interview: T. Rex(Tyler Rexeisen)

About Time #24

interview: T. Rex(Tyler Rexeisen)

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.09

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回はアーティストのT. Rexへインタビュー。

#24

T. Rexの作品を初めて見たのはインスタグラムのエクスプローラーページだったと思う。角の生えた真っ赤な全裸の女性がヤケに印象的でフォローした。程なくして、彼のグラフィックがTシャツにプリントされているのを目にし、それがデザイナー、スタイリスト、ファッションアイコンであるIan Connorの"Born From Pain - Sicko"であることが分かった。その後、2020年に村上隆氏の運営するAnimanga Zingaroにて彼は個展"LOST ANGELS"を開催した。


(2020年撮影)

これがT. Rex史上初の個展だった。ここでもやはり角の生えた真っ赤な全裸の女性達は健在で、カラフルなバックグラウンドと彼女達のコントラストが印象的だった。インスタ上でずっと目の当たりにしてきたイメージを初めて生で鑑賞し、言葉では表せない衝撃と感動が入り混じった感覚を味わった。そして今回、ロサンゼルスPROMにてアメリカでは自身初の個展"American Spirit"を開催した彼に同ギャラリーで幸運にもバッタリ出くわしたので、急遽話を聞くことにしたのだった。

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やあ! Rexだよ。本名はTyler Rexeisen(タイラー・レクスィーゼン)っていうんだ。アーティストだよ。今回ビバリーヒルズにてアメリカで初の個展を開いている。ムラカミの所でやった個展に引き続き2回目さ。パンデミック直前にあの個展を開く事が出来て本当にラッキーだった。今回は全て新作で、新しい技法を使っているんだよ。キャンバスにインクジェット印刷をして写真の上にアクリル絵の具で描いている。ミックスメディアも使用しているよ。この行程がすごく楽しいんだ。



例えば、この作品の2人は実はYeezy Seasonの写真をインクジェットでプリントしてあるんだよ。俺はファッションが大好きだからね。ランウェイの写真を用いて自分なりの文脈でストーリーを語るのが好きなのさ。この作品にはその全てが詰まっている。俺流のストリートアートってとこかな。グラフィティーやストリートにある広告の上に描くのとすごく似ていると思うんだけど。



何故、俺の作品は角の生えた赤い女性ばかりかって? 実は人生経験においてのトラウマがきっかけなんだ。生きている中で感じた「負」の感情をアートを用いて「正」に変えたのさ。大人になって、過去に憤りを感じた人達に対する復讐心みたいなものは、割と収まってきた。だから角は怒りというよりは、誰もが心の中に持っている人には言えないある種、危険な嗜好を表しているんだ。それは女遊びかもしれないし、タバコかもしれない。誰もが何かに対して中毒症状があるわけで、その全てを代弁してくれているのが俺が描く女性なんだ。ある人は純粋が故に俺の作品に嫌悪感を示すかもしれないし、ある人は先程話した様なトラウマを乗り越えようとしているのかもしれない。人は時として自分を悪魔に重ね合わせる事がある。要するに、誰もが心の中に潜んでいる悪魔を描いているんだよ。そして、それは否定のしようがない事実なんだ。セックスが嫌いな人間なんていないだろ? 読者の皆さんのおじいちゃんだってセックスが大好きな筈だ(笑)。だから「自分にもっと正直になれよ」って話なんだ。


(Complex Conにて撮影)

"sicko"というブランドについて知りたいって? 僕はいわばsickoのアーティストなんだ。友達のIan Connorがオーナーで、彼が俺の事をインスタで見つけてくれたんだ。今のファンベースがあるのも彼のおかげだよ。だから同ブランドの多くのアートディレクションを担当している。今では他にも沢山のデザイナーがsickoにはいるんだけど、俺は今後もsickoの一員だよ。Stussy Tribeと同じさ。sickoは俺にとってのtribe(仲間・家族)なんだ。













何故、俺にとって人生初の個展が日本で行われたかって? 俺はムラカミに常にインスパイアされてきた。アートオタクでアートについてはずっと勉強していたからね。そして、Kanye West等ヒップホップを沢山聴くんだけど、彼らからアートとヒップホップには繋がりがあるってことを教わったんだ。それが自分のアート界における立ち位置みたいなものを考えるきっかけになった。だから...あれ? 何の話をしていたんだっけ?(笑)そう! だから、sickoに関わるようになってタカシのスタイリストであるCherryが俺に連絡して来てくれたんだ。で、ムラカミのGagosianでの個展で本人に出会い、自分の作品を見せた。そうしたら、日本でミーティングして貰える事になり、個展を開いてくれるというオファーを貰った。ぶっ飛んだ話だと思ったよ。タカシはCherryに繋いでもらう以前から、インスタのDMで俺のアートが好きだと言って、フォローはしてくれていたんだけどね。その時もビックリした。2019年のComplex Conを一緒にやって、売れ残った作品は全部タカシが買ってくれたよ(笑)。それがキッカケとなり日本での個展が実現したんだ。最高だったよ。



その時の経験があるからこそ今回の個展が開けたんだ。そもそもの個展のやり方というものを学んだよ。賢いお金の使いどころとかね。内装にムダなお金をかける必要はない。とかさ。作品で勝負するべきだ、という個展そもそもの理念とか。



ムラカミ程のアーティストから認知をされること自体素晴らしいわけだし。キャリアのきっかけとしてこれ以上の事はないよね? 今でも彼とは連絡を取り合っているよ。彼のお父様が最近、他界されたことも知っている。だからお悔やみも申し上げたし。彼の作品を見るといつも強烈に共感するんだ。もの凄くエネルギーを貰うし、アーティストとしての「誠実さ」の様なものがそこにはあるんだ。彼はお金の為に自分の嫌な仕事をすることは無いだろう。自分の信念を基に作家活動をしているはずだ。そんな彼からお墨付きを貰えるのは光栄な事さ。



パンデミックが終わったら日本に戻る準備は出来ている。台北でトイを出す予定でそれが楽しみだ。現地には行けないかもしれないけれど、それに合わせて作品もいくつか展示する予定だ。カフェとコラボもするかもしれない。T.Rexフードみたいな感じでね。それが次の台北でのプロジェクトさ。12月に開催される予定だよ。トイはエディションだけど、オンラインでも売るから安心してね。メタルエディションも出すからそれも楽しみだな。なんせ初のトイだからね。今週末のデザイナー・コン(このインタビューが行われたのはアメリカ時間の11月9日)にも行くんだけど、芸術家が手掛けるオモチャが大好きなんだ。どのアーティストのトイが1番クールかな? ってね。誰が1番成功していて、誰のペインティングが最高か? という観点よりも、カッコいいトイをリリースしているアーティストは誰か?っていう目でどうしても見ちゃうんだ。すごく楽しみだよ。コレクション出来るものって良いよね。



それでいうと、シルクスクリーンプリントだってコレクターズアイテムだよね。当然NFTもやっているけど、すごく上手くいっている。コミュニティーを築き上げるのが1番楽しい部分なんだ。みんなでゲームして、メタバースでコミュニケーションを取ってさ。そして、NFTとアート現物をセットで売ったりね。実のところ、今一点売れたところなんだよ。

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Rexは静かに、それでいて高い熱量で語ってくれた。すごく自分のアートに対し真摯に向き合っており、ファッションオタクで勉強家な彼を村上隆氏が見出したのも、当然だろう。Rexが日本、アメリカに留まらず、世界的なアーティストになる日はそう遠くない未来なはずだ。そして、僕らは彼の作品を鑑賞する度に自分達の中に潜む、憎めない悪魔と対面するのだ。



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