウスとの出会いで、全ては変わった。
ゲストハウスに到着すると、外でたむろしていた兄ちゃんたちが、笑顔も金髪も(タバコも)全力全開で開口一番、
「ビールどうぞ!」と来たもんで。
ビール苦手なんだけど、とも言えず、久しぶりの運転で疲れていたこともあり、半分ヤケでゴクリと飲めば、
「うま〜〜〜〜〜」
と、飲めないはずのビールが一瞬で好きになり、美味しすぎて大笑いしたのが全ての始まりとなった。
おかげでサッポロクラシックが一番好きになった。
外でたむろしていた関西弁の金髪兄ちゃん、オーナーの姉ちゃん、でっかい兄ちゃんたちご一行様を“怖そうだ?”と思ったのはほんの一瞬。
心はオープン、優しさは全開の兄ちゃんたちとはすぐに打ち解け、たった1泊、ほんの12時間の滞在で心をガッツリ掴まれてしまったのだから不思議でしょうがない。
キンキンに冷えた生ビールの美味しさと、兄ちゃんたちの初対面でのギャップ、いまだに思い出しては笑える出会いだ。
何度目かの訪問時、友人を連れて行った時に。こういうの嬉しい。
良い人たちが「良い人たちです!」と自然に教えてくれると、すごくありがたい。初対面で壁を作る間もなく、すぐ好きになれるから。
旅をしている時に、壁を作っている時間はないんだよなあ。本当は。
ゲストハウス・プルーフポイントのロビー。この日は一日ラウンジのソファでごろごろ。
その時に利用した別の釧路のゲストハウスにも、その後、何度も通うことに。
こちらも、オーナー夫妻もといスタッフさんがみんな良い人。
ラウンジのカウンターでボーッとしてたら、山菜やらうどんやら持ってきてご飯を振る舞ってくれることも一度や二度じゃない。スタッフさんがみんな名前を呼んでくれるところも嬉しかった。
山菜祭り。どんどんできていく料理を子供のように待つ。笑
さらには、来るお客さんまでみんな良い人。
23時消灯のラウンジで、24時すぎまで(小声で)大人たちとカウンターを囲んで、旅や仕事の話を夢中でしていたこともあった。
もちろん、飲みながら。
何度も深夜までトークした、ラウンジのカウンター。
話しながら「なんでこんなに楽しいんだろう」と思わず考えていたのだけれど、たぶんそこには誰かを否定する人がいなかった。
どんな旅のスタイルも「いいね」という反応しかなかったし、仕事のスタイルについても「そういう方法もあるんだね」「それもいいね」と、前向きな会話にしかならなかったように思う。
釧路湿原は細岡展望台から見るのが一番おすすめ。
これは長期旅行で来る人が多い道東ならではだと思うけれど、仕事を辞めた直後だったり転職する前のタイミングだったりして、出会う人は瞬間的に無職の人も多く。
人生の余白を楽しもうとする大人が集まっている場所だからこそ、良い意味で寛容な人に多く出会えたのかもしれない。
寛容、自然体。そんな人たちが集うまち、釧路。
阿寒町・松屋のケーキがお気に入り。ゲストハウス・コケコッコーからすぐ。
再訪を重ねる中で、友達を連れて来て観光地までドライブしまくる旅になる時もあれば、もはや観光せず宿に一日いるだけの滞在をする時もあった。
でも、どんな時でも楽しい。
みんなでご飯を食べたり、今回の旅の行程や今までの旅について話したり、これからの人生や今までの人生について話したりした時間の全てが。
摩周湖。天気が良いとキレイすぎてビビる。
大自然の見所がたっぷりある道東エリア。何度見ても良い景色がたくさんあるし、お気に入りの場所があるから再訪を重ねている。
だけど行きたいと思う一番の理由は、そこに行けば楽しい時間との出会いがあるから。会いたい人たちがいるから。
ゲストハウスコケコッコー。ハンモック大好きでいつも使ってたらいつしか「専用」フダが。
市場で買ったカニを持っていけばカニ女王の称号を授与してくれ、いつも宿で気に入って使っているハンモックに「専用」と書いてくれ、飲みたいビールを持参するとめちゃくちゃ喜んでくれる人たちがいる……から。(笑)
釧路・幣舞橋から見る夕焼け。今はとても好きな景色。
「最近、あと何年やれるかなって話すんだよね」
阿寒町の宿の兄ちゃんに言われた時、まだまだ先のことなのに少しだけ寂しくなってしまった。
いつもみたいに空港まで送ってくれて、空港でカンパイをし(!)、お土産にマリモ(瓶詰め)くれて名前までつけてくれて、そんな人たちはやっぱり他にはいないから。(笑)
釧路空港でカンパイ。本当、笑った。
保安検査を通っても、制限区域内外を区切るガラス越しに聞こえるんだか聞こえないんだかわからないような会話をして、搭乗ゲートをくぐる瞬間に後ろを振り返ったら絶対に手を振ってくれる。だからこっちも笑顔で手を振れる。旅の最後まで一緒。
「よくこんなに来てくれるよね」と言うけれど、そんなの、そういうとこだよ。
また。
ーーーーーーーーーーーーー
ゲストハウス コケコッコー(冬季休業期間あり)
https://www.gh-kokekokko.com/
ゲストハウス プルーフポイント
https://www.proofpoint946.com/
アーカイブはこちら
Tag
Writer
-
Yoko
長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。