のんびり旅をする

Greenfields I'm in love #56

のんびり旅をする

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2022.01.21

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身のAya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#56

ママが日本からきてくれて、私たちは連日あちこち回って旅をした。
普段一人で歩く街並みも、クリスマス仕様なのに加えて、ママと一緒だからもっと特別感がある。雑貨屋さんが大好きなのはママ譲り。ロンドン中のお店やカフェで、2人して幾度となく心をときめかせた。そして2人のもう1つ大きな共通点は食べるのが大好きなこと。おいしいものって幸せだ。なんといっても、ロンドンにはおいしいものがあふれているんだから! “ママが来たら行きたいリスト”が大活躍して、ありとあらゆる料理を堪能した。

Wolseleyでブランチ。エスカルゴを食べてみた。最後に食べたのは日本のサイゼリヤのはず。



Claridge’sのアフタヌーンティー。おいしい! ちょっと高いけど。あと、アフタヌーンティーはやっぱり3段になってるのがいいと思った。



行ってみたかったスペイン料理屋さん。変わった料理が多くて楽しい。



Dishoomという人気なインド料理屋さんの、イングリッシュブレックファースト。すごくおいしい!



普段の家族旅行だと、その地その地の歴史由緒ある場所を、あちこち駆けずり回る。もちろんそれもすごく楽しいのだけど、ママとわたしの旅はそんないつもの家族旅行より少し無計画で、それこそロンドンじゃなくても出来そうなことだって多かった。でもママをみていたら、そんな他愛も無い時間ほど楽しそうにみえた。
とはいえ、1週間もあったから、こっちだからできることだって勿論たくさんした。
例えば、イギリスにきて半年経つのに、一度も行ったことのなかったミュージカル。
ベビーシッター先でおすすめされたアラジンは、生憎上映が終わったばかりだったから、ライオンキングを観に行くことにした。
その日は夜遅くから始まるミュージカルの前に、ディナーを食べにいった(そのせいで後から地獄を見ることも知らずに!)。このレストランは、ダイアナ妃も御用達だったらしい、da marioというところ。

顔が真っ赤なママ。



味も美味しく店員さんも気さくだし、おまけにお店の雰囲気もとても良くて、私たちはこのレストランがとっても気に入った。楽しくてお酒は進むし、メニューは美味しそうなものばかりでついつい頼み過ぎてしまう。塩気の多いものばかりで、明日は浮腫みで目が開かなくなりそう。

ダイアナ妃がいったと思うと、行ってみたくなるよね! 階段にも刻まれている。



店員さんとも仲良くなり、楽しいディナーだった。ママも私もすっかり酔っぱらっている。ミュージカルが始まるまであと少し! da marioのある場所は少しだけ都心から外れていて物静かだ。寒い夜道を、ママと腕を組んで走ったり歩いたり、きゃっきゃ笑いながら進んだ。照明もあんまりないし、なんともない真っ暗闇の1本道だったのに、ママが来ていた時間で、一番印象に残っている。

楽しそうに歩くママ。白光りしちゃったけどよく見るとにっこり笑っている。



無事にシアターについて、早速私たちを襲ったのは恐ろしい睡魔だった。さっきの寒さから打って変わって、会場は暖かすぎる。眠りたくないのに、ものすごい睡魔に何度も襲われ苦しかった。舞台が終わった後、ちょっと残念そうに、「眠かったけど…よかったね」と肩をすくめる私たち。きっとパパがみたら、アホかと一蹴するに違いない。

眠たい時のママに似てる。



またある日は、朝からユーロスターに乗って日帰りのベルギー旅へ行った。つい2か月くらい前に行ったばかりのブリュッセル。ビールが大好きなママと一緒に、私が初めてビールが美味しいと思えるようになったパブへ行ったり、クッキー屋さんで袋いっぱいクッキーを買ったり、どこへ行っても食べて飲んでばっかりの私たち。

偶然知って訪れた蚤の市。



ママが撮ってくれた。



ゆっくりしていて、いつまでも続きそうなママとの時間、でも確実に時間は流れて、ついに最終日になった。この日は前々から、ノッティングヒルへ行くと決めていた。この地で日曜日以外毎日開かれるポートベローマーケットは、土曜日が1番栄えているのだ。

ホテルのルームカードキーでTubeの改札を抜けようとしたママ。



最後の晩餐は、前にリアムと訪れた、ロンドン最古のパブへ行った(ちなみにロンドン最古を謳うパブはあちこちにあるから、真相はわからない)。 一週間、短いようで長いようで、でもやっぱり短かった。こんなに一緒に時間を過ごしたことはなかったかも。日本でみるママとはまた違う、いつもよりおっとりしていて、無邪気で、可愛いママだった。どっちのママも好きだけど、こっちにいるわたしたちは、親子というより、なんだか、姉妹みたい。

横にはお惣菜も。なんでも食べたくなってしまう…!



次の日は朝早く、ホテルにママの迎えがやってきた。まだ外は真っ暗だ。
日本へ帰るまで後1ヶ月と一週間しかないのに、やっぱりとっても寂しかった。頑張ってなぁとニコニコしながら柔らかい声で言うママは、よく見ると目に涙まで溜めている。わたしまで泣きそうになっちゃった。

ママが乗った車が去って、まだ朝が明けていない真っ暗闇でウーバーを待つ。

時に繊細で弱く、でも一方で、とっても逞しくて強いママ。
石橋を叩いて渡るタイプの彼女と、とりあえずやってみるタイプの私は性格も真反対だ。問題ばかりでよく怒られるけど、結局一番の味方でいてくれるのもママだ。わたしがクヨクヨしていたら、いつもなんの根拠もなく、大丈夫と自信を持って言ってくれて、私はその言葉に何度救われたかわからない。
きっとママにとって、この旅は大挑戦だったに違いない。ママがこの旅行が楽しかったらうれしいな。そして、また2人で旅行に来たいと思う。

空港で無事チェックインを済ませたママから連絡がきた。空港にあったハロッズのお店で、旅行の記念にクマのぬいぐるみを買ったらしい。しかもわたしの分まで! 大きなぬいぐるみを2体も抱えて飛行機に乗る彼女を想像した。変な人みたいに見えてなければいいけど。

帰ってわたしのぬいぐるみと会うのが楽しみだ。


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