interview: Neal Brennan

About Time #29

interview: Neal Brennan

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.22

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回は作家でありディレクターであり、コメディアンでもあるNeal Brennanにインタビュー。

#29

Neal Brennanはアメリカでも有数の知的かつファニーな僕的にはインテリ系コメディアンだ。彼と僕との出会いは過去に詳しく書いたのでアーカイブを読んでいただきたいが、彼の素晴らしさを知るにはNetfilxで「ニール・ブレナンと3本のマイク」、「世界のコメディアン(アメリカ編がニール・ブレナン)」、そして「デイヴ・シャペルのマークトウェイン賞受賞スペシャル」のNealのスピーチの部分(誰がどう見てもこの日Dave以外で最高のスピーチをしたのはNealだった)をご覧いただきたい。
彼は「ニール・ブレナンと3本のマイク」でスタンダップコメディー史上、誰もやった事が無い事をやってのける。ステージ上に3本のマイクを立てて、1本で1発ネタ、もう1本で通常のネタ、そして最後の1本では自分のメンタルの問題について赤裸々に語るというスタイルを取ったのだ。それが、ファンのみならず業界全体で大好評となり、"スタンダップコメディアン:ニール・ブレナン"の名前が一躍有名となった。が、彼はそれ以前からコメディー作家としては超一流だ。僕が現存する世界最高のコメディアンと信じて止まないDave Chapelleと作り上げたカルト映画"Half Baked"、そしてComedy Central史上最高視聴率、更にはアメリカのDVDセールス史上1位のモンスターコメディー番組"Chapelle's Show"は共に、今でもアメリカのサブカルチャーに大きな影響を与え続けており、もはやレジェンド的な域に達している。他にもNealはNikeのコマーシャルのディレクション、Kevin Hart、Ellen Degeneres等早々たるコメディアンの作家やディレクションを担当している。そう、普通コメディアンとはスタンダップショーを始めてから徐々に作家等の裏方に回る事が多いのだが、彼の場合はそのステップを逆行しているのも実に興味深い。そして、何より白人コメディアンなのに、黒人コミュニティーから絶大な人気と信頼を得ているのも珍しい事だ。ヒップホップ、ラップカルチャーに特化した大人気ラジオ番組Breakfast Clubに白人コメディアンが3回も出演すること等普通はあり得ない。2020年のBLMムーブメントが盛んになっていた時は積極的に白人として黒人コミュニティーを支持する事の大切さを声を上げて主張し続けた(僕も彼の動画に日本語字幕をつけて微力ながら後押しした)。そんな彼は現在、Netflixの最新スタンダップスペシャルを撮影すべくNYCで3ヶ月連続でワンマンショー"Unacceptable"を講演中。日本でNealにインタビューをしている媒体等無いと思った僕は、折角なら彼に友人としてだけでなく、ライターとして話を聞いてみたいと思い彼のアパートへと足を向けた。だって、彼のコメディーを知らない人生なんてあまりにも損だから。

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今は3ヶ月間ここ(NYCのアパートメント)に寝泊まりしながら週に5、6回Cherry Lane Theatreで"Unacceptable"というワンマンショーをやっているんだ。Netflixのスペシャルにする為にね。本番は1月にLAで撮影するよ。何故、NYCで3ヶ月間公演する事にしたかって? NYCにはシアターカルチャーや、ワンマンショーのカルチャーがあるからね。LAにはあまりそういった文化が無いんだよ。ここではMike Birbigliaやその前だとEric Bogosian、John Leguizamoそして俺の友人のColin Quinn等がワンマンショーをやってきた。でもLAだとLaugh Factory(劇場)に出演して15分から30分パフォーマンスして終わりっていうのが普通なんだ。Shoの事も色々な劇場に連れて行ったろ? LAの劇場ってのはあんな感じで小さいんだよねw 1番良くてThe Comedy Storeってとこかな。

