南の南で見る海は、

To Me, Somewhere in the World #34

南の南で見る海は、

Contributed by Yoko

Trip / 2022.07.06

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#34

気づいたら夏の波照間島にいる。

晴れからの曇り、雨に雷と、気まぐれな天気でも常に指すような紫外線。すでに肌は熱を持っていて、それが沖縄らしさをさらに感じさせた。

波照間島、ニシ浜。昼の海。


不意の嬉しいお誘いから急に決まった目的地。夏の沖縄はいよいよ大人気なので交通費が高く、近場の最安値は名古屋発だった。台風と雷の合間をぬうように、急遽、長野からセントレア経由で石垣島へ。名古屋では天気による出発見合わせハプニングなどもありつつ、なんとか最初の目的地・石垣島に到着。連絡をくれた友人と合流し、船で波照間島へ向かった。

夜の海。

「海、見ちゃうよね」

と、片方が海を見ていれば片方がつぶやく、という時の過ごし方をずっとしていた。それくらい海は常に綺麗だった。2度目の波照間島、1度目は日帰りだったので宿泊は初めて。時折出かけながらも、朝も昼も夜も海を見て、ずっと奥の水平線を見る旅。心を洗うように時を過ごした。宿の看板猫がびっくりするくらいずっと寝ていたけれど、同じくらいゆっくり過ごしていたと思う。

宿の猫。


海の色の境目がこんなに綺麗に見える場所はきっとそうない。浅瀬は薄い水色、奥は濃くて深い青色。サンゴ礁のエリアとそうではないエリアの色の違い。外から見る色と海に浸かって見る色もまた違った。ただひとつ確かなことはどの色もびっくりするくらい綺麗だということだ。

ニシ浜までの道。


都会や住んでいる土地でも、こういう時間と心の使い方ができればいいのに、と思うけれどそうもいかないし、そうもいかないからこそ今がとてつもなく価値のある時間な気がした。

いつもの場所から遠く離れた日本の最南端まで来ても、自分が自分である部分も全ての記憶もそのままだ。でもいつもはあるはずのない水平線と綺麗な海が今確かにここにあることもまた現実で、今ここにいることが不思議な気がした。不思議だけれど、嬉しくもあり。他愛もない会話も波照間島で出会った人たちも景色も、全てを幸せに思う。

朝の海。


肌を焦がしながら過ごした噛み締めるような数日間は、帰りの船で確かに自分の一部になった。
つまり最南端は、とてもいい。


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