Drive my, – 尾道

To Me, Somewhere in the World #18

Drive my, – 尾道

Contributed by Yoko

Trip / 2022.03.16

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#18

再上映された3時間のレイトショー。なぜかミーハーぶりを発揮して観た『ドライブ・マイ・カー』のせいで、観終わってからずっと海が見たかった。それも、舞台だという広島の海を。長野から中国・四国方面はとても行きづらいのにも関わらず。でもしょうがない。すっかり行きたくなってしまったから。やはり今回も急に行くことに決めて、広島へ向かった。いったん関東に出てから、夜行バスで。

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USHIO CHOCOLATL. 向島。



初めてではない尾道。それでも新しい島と新しい道に出会って、すっかり新鮮な気分だった。向島に知り合いの知り合いのお店があるということで、それを理由に自転車で出かけてみる。最近、レンタサイクルといえば専ら電動ばかり乗っているので、電動自転車を求めた。向かいの島(向島と言う名前でもある)に電話をかけて、自転車の空きがあるかと尋ねると、あるらしい。ただ電動は用意がないので「乗りたいなら尾道から借りると良いですよ」と教えてもらう。どうやって海を渡るのか、とまた尋ねると、「船にのせられますよ」と一言。のせてみると、人は100円で自転車は10円、計110円で海を渡れた。

電話のおじさんありがとう。自転車借りなくてごめんね。



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旅で訪れる島はいい。暮らすのと旅をするのとは別だからこそ、不便さ100%でも純粋に楽しめる。思った以上にアップダウンのきつい坂を繰り返したのち、目的の店に立ち寄る。北海道の田舎みたいな場所だなと思いつつ、ここは瀬戸内の島である。船で来たが、陸続きの島なので割と住みやすそうな島だった。

そらのき。



次の目的地への道のりは、これまたアップダウンがきつい。下るのが怖いくらいの坂、ということは上りはとてもきついのだなと、着く前から帰り道を想像して少々ぞっとする。でも「そらのき」でも勧めてもらったので、今日は進んでみることにした。こういう場合、目的地まで進まずに途中で帰ることもあるけれど。

USHIO CHOCOLATL. 甘くて美味しい。



高台の有名なチョコレートショップ、高級さに驚きつつ、レジでは愛想が素敵なお姉さんに癒やされ、景色を見て(この方面からの海は好み!)、ソファでほっと一息甘いドリンクを飲んだ。そして同じ道を戻る。

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ONOMICHI SHARE.



チェックインまでまだ時間があったので、海が見えるというコワーキングスペースに向かう。「海が見える」と聞けば何でもかんでも心ひかれてしまうのだが、実際のところ「好きな雰囲気の海が見える」場所は少ないので、とりあえず行ってみることにしている。コワーキングスペースと同じ空間にあるカフェでコーヒーをいただき、海が見えるということはやはり日差しもすごいよねと確認しつつ、それでも海が見える環境で働くのはいいなと思った。個人的にはもうちょっと開けた海が好きだなと思ったけれど、気分転換には良さそうな場所。次来るときはここで働いてみよう。

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あなごのねどこ。



さて尾道で泊まったのは古民家ゲストハウス。古民家が好きだし、何人かの旅人におすすめされたことがあって気になっていたので訪問。こたつあり、漫画あり、お風呂の割引券あり、学校風の内装のレストランあり。

朝ごはん(和)。400円。



そして朝ごはんのおにぎりが美味しかった。ここ数年は朝に炭水化物を食べることが少ないが、おにぎりはいつ食べても美味しい。特に人が作ってくれたおにぎり。基本的に米派なのだ。ただおにぎりの中に具が入っていないことに気づいたのが、添えられた昆布を半分くらい無心で食べてしまったあとだったので、少々焦った。

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商店街からゲストハウスまでの細道。



チェックアウトをして、高台のパン屋さんへ向かう。昨日行った別の目当てのパン屋さんの売れ行きがすごすぎて夕方にはなくなっていたので、別のパン屋さんでリベンジ。米派と宣言したあとで何だが、最近パンも好きなのである。バックパックを担いだまま坂を上がった先にあったのは、パンのスペースが1畳くらいの本当に小さくて可愛いパン屋さん。パンのサイズもこぶりとは聞いていたものの、パン屋さん自体のサイズもパンのサイズもちょうどよくて、ひとめでファンになってしまった。

ネコノテパン工場



先に待っていたお姉さんは、お店の横にある公衆電話みたいなもので音楽を聴いていて「お先にどうぞ」とのことなので、先に入らせてもらう。入ってすぐ、所狭しと並べてあるパンがどれも本当に美味しそうで嬉しくなった。好きなブランドのショップでも時々「今日はどれも欲しくない」があるように、好きなパン屋でも同じことが起き得るが、真逆の日もあって、今日はまさしくそれだった。全部美味しそう。嬉しい。楽しい。でも迷う。結局、次に向かった海の場所でお昼に食べたが、味も美味しかった。

高台にあるパン屋さん。



店を出て「お待たせしました、どうぞ」とお姉さんに声をかけるも、そのお姉さんは次に待っていたお兄さんに「ちょっともたもたしちゃって、お先にどうぞ」とまた順番を譲っていた。可愛らしいお店に、可愛らしいお姉さん。お店までの道中、狭い道でバイクに苦戦していたおばさま。それを見守る笑顔の人たち。急ぐ人がいない朝に出会った、心地よい人しかいない空間。日常の人と非日常の人が交差する空間、尾道。海を見るにはちょっと都会すぎるけれど、きっとまたこの場所に来よう。


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