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そう。Nealと親しくなって以来、彼にLAで会う時は必ず彼のスタンダップショーに招待してもらっていた。今回、Nealの"Unacceptable"を見ていた時、彼が以前に発していたジョークを1、2個耳にした。そうか、ワンマンショウとはいわば、長年の集大成みたいなものなのか! 1時間半のワンマンショーを完成させるのに、一体どれ程の時間がかかるのだろう?
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"Unacceptable"を書き上げるのにどれ位の時間を要したかって? まず、「ニール・ブレナンと3本のマイク」をやっただろ? その後、2018年に1時間分のネタを書き上げ、そのうちの30分をNetflixに提供した(それが「世界のコメディアン」)。で、残りの30分はストックしておいて、そこから1時間分書いたって感じだな。"Unacceptable"は1時間半のショーだから...ちょいちょい場面でネタを思いつくことはあるわけで、そういうのも入れてるからね。正確には分からないな。Shoはしょっちゅう俺のショーを見ているから、「あ!また同じネタやってる」って感じるのかもしれないけれど、俺は気分で5分位内容を延長したりして、ストックしてあるネタを不意に加えたりするからさ。サービスしてるわけよ。因みに、それって俺が過去のネタでコスリ過ぎだって言ってんの?w

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いや、決してそういう意味じゃないんだがwww
単純に1時間半にも及ぶワンマンショーのネタを、数あるストックの中からどのようにNealが選ぶのか気になったのだ。アメリカのスタンダップコメディアンはLAであれば一晩に3〜4本のライブをこなす。それを週に何日もやれば膨大な量のストックが出来るのかもしれない。"Unacceptable"はどの様に構成されたのかすごく興味がある。
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俺はスタンダップコメディーは基本、つまらないと思っているんだ。もちろん、素晴らしい数人のコメディアンを除いてね。何が言いたいかというと、口が達者で自信に満ち溢れた奴らがステージ上にいるのをただ見るのって、そんなに特別な事ではなくない? それじゃあ、ショー、つまり見せ物としてはあまりに乏しいと思うんだ。「ニール・ブレナンと3本のマイク」で俺はブレイクしたわけだけど、あのスペシャルで俺は単に面白かっただけじゃないよね? そこで、自分の脆さをさらけ出したんだ。俺はそれが好きなんだよ。だから、いまや"Neal Brennan=面白くて、繊細な奴"ってイメージがついていて、それが俺の強みであり、ショーの強みでもあると思うよ。もちろんメンタルヘルスについての重要性についても訴え続けでいきたいし、ショーの構成も独特で面白かったでしょ? 今までのスタンダップコメディーショーの構成に無かったものを表現したかったんだ。何かプラスアルファの要素を加えたかったのさ。

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そう。今回の"Unacceptable"も前回の「〜3本のマイク」に引き続き、非常に凝った演出がなされていた。今回はNealの友人が今回のショーの為に作ってくれたバックドロップが活躍するのだが、その発想はどこから湧き出たものなのだろうか?
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今回でいうと友人が作ってくれたバックドロップをイジるところからショーが始まるよね。まず、今回の自分のネタを全て見返してみて、自分が何を言いたいのか考えてみたんだ。結果、「自己防衛」なんだって事が分かった。今まで色々な人達からずっと「お前は間違っている」と言われ続けてきた事を全て「いや、俺は間違っていない」と主張出来る術は無いのかな? それって可能かな? って考えてみた。そこでディレクターのDerek Delgaudioがアイディアを提案してくれたんだ。で、それを俺が採用したって感じかな。オチはいつでも特別にしたいし、人とは違うことをしたいんだよね。

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序文でも書いたが、Nealは多才だ。作家でありディレクターであり、コメディアンでもある。だか、本人はあくまで自分はコメディアンであると言う。僕もそう思う。
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よく、「番組の構成作家をして下さい」って依頼が来るんだけれど、そういうオファーって俺には「どうぞ、ウチのレストランでお食事して下さい。因みに皿洗いは自分でやって貰います」って言われている様に聞こえるんだ。何故、「番組に出演して下さい」じゃなくて、「ネタを書いて下さい」なんだ? ってね。俺が作家として優れているから? こっちからしたら、じゃあ、俺の為にネタを書いてもらって良いですか? って感じさ。ネタを書いてくれよ。俺がステージ上でパフォーマンスしてやるからってね。
もちろんDave(Chapelle)やEllen(Degeneres)や(Chris)Rockみたいに俺が個人的に尊敬している人達の為なら喜んで作家として関わるよ? 所謂、重鎮達の為ならね? Will Smithがネタを欲しがってる? もちろん、提供するさ。

