夏の終わりと秋の始まり

Mamma mia! #124

夏の終わりと秋の始まり

Contributed by Aco Hirai

Trip / 2022.09.06

イタリアに活動の拠点を移し、フリーのエディター・ライターとして活躍するAco Hiraiさんの生活をパーソナルな視点で綴った連載「Mamma mia!」。南で過ごした3週間は本当にあっという間で、気づけば最終日。夕日を見ながら飲んだ甘いモヒートを思い出しながら振り返る夏の思い出。

#124

夕食までの時間、街歩きをしながら辿り着いたのは海が見えるバール。



この景色とも今日でお別れか。

グラスの底に溜まったモヒートのミントをストローで潰しながら、
海に沈んでいく橙色した太陽を眺めていたら急にセンチメンタルな気分が襲ってきた。

明日には電車で自宅のあるピアチェンツァへ戻る。
毎年夏は南で過ごしているから、この香りや景色とお別れすることには慣れているはずなんだけど、今年の別れはなんだか特別で、帰りたくなかった。

それは、
大事なものに出会ったような、
大切なことを思い出したような、
懐かしいような、愛おしいような、そんな感覚。

そして、それは絶対になくしたり、忘れたりしちゃいけないもので、
きっと未来へつながる何かになる。

大好きなモヒート。こういう心境の時ってとことん辛めが飲みたいのに、かなり甘め。



5年ぶりに会えた親友の存在に感化されたのもあると思うけど、
ぼやっとした、そんな感覚だったのを覚えている。
時が経てば、このぼやっとしたものが、なんだったのかわかるのかもしれない。
やがてそんなタイミングが訪れるのを待つのも楽しみだ。


モヒートを飲み干したら、沈んでいく夕日とは逆方向に、ピッツェリアがある丘の上へ登ることにした。
最終日に必ず食べ納めにやってくる、大好きなピッツェリアだ。
そして、私がイタリアでポジティブにピッツェリアへ行きたいと思う唯一のお店でもある。
お城のある丘の一角に、夏の間しかオープンしていない、とっても貴重な場所。
このピッツェリアの人たちは、夏の間にとことん稼いで、冬は何もしないでゆっくり好きなことをしながら過ごすんだとか。

食べ納め。最高に美味しいピッツァ。



ピッツェリアまでの道。年配の方がバールに集まって各々好きなことをして夕食までの時間を過ごす。イタリアのこういう景色が本当に好き。



丘の上から見た港湾と夕日。



また来年の夏も戻って来れますように。
ピッツェリアからの帰り道、何度もそう思った。


そして、ピアチェンツァに帰ってきた夜。
窓を開けると肌に当たる夜風が気持ち良かった。

お気に入りのワイナリーのワイン。リミテッドエディションに導かれるように買ってしまったロゼ。



今日は、ロゼを開けよう。
南のお気に入りのワイナリーで買ったロゼ。
ロゼって好きじゃなかったけど、今夜は一段と美味しく感じてロゼが好きになった。

そんな秋の始まり。


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