interview: Patrick Paige II

About Time #25

interview: Patrick Paige II

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.10

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回はバンド「The Internet」のベーシストで、ソロアーティスト・ラッパーとしても活躍するPatrick Paige IIへインタビュー。

#25

大親友のPatrickを紹介したい。いや、紹介するまでもないだろう。若くしてグラミー賞にノミネート経験のあるネオR&Bバンド "The Internet"のベーシストとして活躍するだけでなく、ソロプロジェクトではラッパーとしても活躍するPatrick Paige II(パトリック・ペイジ・ザ・セカンドと読む)と出会ったきっかけはやっぱり、Anwar Carrotsを介してだ。The Internetが初来日した際にPatrickが「日本で本物の鮨を食べたいのだけれど、どこに行けば良い?」とツイートしたところ、「Shoに頼め」とAnwarが彼と僕を繋いだ。そのツイートがきっかけで僕らは知り合った。


(2016年撮影)

その時はお互い忙しく鮨を一緒に食べることは出来なかったが、ライブには招待してもらい、こうして親しくなった。

その後、日本でもアメリカでもお互いが行き来する都度会い、親交を深めた。Patrickはガンダムやドラゴンボール等日本のアニメが大好きなので、彼と会う時は必ず日本でしか手に入らない様なガンダムのオモチャをプレゼントするのだ。


(2021年10月31日撮影)

何より僕らにとってスペシャルな絆は「誕生日」だ。Patが10月30日で僕が10月31日生まれ。でも時差のおかげで日本時間の10月31日に彼に電話すれば、僕らは共にバースデーを祝う事が出来る。そうやって、誕生日にはフェイスタイムでお互いを祝うのも僕らの習慣だ。



今回渡米した際、なんとPatrickから、「時間があるならウチに来て俺のおばあちゃんの手料理を一緒に食べようよ」との光栄なお誘いがあった(詳しくは#13参照)。なので、その機会を利用して彼にもインタビューに答えてもらった。なんせ、Patrickは今年ソロアーティストとして2作目の"If I Fail Are We Still Cool?"(「俺がしくじっても友達でいてくれるかい?」というなんとも意味深なタイトル)という素晴らしいアルバムを出したのだ。最高のBassラインはもちろんのこと、ラップも前回に引き続き担当している。そんな、The Internetというバンドのベーシストに留まらず、ソロアーティスト・ラッパーとして新境地を開拓していく彼を、彼が今ハマっている紅茶作りの最中に直撃したwww

----

幼い頃から飛行機が好きだったんだ。実は子供の頃の夢はパイロットになる事だったんだよ。で、アルバム制作中にふと、その事が頭をよぎったんだ。レコーディングが進んで、アレンジを加えている時にフライトをテーマにしたら面白いかなと思った。で、元CAの友達がいるんだ。だから彼女に来てもらって本物のCAが使う台本を読み上げて貰ったんだ。聞き手にあたかも旅に出た様な気分を味わって欲しかった。山あり谷ありの人生は、飛行中の乱気流に似ているだろ? 目的地に到着する事は、自分の人生における目標を達成した時の感覚にも似ている。だけど、旅も人生もそこでは終わらない。続いて行くんだ。それをアルバムで表現したかった。



タイトルから不安と恐怖が滲み出てるって?(笑)まあ、確かにその通りだね。当時、そんな不安と対峙していたんだよ。アルバムに取り掛かったのは2018年でちょうどThe Internetの"Hive Mind" 全米ツアーをやっていた頃だったんだけど、最初に書いた曲は"Good Grace"だったかな。ビートはこの家の俺の部屋で午前3時頃、ふと思いついたんだ。寝られなくてね。そこから2019年の間はずっとレコーディングに取り組んで、2020年の頭には出来上がっていた。サンプリングをやり直したり、サンプリングを取り除いたりっていう作業が多少残ってはいたけれど。で、その年の7月に完成したんだ。だから、1年半に及ぶ作業って感じかな。

コロナ禍にリリースに踏み切った理由? うーん...もし今年このアルバムをリリースしていなければ、きっとアルバムそのものをボツにしていたのではないかと思う。本来なら2020年にリリースしたかったんだ。でも、結果的に今年リリースして良かったと思ってる。人々が去年より心に余裕があるし、新しい音楽を欲していたから。2021年の夏は皆んな新しい音楽を聴いて、Netflixでタイガーキングを観てたでしょ?(笑)

アルバムのツアーは出来ていないんだよね。アルバムのプロモーションライブも1回しか出来てない。もっとやりたいよ。6ヶ月前にこのアルバムをリリースした訳だけど、まだまだ旧作とは言えないでしょ? どのアーティストもツアーをし始めたのはここ最近だしね。

