Between the waves #17
名作に出会ってしまった
Contributed by Miki Takatori
Trip / 2022.01.17
#17
人生の豊かさは出会う言葉の数で決まる。
こんなひと節をどこかで読んだのを覚えている。
小さい頃から本を読むのは好きだったが、NetflixやYoutubeなど簡単に目で見て楽しめる娯楽が普及してからは毎年数えるほどしか本を読まなくなっていた。
そんな最近、アマゾンギフトカードをプレゼントで貰ったことをきっかけにKindleで本を数冊買って読み始めた。
紙の本に勝るものはやっぱりないが、本の中の世界へ入り込むことの楽しさが戻ってきた。
1冊目は前回紹介した「Atomic Habits」
そしてちょうど昨日読み終えた2冊目はミヒャエル・エンデ作「モモ」
もう少し早くこの本に出会っていたかった!とあらすじを読んだだけで心底思ったが、多分このタイミングで出会うべきして出会った本だと思う。
あらすじは以下の通り-------------------------------------------------------------------------------------
赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?
ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。
どこからともなくやってきた女の子モモがみんなの失われた時間を取り戻すために灰色の男たちに立ち向かう。
時間の真の意味を問うエデンの名作。
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実はこの本、対象年齢は小学5・6年生と書いてあるが、この若さで読むと多分途中で読むのを諦めてしまいそうな内容。
現在、25歳の私が今読んでやっと全ての意味が見いだせそうな深いことがこの本にはたくさん書いてある。
そして読み終えた瞬間の「やっと名作に出会えたかもしれない・・・!」というなんとも嬉しくて心が満たされたような感覚に陥ったのはいつぶりだろう。
この本が最初に書かれたのは1973年だが、今でも全く同じことがこの世界で起きている。
私たちは日常生活に便利さを求めすぎて、常に慌ただしく忙しい毎日を送ってる。
効率を上げることや無駄を省くことばかりに重きを置いて、相手の話をちゃんと聞くことや今ここに流れている時間を楽しむことを忘れている。
色々な便利な道具のお陰で、逆に昔より今の方が余暇があるはずなのに。
時間がある時には相手の顔を見て話したり、気持ちに余裕ができて人を助けてあげたりすることが出来ていた。
一方で「時間がない」と叫ぶ現代人は、どんなに大事な話でもチャットやメッセージで簡単に済ませ、いつもカリカリと短気になってしまっている。
「時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気づいていないようでした」
そして多分私たちに一番当てはまるのが「働きすぎ問題」
Work to Live(生きるために働く)かLive to Work(働くために生きる)のか。
生きるために必要な最低限のお金はすでに持っているはずなのに、将来の蓄えとしてあればあるほど良いと考えた貯蓄をしている。
明日、来月、来年生きている保証なんてどこにもないのに。
数ヶ月前、私はフリーランスとして働いていた会社から契約終了の知らせが来て、
世間一般で言うところの職無しに短期間なった。
焦ることもあったが、物価が安いバリに住んでいることとこれまでの貯金もあることを考えて
1ヶ月半ほど好きなことだけをする生活を送っていた。
毎日波がいい時間にサーフィンをし、たまに記事を書いたり、読書をしたり。
入ってくるお金は決して多くはなかったがそれでもバリで暮らすには十分でハッピーな生活を送っていた。
こんなことを書いていると親世代の人からは
「何、甘ったれたことを言っているの。時間とお金はいくらあっても足りないくらいよ」
とお叱りを受けそうだがこの本に出会い時間に追われるのではなく、時間を感じながら人生を楽しみたいと思った。
色々先のことが気になる世の中ではあるが、本の主人公モモの友達、道路掃除夫ベッポおじさんが言うように
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。
すると楽しくなってくる。これが大事なんだな。楽しければ、仕事が上手くはかどる。」
灰色の男たちに時間を盗まれないよう、そろそろプチ旅行にでも行って思いっきり贅沢な時間を過ごそう。
Miki
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Miki Takatori
1996年福岡生まれ。旅のマストアイテムであるサーフボード、ビキニ、ウクレレをスーツケースに入れ海沿いの街を旅する。現在はオーストラリア人パートナーとバリの小さなサーフタウンに住みフリーランス通訳・翻訳・ライターとして生活している。サンセット、サーフィン後のお昼寝、抹茶をこよなく愛する。