出発前のミラクルとハプニング

No Sleep Ever #0

出発前のミラクルとハプニング

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2022.06.17

「NYは毎日どこかで何かしら起きている、本当に忙しい街」
目標に向かって、自ら道を開拓し続ける会社員・Chika Hasebeさんが、眠れない街NYへ旅に出た。誰よりも好奇心に従順な彼女だからこそ感じる、NYでの新しい発見と、心揺らすできごと。


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事の発端は、昨年11月。
たまたま見つけた友人のInstagramの投稿。
「え!NYいんの?」
と1人で湧いて、その場で連絡した。彼女は大学時代のアルバイトが一緒だった。連絡をしたのも何年ぶりかというぐらい久しぶりだった。

大学にいる間、4年間続けたものから2、3ヶ月で辞めたものまで、通算10個以上はアルバイトやインターンをしていた。やっていた数が多いからといって決して自慢になるわけではないけれど、そんな様々な仕事の中で、今回連絡した友人と一緒に働いていたアルバイトが一番好きだった。それは、毎月同じ時間、同じ場所に立ち、通りすがりのお洒落な人にインタビューするというものだ。街行く人がそのキラキラしたアイテムたちをどこで手に入れたのかはもちろん、その人の価値観が垣間見えるのが面白かったのだ。そこで働く人たちも、ファッションへの興味という共通項以外は、何も交わることがない個性豊かな人たちばかりだった。

そのうちの1人であった信じられないほど自己開示が上手くてチャーミングな彼女は、話を聞くとどうやらNYに留学しているようだった。当時のことに思いを馳せながら彼女とそのまま連絡をとっていると、なぜか突然「もう今しかない!」といつもの衝動的な何かが降りてきて、知らぬ間にわたしもNYに行くことを決めていた。

NYと東京の時差は14時間。友達から返信が返ってくるのはこっちの朝の方が多かった。



といっても、わたしももう社会人1年目も後半。
変わった人は多いが、みんな真面目に働いているのだ。ちゃんと立居振る舞いを気をつけなければいけないとウジウジしていたら、なんだかんだ2月になってしまった。様々な目的を達成するために、行くならGWだと思っていただけに、時間が段々と迫ってきている。そろそろ動かないとまずいことに焦り始め、やっとある日重い腰をあげて、当時の上長に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら相談した。

「大変申し訳ないのですが、実は2週間ほどお休みをいただきたくて…」
「え〜NY! いいなあ、有意義な有給の使い方でいいと思う。なんだ〜休職したいとか言いだすのかと思っちゃったじゃん」

と、なぜか双方ともに拍子抜け。こんなことであればもっと早く言っておけばよかったという後悔と同時に、寛大な上司に大感謝だった。

Peter Sutherlandの作品集。ストリートにいる人のポートレートが盛り沢山で、まだ見ぬNYのリアルを見ているような気分。



そこからは早い。今でもよく会う数少ない高校の友達2人に、一緒に行かないかと声をかけた。2人とも旅行が大好きである。1人は即答でOK。もう1人はやはり仕事があるので難しいとなり、わたしと友人の2人で行くことになった。実は昨年の年末に「来年はNYで年越ししたい」と話していた。わたしはその時心の片隅で、年越しまでNY行きを延ばしていてはいけないと感じていて、ちらっと「夏前なら本当に行くかも」と匂わせておいたのだ。

ボーダーが緩くなったとはいえ、まだまだ閑散としている成田空港。




なんだかんだで最後にフランスに行ったきり、もう2年半海外に出ていない。旅の準備の進め方すら覚えていなかった。とりあえず航空券と宿だけあればいいかとネットでポチろうとするが、なんと! パスポートが切れていて、航空券が買えない!? これじゃ、なんの準備も進まないじゃないか。まだまったくなにもしていないのに、勝手に振り出しに戻った気分で焦る。パスポートを急いで申請した。なぜか焦りでいっぱいだったので、今まで訪れた国々のスタンプへの惜しみや、青から赤のパスポートに切り替わったことへの感動すらも全く感じず、格安航空券比較サイトにそのまま指を走らせた。

一方で宿探しも難航。最初にNYの物価の高さを痛感させられたのはこの時だった。普通グレードのホテルでもマンハッタンなら3万は超えてくる。ちょっといいホテルでも泊まろうものなら1泊6、7万は覚悟したほうがいいようだ。そんな覚悟は毛頭ないので、airBやらmixBやら使えるものは、格安で泊まれる方法はないかとにかく調べ続けた。結局、日本人の方の住宅をサブレットすることになった。賃貸契約みたいなものを結ぶことになり、最初は少々仰々しいなと思ったが、とても優しい素敵なホストだったことが後にわかる。


着々ではないが準備を進める最中、というよりそれはもはや仕事中の出来事だった。
「わたしもNYいきます」
突然メッセージが来た。もう仕事どころではない。以前話をしていて、難しいと言っていた友人も一緒にNYに行くことになったのだ。4月に入って一番湧いた出来事だった。

NYで何をするか友達と考えていた時見つけた。カーリングみたいで面白そうだったが、誰も興味を示してくれなくてボツ。



行く前からテンションは乱高下で、全然ゆっくり休まることがなかったが、なんとか出発前日を迎える。ただ、まだまだ問題山積。出発前までに必ず終わらせたい仕事が一向に片付かない。でもPCRも受けなきゃいけないし、「なんとかなるっしょ」と逃げるように早退。仕事が片付かないのは、最近替わった新しい上司の「今日できるよね?」の嵐が要因だと勝手に思っている。いいえとは言えない気の小ささの割に、早退はするという大胆さ。それよりそもそも2.5週間も休むという大胆さを言うべきか。

早退したのに結局仕事が気になって、彼氏との待ち合わせの間にパソコンと睨み合い。メリハリをつけるために終業後は絶対に仕事をしないと勝手にポリシーを持って働いていたが、最近はそれが揺らいでいる。ちなみにこの仕事は、出発当日の2時間前まで引きずることになった。ただ、その他の仕事は上司含め他の社員さんが引き継いでくださった。つくづく恵まれた環境で働かせてもらっていることを実感し、感謝の気持ちでいっぱいだった。

自由の女神の近くを航行する無料フェリーから。

そんなプチ波乱を乗り越えて、2年半ぶりに成田空港へ。そして日本を出た。

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