interview: Matt McCormick

About Time #21

interview: Matt McCormick

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.06

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回はアーティストのMatt McCormickへインタビュー。

#21

Mattの作品を最初に知ったのは2016年。Carrots by Anwar CarrotsのディストリビューションをするJered Vargasが自身のパートナーとやっているブランド、One Of These DaysのTシャツやバッグを大量にくれた時のことだった。

Anwar:「そのバッグはMattが手描きしたものだ。アートピースみたいなものだから、使わずにとっておけ。要するに、彼は次世代のWes Langといったところさ」

彼からそう言われたら、その通りにするのが正解であろう。
Mattが手描きしたバッグは新品未使用の状態でいまだにとってある。


その後、確か2017年だったかな。

Verdy君:「三井君、確かJohn Mayer好きでしたよね?友達がJohn Mayerの靴のデザインをしているんです」


(2017年9月)

と彼の事務所で紹介して貰ったのがMattだった。Mattと話しているうちに、彼がJeredのパートナーであり、僕が手にしていたバッグに手描きのイラストを施した張本人である事が分かり、一気に意気投合した。

元々はOdd Futureのツアーマネージャーをしており、その後タトゥーアーティストに転身し、一気にその界隈で名を馳せた後、父の影響もありペインティングを始める。

2017年にLAにあるMattのスタジオに初めて訪れた時は、


(2017年撮影)

カウボーイ、夕焼け、マルボロ、サボテン、ドライブウェイサイン等をモチーフにした、美しくて無骨ながらどこかポップでカラフルな彼のペインティングに大いに魅せられた。


(2017年撮影)

アメリカの大自然がまるで写真かの様に目の前に広がる。Mattの絵画の規模感は幅広いが、彼の魅力が最も生きるのは大きなサイズ感の作品だ。



今回、LAX空港から向かったのがMattとJeredのスタジオ兼事務所だった。Anwarが待ち合わせのスポットとして指定した。
オフィスの待合室にいると、Mattの愛犬Emmaが急に現れ、僕を舐めまくるので思わず彼をタグ付けすると、Mattがやって来た。

「ウソでしょ?Sho ここで何やってるの?」

彼の姿を見た瞬間に決めた。そうだ。インタビュー第1号は古き良きアメリカの原風景と全アメリカン男子の憧れであるカウボーイを独特なタッチで描きつつ、ファッションデザイナーとしても活躍する傍ら、John MayerやGreatful Deadにもグラフィックを提供する、Matt McCormickにしよう。

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日本での個展? そうだな。やりたいよ。Neighborhoodとコラボしてから、俺の日本での認知度も上がったと思う。もっとファンベースを固めたいよ。
アメリカでの活動は自分でどうにでもなるけど、ヨーロッパや日本では協力してくれる人が必要だからね。ていうかさ、Neighborhoodのコラボアイテム、実は一個も持ってないんだよね(笑)。送られてくるのかなぁー? と思ったら全然来ないから、欲しいって頼んだんだ。そうしたら全部売り切れたってさ。まあ、でも嬉しいよ。日本の皆んなが気に入ってくれたんだからね。
ところで国際線ってどんな状況? ガラガラ? そりゃそうだよな。



Shoはこの絵が好き? そうか。最近の作品だよ。まだ描き途中さ。今取り組んでいる作品をいくつか紹介するよ。



この絵はハンマーでぶっ壊されたコーラのボトルとコピーっぽいタッチのNASCARが共存している。コピーっぽくしたのはパンクライブのフライヤーを意識したからなんだ。
なんせガキの頃はパンクショウに夢中で、よくその手のフライヤーを貰ったもんだ。それで、レースカーの衝突や割れた瓶は「破壊」のイメージを象徴しているけれど、そこに「生」の象徴であるイーグルが登場するわけ。
要は現実世界の様に様々な要素が互いにぶつかり合って、やがては一つになる様を描いているつもりだよ。俺が影響を受けたものを取り入れつつね。



この絵の馬はマルボロの広告で使われていたそれのオマージュだ。俺の大好きなアーティストRichard Princeも昔描いている。
フットボール選手兼野球選手のDeion Sandersは俺の子供の頃の憧れさ。Deionが馬と大自然に対して、まるで祈りを捧げているかの様なシュールな感じが凄く気に入っている。まあ、あまり俺の作品にはない珍しく攻撃的な雰囲気すら有しているよね。Georgia O'keefe の影響も反映させたかったんだ。
何でこんなにマルボロに執着するかって? 実はもうタバコは吸わないんだけど、象徴みたいなもんさ。アメリカ文化のね。自由の象徴の理想というか。古くから伝わるDIY的なノリさ。心の拠り所というか、オマージュとして採用するのに最適なのさ。個人的にね。



例えば、この竜巻は俺としてはマルボロと大差無いのさ。俺個人にとって、それらは首尾一貫したコンテクストとしてペインティングの中に生かされている。
俺の目標は...作品っていうはスクラップブックの一部みたいなものでさ。全ての作品が最終的には俺という人間のスクラップブックになれば良いかな、と考えている。
最新作? いま目の前にある多くの作品がまだ仕上げ途中さ。さっき見せたコーラとナスカーとイーグルの絵なんて、まだ描き始めたばかりだよ。絵の具の乾く具合によって進行も異なるから、同時に複数作品を描くのが一番効率が良いんだ。今は6作品同時並行で手掛けているけれど、12作品同時にやった事もある。壁にキャンバスをこの様に掛けると俄然やる気が起きて集中出来るのさ。

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Mattのスタジオにはアダルトコンテンポラリーロックが爆音で鳴り響く。ここには何度も訪れているが、彼がかけるのはいつだってロックミュージックだ。
自身の気分で様々なロックサウンドをスタジオ内に鳴り響かせ、それもまた彼のインスピレーションとなっているのだろう。

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One Of These Daysと絵画に対する取り組み方の違い? One Of These Daysには最近すごく多くの時間を割いているんだ。以前に比べてより本格的になってきた。服のクオリティーを高めているんだよ。ガーメントとでも言おうか。もはやTシャツやフディーにプリントするだけのブランドじゃないんだ。
全てアメリカ製という所もこだわりさ...見せてあげるよ。

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サンプルが展示された部屋に移るとスタッフが3人いて、Mattが業務の指示を出し始めると自然にインタビューは終了した。

「服は撮らないでくれ。ネットに上げて欲しくないんだ」

この辺の徹底ぶりからもMattの絵画だけにとどまらない、ファッションに対するこだわりを感じるのだ。
程なくしてJeredがアメリカ大手のデパートのバイヤーを連れて来て、新コレクションについてのプレゼンが始まった。

One Of These Daysはより無骨にMattが好きなワークウェアをコンテンポラリーにアレンジしたシンプルかつエッジーなブランドになった印象を受けた。
日本でいう所のルードファッション的な文脈だ。だから、彼等がNeighborhoodとコラボレーションしたのは必然であっただろうし、Mattはアートのみならず、ファッションというコンテンツにおいても、日本に大きな影響を与えられるはずだ。

僕は服も絵画も大好きだが、デザインも出来なければ、絵も描けない。所謂、一般消費者だ。
そんな僕からすると、アメリカンカルチャーをアートとファッション、両方のプラットフォームに落とし込めるMattは大谷翔平もびっくりの二刀流アーティストであると断言できる。



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