interview: Kyle Ng

About Time #22

interview: Kyle Ng

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.07

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回はデザイナー・クリエイティブディレクターのKyle Ngへインタビュー。

#22

Kyle NgはBrain Deadの主宰者の1人であり、デザイナーであり、クリエイティブディレクターでもある。

僕が彼に初めて会ったのは、2017年にVirgil Normalで行われたVerdy君Carrotsとのポップアップにてパフォーマンスをした時の事だった。



その後、親しくなってからは日本でもアメリカでも度々会っており、Virgil NormalとBrain DeadがTrunk Hotelで行ったLA Nightsを手伝ったりもした。

Kyleは本当に多才で、2017年には"Social Fabric"というアパレルに関するリアリティー番組(以前はNetflixで見られたのだが)のホストも務めていた。非常に才能に溢れた男で、多趣味。スケートボード、ボルダリング、ペイントボール、そしてローラーブレード等スポーツからマジック・ザ・ギャザリング、ウォーハンマー4000等ゲームまで。自身でDJをしたり、Brain Dead Recordsとしてレーベルを運営したり、NTS Radioとタッグを組んでラジオ番組もやっている。そして去年はフェアファックスに映画館、レストラン・カフェ(Slammers)、Brain Deadストアが全て併設された"Brain Dead Studios"を2020年の10月にオープンさせた(元々はFairfax Cinemaという映画館だったところを居抜きした)。











夜に週5回映画の上映を行い、毎週水曜日はSlammersにて「マジック・ザ・ギャザリングナイト」が開催されている。現在のKyleはといえば、ローラーブレイドにどハマり中で、ローカルのローラーブレイダー達とビデオ撮影に勤しむ日々。

今年の8月には老舗ワークウェアブランドDickiesとパートナーシップを結び、シルバーレイクにストア兼アートギャラリーもオープンした。







この様に、食からサブカルチャーそして音楽、スポーツまで全てを抑え、且つその全てとBrain Deadというブランドを通して積極的にコラボレーションしているKyleの動きはLAのみならず、世界的に見ても非常に珍しい。そんな、今LAで1番面白くカッコいい動きをするBrain DeadのKyleに話を聞いてみた。

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Brain Deadというブランドはコミュニティーと体験をとても大事にしているんだ。実際にものを目で見て手で触れられる場所があるのは重要さ。Brain Deadはライフスタイルの全てを手掛けるブランドだから、ただのアパレルストアにはしたくなかった。映画とコミュニティーへの愛をここで表現したかったのさ。だから、ここフェアファックスの映画館が最優先事項になって、2階のストアは正直に言って二の次だったね(笑)。
一方、シルバーレイクのストアはディッキーズとの共同ストアなんだけど、ここのストアよりお手頃なディッキーズのアイテムが手に入るネイバーフッドストアみたいなものを作りたかったのが始まりさ。スタンダードなディッキーズの874にBrain Deadの刺繍が施されているのが定番アイテムで、限定コレクションも出すつもりだよ。プリントTシャツとかも置いてあるし。

毎週水曜日に「マジック・ザ・ギャザリングナイト」を開催してるのは...そうだな、マジックにハマったのは本当にここ数年なんだけど、やっぱりプレイヤーのコミュニティーが大好きなんだよ。新たなマジックファンも増やせてる気がするし。コラボアイテムを出して終わりじゃなく、本当の意味でマジックのコミュニティーに貢献したかったんだ。その意味で毎週水曜日にイベントを開催してるんだ。

映画館では週5日映画を上映して、ライブなんかも開催している。Turnstileもこの前演奏したし、スタンダップコメディーナイトもやってるよ。最近でいうとラッパーのDanny Brownがパフォーマンスしてくれた。クールな事が沢山出来ている。

2階のストアでは、来店してくれる人々にファッションという概念を超えた文脈を伝えたかったんだ。僕らはドーバーストリートマーケットにもスペースがあるけれど、あそこではあくまでファッションに特化した場所作りがされているじゃない?

原宿のストアにもここのバイヴスを持ち込んだんだ。当然向こうでもコミュニティーを築き上げたいのだけれど、コロナ禍のせいで思う様には進んでいないよ。でも、近い将来実現したいね!

去年起こったBLM一連の僕の動き(Kyleはフェアファックスで起きた暴動でめちゃくちゃになってしまった店の修復のボランティア活動に積極的に参加し、BLMムーブメントへの賛同を呼びかけ、チャリティーTシャツを販売し、純利益の5000万円を全てしかるべき団体に寄付したのだ)に共感してくれたって? それは嬉しいな。僕は正直で良い人間でありたいし、それって1番重要なことでしょ?
「ビジネス上の都合で」とか「友達だから、どうのこうの」等は関係無い。自分の信念を貫く事が大切だと思っている。BLMについて、様々な場面で「それって間違ってない?」と感じる事が多々あったんだ。黒人カルチャーという他人の文化を利用して金を稼いでいるブランドが沢山あるのに、彼等の多くが全く声を上げなかった。だから、僕は立ち上がって正しい事をしたいと思ったまでさ。芸術は信念と思想の基に成り立っているんだ。
僕はパンクとアートを愛して育った。その僕がストレート・エッジで、Brain Deadというブランドを手掛けているにも関わらず、BLMで起きていた一連の事件から目を背けるなんて、有り得ない事だ。ファッション業界に身を置いている者として責任を果たしたかった。だから、Brain Deadとして立ち上がり間違っている事に対して「間違っている」と声をあげた。それに対して、不快に思う人がいるなら、彼等は何故自分たちが不快感を抱いているのか考える必要がある。
コミュニティーとは人種にとどまらず、創造性にまで及ぶよね。その間口をBrain Deadからより広げたいんだ。

今、プロレスリングリーグを立ち上げようとしていてさ。1月にパリで初披露するんだけどね。ファッションウィークにファッションショーを全くせずにレスリングだけするのさ(笑)。面白いでしょ。

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お分かりいただけただろうか? Kyleは非常にに誠実な人間であると同時に、クリエイターとして別次元的に天才だ。Brain Deadはファッションという枠を超越した唯一無二のブランドであり、だからこそLAコミュニティーは、そして世界中のBrain Deadファンは同ブランドを愛して止まないのだろう。僕もそんな人間の内の1人だ。



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