ライブはバンドセットで演奏する。で、俺はベースとヴォーカルを担当するわけ。すごく新鮮だよ。フロントマンとして観客を楽しませて、存在感をアピールするのはバンドのベーシストと全く役割が異なる。俺のファーストアルバムはジャズ・フュージョンのインストゥルメンタルがメインだったから、ライブのやり方もThe Internetのそれと大差なかった。けれど、今回のアルバムは観客に対して語りかけて、歌って、ラップしてさ。全然違うよね。でも、とても楽しんでいるよ。超貴重な経験さ。

The Internetのライブとソロ、どっちが好きかって? 両方さ(笑)。それぞれ別の良さがあるよね。The Internetのベーシストとして演奏する時はベースの演奏に集中できて楽しいよ。ソロの時はより幅広い自己表現が可能だから面白い。実は以前からラップはしていたんだよ。誰にも言わずにこっそりとね。個人的な趣味としてやっていたんだ。だから、まさかキャリアになるなんて微塵も考えていなかった。
でも、Thunder Catの弟でThe Internetの元キーボーディストJameel Bruner(以前はKintaro名義で活動)が、背中を押してくれたんだ。「お前ラップ上手いからやった方が良いぞ」ってね。そう言われて「そっかじゃあやってみようかな?」っていう気になった。

バンドとソロの作曲方法の違いは、ソロは単純に1人で作るってところだよね。だからこそ、様々なプロデューサーを自由に起用して多種多様な曲が書けた。彼らにビートを送ってもらって俺がその上にメロディーや歌詞をのせるわけさ。ファーストアルバムは俺もプロデューサーとして関わったけれど、今回はインスタで知り合ったプロデューサーを採用したり、直接会ったりして本当に多くのプロデューサー達とコラボしたよ。

もちろん自分でプロデュースした曲も2曲くらいあるけどね。"Good Grace"は俺が作ったし、"Ain't Talkin Bout Much"はSyd(The Internetのヴォーカリスト)と共同プロデュースした。"Whisper"? あれはSteve(The Internetのギターリスト)がプロデュースした。



ベースを本格的に始めたのは2012年なんだ。実は俺はギターリストだったんだ。ロックスター志望だったんだよ(笑)。今も昔もメタルが大好きさ。SlipknotのオリジナルドラマーJoey Jordisonが亡くなった時はとても悲しかったな。つまり、2012年に俺はギターヒーローになる夢を諦めたのさ(笑)。

SydがThe Internetのファーストアルバム完成直後に連絡してきてさ。俺も何曲かプロダクションに関わったんだ。で、「ねえ!アルバムのツアーしたいからギター弾いてよ!」って言うんだよ。これはThe Internetが五人組になる前の話ね。で、「もちろん良いよ!」って俺は答えるわけ。で...これは忘れもしない、俺はスターバックスにいた時、Sydから返信があって「あ、やっぱベース弾いてくれる?」って言うんだよ(笑)。「え?」って正直思ったけど、まあ何でも良いや! やるよ! って感じさ。

そのSydのテキストが俺の人生を変えたんだよ。笑っちゃうのは、俺は自分のベースを2012年の終わりまで持ってなかったんだ。



これが俺が初めて手にした自分のベースだよ。LAのギターセンターで購入して、「サーシャ」って名前を付けたんだ。それまではずっとSydの安物のを借りてたんだ(笑)。確か日本製だった気がするよ。そのベースでめちゃくちゃ練習したんだ。

その甲斐もあって、今ではMTDとエンドースメント契約を結んでいる。MTDのダニエルとは親しくさせて貰っていて、俺が弾いているベースは全てダニエルのハンドメイドだ。あそこは親子でビジネスをしていると思うんだけど、今は息子がメインデザイナーなんじゃないかな。アップステート・ニューヨークに会社があってPhony Pplのギターリスト、エライジャと一緒に遊びに行った事があるよ。工場を案内してもらって製造工程も全部見せて貰った。あれは楽しかったな。

俺の次のプロジェクト? そうだな、今EPを使っているんだけれど、それを完成させたい。今回は前作よりもっと演奏したい。前回はあまりベースを弾かなかったからさ。



...さて、Sho紅茶が出来たぞ。温かいうちに飲んでくれ。


----

このインタビューをしている間にPatが作ってくれた紅茶は、今までの人生で飲んだ事のない味がした。ものすごく手が込んでいたし、何種類もの材料が入っているのがお分かりいただけるかと思う。美味しかった1番の理由は彼が愛情と丹精を込めて作ってくれたからだった。そんな、彼の最新作"If I Fail Are We Still Cool?"というアルバムも同様に彼の全てが詰まった素敵なアルバム。是非とも読者の皆様にも聴いていただきたいと思う。

大丈夫。Patがしくじっても俺はいつも君の友達だよ。



アーカイブはこちら

Tag

Writer