FillIn The Gap #1
自己紹介
Contributed by Haruki Takakura
Trip / 2022.05.06
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。
#1
“どうやら世界は私のいる「ここ」だけではなく、途方もなく広いらしい”
この言葉は、角田光代さんの「世界中で迷子になって」というエッセイで筆者が述べていたもの。本当にその通りだと思う。
これまで全く疑いを持たずに過ごしてきた自分の世界が、小さなきっかけで随分と広がって迷子になる。
面白くもあり、不愉快でもある。自分はどこまで世界を広げられるのだろう。
僕の名前は髙倉遥輝。現在は、ペルーのアルパカやアマゾンのオーガニックコットンを使うファッションブランドに勤めている。趣味は散歩と読書とビール。疲れ度合いによって処方箋を変えている。
あまり疲れてないときは散歩、ちょこっと疲れているって時は読書、さらに疲れている時はビールという具合だ。ちなみに、最近もっぱらハマっているのがSAPPORO麦とホップの黒ビール。発泡酒ではあるが、これがかなりイケる。
自己紹介はそんなところにしておいて。
僕は一昨年の3月より半年間、北欧に位置するデンマークという人口わずか581万人の国に滞在していた。大体、緯度も人口も北海道と同じというと、少し想像しやすくなるだろうか。
当時3月、日本では春分の日を過ぎ上着のいらない日々。一方のコペンハーゲンは強風、寒波、ほぼ曇りという気候に恵まれない日々。おまけに、到着して一週間も経たずのうちにロックダウンが始まった。きっと、前世では大人になってもピンポンダッシュをしていたような悪ガキタイプだったのだろう。
それでも、能天気な僕は、都会ですら喧騒のないコペンで落ち着いた静かな日々を過ごしていた。どこにいたって緑が目の癒しとなる。コペンハーゲンをコペンと呼ぶあたりで、少し調子に乗る僕のダサい人間性がバレ始めている気もする。
少し過去の日記を抜粋しよう。
“今、こうしてデンマークにいるのは、大学3年生を終え、休学という選択肢を取ったからだ。休学を通じて得た1年のうち、半分をデンマークでの生活に、残りの半分を就職活動や卒業論文に使う、そんな休学ライフを過ごそうと考えている。
と、休学中のプランを組んでいる高倉だが、当初休学なんて選択肢は頭になく、全くのアウト オブ想定だった。
自分で言うのもなんだが、高校・大学受験と割と自分の思い通りに進んできた僕は、大学をストレートの4年で卒業して良い企業に就職することが ”なんとなく” 理想のレールとして頭に浮かんでいた。
特に理由や意志があったわけではない。ただなんとなく、恐ろしいほどに何となくだけでそう思っていた。
だけど、いざ大学に入って色々な新しいことを知るうちに、どんどん学びたい、してみたいことが増えていく。大学入学当初、自分を構成するピースを失っていた自分にとっては、自分に素直になれる期間が大切なのではないか、そう思い始めた。と同時に、大学4年間という期間は短すぎることに気付く自分がいた。
この辺りの休学に至ったエピソードや休学中の経験は、長くなりそうなのでまた別の機会に綴りたい。ただ1点言えるのは、本当に『自分に素直な決断だった』。”
そう、このデンマークに到着した日に綴った内容の通り、僕は大学を休学して「人生のスキマ期間」を設けることにした。今思えば、人生の中で印象深いことが起きているのは奇しくも、夏休みや休学期間といった人生のスキマであった。
夏休みを越えれば急に大人びた雰囲気になる、そんな友人もいた気がしてくる。ふと、なぜなのだろうと気になった。
でも難しそうなので、一旦考えるのをやめた。じゃないと、この記事を一生かかっても出せない気がする。隙間どうこうでなく、編集部の方々から逃げるための穴を探して逃げ込む羽目になる(怖い人たちではない)。
もう一点、先ほどの日記で触れておきたいところがある。それは、"自分を構成するピースを失っていた"というフレーズ。人間は本当にないものねだりな生き物だなとも思うのだが、僕のコンプレックスは「普通だね」と言われることだった。
「普通でイイじゃん!」
