凍った海に、海を重ねに

To Me, Somewhere in the World #12

凍った海に、海を重ねに

Contributed by Yoko

Trip / 2022.02.02

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#12

時間には遠慮がない。
2022年に入り、早ひと月がすぎた。

せっかく「1日」なのだから映画でも観ようかとラインナップを確認するけれど、気になる映画がなかった。
そんなことを考えていて気づく。長野に移住してからもう半年が経過していることに。

積もっては解けて積もっては解けて、の繰り返し。



寒いし、なんだか行きたいところもないしとブルー気味だった1月は、こたつから上半身を投げ出して天井を見る日々が続いた。仕事もほとんどこたつでしていたのだが、おすすめはできない。ひたすらに足がしびれるからだ。

それでも「これではもやしになってしまう……」と3日間だけ市外へとびだす。
上田、諏訪・松本、東京とそれぞれ日帰りで出かけた。大体、当日の朝に決心するコース。

路面に雪が積もっている日。



唐突に海が見たくなった日の話をしよう。

県外に出る元気はなかったので、長野県民の海(?)という諏訪湖を目指した。
図書館で借りた本を何冊も持ち込んで、外の景色には目もくれず一心不乱に読みつつ(返却期限が迫っていた)。何時間も電車に乗ったあと、諏訪湖の周囲に電車が近づく手前で気づく。

「あ、そういえば凍ってる」

諏訪湖は凍るのである。
海(湖)がゆらゆら揺れる水面が見たいな……と思っていたのだけれど、それは叶わず。気を取り直し、上諏訪駅の足湯で冷え切った足を温めることにした。
下諏訪も好きなのだけれど、駅だけでいうと上諏訪駅の方が駅構内に足湯があるという理由で優勝だ。ほんと〜〜に、あったかい。

上諏訪駅・足湯。



足が使い物になるまで温まったら、朝ごはんを食べると決めていた目的の店へ向かう。
パンは美味しかったけれどサラダのドレッシングがかかりすぎていてシュンとした。近くのお店で美味しそうなパンをお土産用に買い、気持ちをチャラにしてから諏訪湖へ。

長野県は街灯がそれぞれおしゃれ。今まで注目したことなかっただけ?



「こんなに寒いのに」と路面に雪がない不思議さを感じながら、諏訪湖近くにある温泉に向かう前に湖に寄った。若干持て余し気味のブーツを引きずるようにして。

凍った諏訪湖。



キンと冷えた空気に染まる湖。

湖の周りを陸上部らしき彼女たちが流し(ウォーミングアップのランニング)をしているところを見ながら、学生時代の陸上部の冬練を思い出して懐かしくなる。
冬は雪が積もって校内のランニングコースが使えないので、校内で階段トレーニングや筋トレをするか、街中を10km以上走って部活の時間を過ごしていた。そこそこの坂もあったのに、今思えばよく転ばなかったなと思う。ともかく雪国の冬練は試行錯誤なのだ。

奥の建物が片倉館。



さて目的地は片倉館。
一度に100人は入れるという千人風呂で温まる。平日の朝一番だったが、すでにお客さんが数人いらした。とはいえ広いので、もちろん密とは無縁。個人的には広さよりも深さにびっくりした。本気の「泳がないでください」だなと思うくらいに。とにかく気持ちがよかった。

建物も重厚感があって魅力的。1階がお風呂で、2階は休憩室。湖を一望できるテラスに一瞬だけ出て、凍っていない諏訪湖を想像して退散。もちろん現実の湖は凍っている。

2階テラスから。



帰りに松本に寄り、目的の店をはしご。

カフェで展示を見て、欲しかった本を買って、温かい飲み物を飲んで、甘いマフィンを買って、初めての店に立ち寄った。やりたいことばかりの詰め合わせ。はてブルー気味な気持ち、どこいった。

いったん外に出ると「これしたい・行きたい」、電車の時間、移動時間にすること(今回は読書)のパズルを組み合わせる作業がハイペースで進むので不思議。問題は、外に出るまで。始めるまで。それだけだから、考えずに出たり始めたりする必要性をひしひしと感じる。冷え切った朝にふとんから出る時、「出るべきかどうか」を考えてはいけない。

楽しむ天才になればいいよ。


アーカイブはこちら

Tag

Writer