気もそぞろに、多分3cmは浮いている女

To Me, Somewhere in the World #41

気もそぞろに、多分3cmは浮いている女

Contributed by Yoko

Trip / 2022.08.24

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#41

ついにこの日が来た。
国際線に乗らずに過ごした2年半、他人と自分の「もう行けるのに何で行かないの?」という疑問の波が寄せては返し続けた日々。でも、ようやくまた国際線に乗れる。


ハワイの空。



当日を迎えるまで、思ったよりも特別な意識を持たなかったから不思議。だって、もっと感慨深いものだと思っていたから。でもまさか最初のフライトがアメリカ・ハワイ行きになるとは思わなかった。けれど、旅なんて縁と同じ、タイミング。自分にしかわからない必然性と、偶然と、人に導かれてようやくここまで来れた。空港に向かう前の旧同僚たちとの久しぶりの会食は、楽しい会話をしつつも浮わつく気持ちは鎮まらなかった。楽しみだね、と言ってもらえる関係性においては。幸せなことに。

「国際線 出発」。



いつもは一つ手前で降りる駅を過ぎて終点の国際線ターミナルまで進み、チェックインカウンターに並ぶ。当該フライトの手続きカウンターだけ行列ができていて驚きつつ、当日のフライトデータを見て便数の少なさを改めて実感する。いよいよ自分の番が来て、長いこと使うことがなかったパスポートといつもより少しだけ多い書類を提出し、久しぶりに荷物を預ける。手続きが終わり、パスポートと一緒に発券されたフライトチケットを受け取ったら、何だかもう嬉しいとしか言いようがなかった。

成田空港。



そしていよいよ出国ゲートへ。感慨深さはそこでやってきた。思い出したのは11年前、たった一人に見送られて海外への初めての一歩を踏み出した日のことだ。3.11の次の日だったということもあり、表現できないほどの不安も日本を離れる寂しさもあったけれど、確かに未知の世界への期待が勝っていた空港での時間。いろんな感情が乱れ打ちしている中でもワクワクが勝っていた瞬間。なぜだか今改めて、あの時と同じような新しいスタート地点に立った気がして。

ワイキキ、夕暮れ。



何が変わるわけでもない、このフライトに乗らなかったら死ぬわけでもない。でも私は今、多分3cmは浮いている。気もそぞろに、ほとんど何も手につかないくらい。

ようやく飛べるよ。待ってろ、太平洋。


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