そうなんですyo。そこがフシギナトコロナンデス。
井の中では、成績も悪い方ではなく、運動もそこそこにできた。それが故に、周りからは「遥輝は普通で良いよな」と言われることが増えた。
もしかして、自分には特徴がない?!!!! と思い始めた所から、「普通」が少しずつコンプレックスになっていく。
何を持って、みんなは「普通」って言うのだろう。
「普通」の基準はどこからきているのだろう。
まあ、そんなことがあり、自分は特徴のない人間。つまり、自分自身を構成するピースを失った人間かもしれないと思いながらも、スクスクと育ってきたのが大学入学前までのこと。
それから5年、正確には就職活動期だから4年を経た頃のこと。
面接で、Alicia Keysの「Underdog」を歌います!! なんて、自分の真紅だか泥色なんだかに染まった情熱丸出しのピースをアピールしているのだから、おかしなものだ。
失いかけていたピースの彩りを取り戻してくれたのは、あらゆる「スキマ」だった。僕をおかしくさせたのも「スキマ」だった。
ここで、一度逃げることにした問い「スキマ期間を越えれば、成長したように感じる友人が現れる現象」について再度考えてみる。忘れたと思ったでしょ。こういうところは忘れないんですよ。校正するときに見つけてしまえるので。
なんだかんだで、結局こういう答えに至った。
「素敵な勘違い」
映画を見た後に、すごく感性が鋭くなる感じ。本を漁っては、明日からなんかやってやろうとなる感じ。そんな感じで、人間って1つトンネルを抜けるだけで表情や感情が変わる単純ないきものだと思うんです。
そして、素敵な勘違いをすればするほど、その人の感情はちょっぴり大人びていくんじゃないかと思うわけだ。
特に、夏休みに休学、こうした一種の空白のスキマ期間には、気分が浮かれ上がる。休学の場合なんか、宿題すら気にする必要がないのだから、そりゃあねえ。
僕の場合、自分から「何かしてやろう」と予定を立てるのは、いつもOFFとされている隙間の期間だった。学校に通う期間は、もしかするとONではなくOFFであり、そういう隙間期間こそがONなのではないかとも思ったりもする。
そんな隙間で1つでも印象的なイベントを通り越したものなら、自分ってこういう人間かも! こんなこともできるじゃん! っていう「素敵な勘違い」が生まれる。あとは、その勘違いワールドに飲まれていけば、ふと振り返ったときに自分色のトンネルができあがっている。そういうトンネルを自然に通ってきた子たちが、夏休み後に「あれ大きくなったな」と思われるのではないかと思う。
長くなったが、ここでは、僕にしか執筆できない内容を残したいと考えている。きっとそれは僕が経験してきた、覗き見してきた「スキマ」についてなのだと思う。
皆さんにとっての「スキマ」ってありますか?
僕はこれから回想記として、記事を執筆することで自分の隙間を埋めていこうと思う。だからタイトルは「FillIn The Gap」にした。
あぁ、この「Fill in」を「FillIn」にするのがカッコイイと思っている辺り、、、まぁいいや。僕はこんな感じの人間です。
次回は「ドタバタあめりか縦横断」。一ヶ月かけて、キャンピングカーでアメリカを縦横断した時のことを、数回にわたって書いていこうと思う。
その他にも、インドネシアで猿に噛まれて高熱が出てビビり倒した話やフィリピンのゲテモノ、キャンピングカーでのドタバタあめりか縦横断、デンマークに到着した1ヶ月後に嘘つき家主にKicked outされた話、大好きなクラフトビール(週末のご褒美)の紹介など、僕が覗き見してきた様々な隙間を紹介していこうと思う。
さて、自分はこれからどこまで世界を広げられるのだろう。
この短い人生で、僕はあと何回迷子になれるのだろう。
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Haruki Takakura
1999年大阪生まれ。ロックダウン中に経験したコペンハーゲンでの休学ライフなど、隙間期間に目を向けた「FillIn The Gap」をContainerにて連載中。ビールが好きで好きでたまりません、なのに、お酒に弱い。