俺は自分のネタは全て自分で書いているよ。作家なんていない。まあ、今回はいくつかDerekが提案してきたネタも盛り込んでるけれどね。でも、それは彼に敬意を払っての計らいさ。Derekが「やばい!俺の両親が俺が考えたネタの部分で笑ってくれてたよ!」ってテンション上げて喜ぶのを見るのは嬉しかったよ。俺にもそういう時代があったからね。

まあ、でもとにかく専業作家にはなりたくない。CMのディレクターならやっても良いなって思う時はあるけどね。要は自分の時間を使って何をしたいかが俺にとっては全てさ。「自分が書いたネタを他人に言ってもらいたいか?」答えは「ノー」だ。「他人の為にディレクションをしたいか?」そこまで時間が奪われないなら「イエス」だね。Seth MeyersのNetflixスペシャルやMichelle WilsonのHBOスペシャルのディレクションをやったし、CMだってやるさ。ただ、自分が出演しないものに関して、わざわざ時間を費やしたくないのさ。俺は自分のディレクションだって自分でやるからね。

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そうなのだ! これほど多才なNealなら、今回の“Unacceptable"でディレクターを兼任する事だって然程難しい事では無かったはずだ。なのに、Derek Delgaudioというディレクターを敢えて採用した理由とは何だったのだろう。
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Derekはどちらかというと照明のタイミングとか、そっち方面のディレクション担当なんだ。舞台監督というか。だから俺と彼のコラボレーションという言い方の方が正しいのかもしれない。作家、編集、マーケティング等多岐にわたる部門で共作したという感じだな。で、彼の奥さんと彼女のパートナーがプロデュースを担当した。Derekは過去に700タイトルものショーを成功させているからね。百戦錬磨なんだよ。

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Nealの今回の"Unacceptable"はコロナ禍をイジるところから幕が上がる。このタイミングで行うスタンダップコメディーなので、イジらない方が不自然とも言えよう。エンターテイメント業界はコロナに苦しめられた。彼もさぞ、苦境に立たされたのだろう、と思いきや...?
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コロナ禍は俺のライフスタイルにすごく合っていたんだ。正直、全然気にならなかったよ。もちろん毎日死者の数を目の当たりにするのは悲しくて、気が滅入ったけどね。コロナによって引き起こされた一連の悲劇に関しては、すごく残念だったと思う。ただ、個人的に言わせてもらうと、俺はどちらかというと引き籠り気質だし、全然へっちゃらだったよ。スタンダップが出来なかった事すらありがたく思えたw 「そんなに働かなくて良いんだ!」ってね。コロナ以前は週5日はパフォーマンスしていたから。実はもっと精神的に凹むのかな? とか思ってたけど、案外平気だったね。「よし!今日は読書しよっ!」とか「ドキュメンタリー映画みよっ!」ってね。研究でも既に実証されているんだけれど、意外にも多くの人々がコロナ禍を実は楽しんでいたんだよ。過半数の人々が、コロナ禍を「案外悪くない」って思っていたんだ。実は多くの人が、社会的責任上で、「ノー」とコロナ以前は言えなかった事に関して、「ノー」と言わざるを得なくなり、有り難みをかえって感じていたりとかさ。「やった。重荷から解放された」って、思う人も沢山いたみたいだ。

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なる程。実は僕もNeal側の人間かもしれない。教師としての現場を離れ、新しい事業を手掛けようとした矢先のコロナだったが、13年間毎日多忙を極めた事もあり、特に2020年の4、5月辺りは混乱の中にもどこか安堵の気持ちすら抱いたのも事実だ。
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確かに仕事も減ったよ。CMのディレクションの仕事は全く入らなくなったしね。でも、その分ネタを書く時間が増えたし、とにかくコロナ禍はすごく過ごしやすかったよ。と、いうかね。このインタビューを行っているのは2021年の11月、コロナ禍が終わったかの様に話しているけれど、俺はそれに関しては懐疑的だよ。感染者数もまた増えているしね。今の状況を例えるなら、映画「13日の金曜日」の最後の15分ってところじゃない? 「いや、これジェイソンどう考えてももう一回襲ってくるっしょ?」みたいな。だから、俺はライフスタイルを変えるつもりは無いよ。他に選択肢も無いしねw 旅行についても少し考えたけれど、何かちょっと贅沢にすら思えてきてさ。「旅行」という発想がね。

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僕がNealに1番感銘を受けたのは彼の2020年の立ち振る舞いについてだった。BLM運動の最中、彼は積極的にアフリカンアメリカンを支持する声明を発信し続け、人種の平等の重要性を訴え続けたのだ。残念ながら、日本ではそれに関する報道が十分されていたとは思えないし、正しい報道がされていたとも思えなかった。僕は幼い頃アメリカで4年間生活していた時、「日本人である」という理由でリンチに遭った経験もあるし、人種差別は現に存在するという事を肌で感じている分、どうしても、日本人の人車リテラシーの低さに疑問を抱いてしまうところがある。Nealに、僕ら日本人がBLMについて学ぶ事の重要性について聞いてみた。
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いや、アメリカ人は日本人がBLMについて正しい知識を持っていないからって腹を立てたりしないさ。だって日本には日本の社会的問題があるだろ? つまり、中国との関係とか...いわゆるアフリカや社会的結束など奴隷制度とは全く関係の無い日本固有の社会問題がさ。だから、誰も日本人にBLMついての理解や指示を求めていないと思うよ。日本の報道の仕方が歪んでたって? それはつまりフレーミング(ものの見方が、特定の方向に誘導されること)なわけだけれど、そりゃ国も違って文化も違えば事象の理解が異なるのも無理はないと思うな。だから、誰も日本人を今回の事で批判したりはしないさ。それに日本のスニーカーオタクはこの30年間ブラックカルチャーに多大なる金を注ぎ込んでくれてるだろ? むしろ感謝してるよw ...これは人間の歴史なんだ。で、Shoはアメリカで育ったこともあって、アメリカの人種差別問題を重く受け止めているのだと思う。でもさ、正直、俺は日本が抱えている社会問題について何も知らないんだよ。で、人から聞いて「え?!そんな事があったの?!」なんて史実は世界中に山程あるんだ。だから、俺はアメリカの奴隷制度やジム・クロウ法、人種差別などが特別だとは思わない。いわば、「アメリカバージョン」の弾圧なんだよ。俺はそれの日本バージョンが何なのか検討もつかない。日本と中国の関係がひどく悪かったってこと位は知ってるよ? でも詳しくは何も分からない。そして、それがアメリカの状況より良いのか悪いのかは比べようが無いと思うんだ。アフリカンアメリカンのコミュニティーも別に日本に対して、「お前アメリカの差別の歴史知らないのかよ!」なんて詰めないと思うしね。これは国独自の問題であって、アメリカの問題だからね。アメリカが地球の中心だと思っている人が多いから、「BLMについて知らなきゃいけない!」って主張する人も多いのかもしれないけれど、「アメリカの黒人差別の歴史を知らないから日本人は人種差別主義者だ!」って話にはならないでしょ。日本には日本バージョンの同じ問題があるはずさ。だから、俺は「何で日本人はBLMについて声を上げないんだ?!」とは思わないな。白人アメリカ人の俺にはとても重要な問題だけどね。



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いかがだっただろうか? 特に最後の話題のNealの答えは秀逸で、僕は思わず「たしかにー!」なんて思っちゃって。彼はとても博識で、特にアメリカの歴史や政治について語らせたら、いつまでも話せちゃう位の知識があるはずだ。英語が分かる方はNealの"How Neal Feel?"を聴いていただければ明らかだろう。そして、Nealのコメディーが僕を含めた多くのファンを魅了するのは、彼が常に他のコメディアンには無い、Neal独自の脆さを全面に押し出した、自虐ともとれるネタの数々をポジティブかつユーモアを交え、正直に、そしてクレバーに表現するからなのだ。



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