ドタバタあめりか縦横断

FillIn The Gap #10

ドタバタあめりか縦横断

ちょこっとドタバタ〜破産寸前の救世主〜

Contributed by Haruki Takakura

Trip / 2022.09.30

「これからどこまで自分の世界を広げられるだろうか」
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。


#10

旅が始まって約2週間。僕たちアメスク一行は、資金不足に悩まされていた。その1番の原因はRVパークでの宿泊料金。快適さと引き換えに、RVパークはみるみる間に僕らの財布から大事なベンジャミンを吸い取っていく。ありったけの貯金を注ぎ込んで旅をしている学生ちゃん達にとっては、この出費はとてつもなく大きかった。

それでも、僕たちがRVパークに泊まるのにはいくつかの理由があった。RVでの生活に欠かせない水と電力チャージ、安全の確保や快適性など。電気と水に関しては、それらがなければトイレもできないし、ご飯の支度もできない。なんだかんだ、生活の必需品をチャージできるRVパークは必要不可欠な場所なのだ。だが、毎日RVパークに泊まる必要があるかというとそうではない。
じゃあ、なぜ毎日RVパークに泊まり続けるのかって?
それは、僕たちがほーーんのちょびっとだけビビり気質だったことと、安心安全なRVパーク以外での宿泊方法を知らなかったという2つの理由に集約されている。誰もがはちゃめちゃにびびりで無知だったわけではない。ほーーーーんの少し、ミジンコほど怖かっただけである。

ゴホンッ。。。

そんな資金不足に悩みながら旅をしていたある晩のこと。ホースシューベントを訪れた日に宿泊したレイクパウエルのRVパークで、僕たちは救世主と運命の出会いを果たす。この出会いがなければ、僕たちは旅の途中で破産していたことだろう。

レイクパウエルのRVパークは、前回の記事で訪れていたホースシューベンドからわずか10分ほどの場所にある。その日は、まだ太陽がサヨナラする前に、電気チャージと洗濯だけができる質素なRVパークに到着していた。
気付けば、僕たちの衣服はナショナルパーク巡りで土埃だらけになっていた。なので、その晩は、ご飯の支度をする班と洗濯をする班に分かれることにした。ちなみに、僕は洗濯班の任務を担当する。そう決まると、腹ペコの僕たち洗濯班は「早くご飯食べたい!!!」と食事班に駄々をこね出す。「えー」みたいな返事が返ってくるかと思いきや、一刻も早くご飯を食べたいという意見が一致したようで、食事班はすんなりと近くのウォルマートまで徒歩で買い出しに行ってくれた。ラッキー。食い意地のはった奴らが、車ではなく時間のかかる徒歩を選んだのは、確かガソリンの節約が理由だったと記憶している。

僕を含めたRVパークに残ったメンバーは、洗濯などを済ませて買い出し班を待つ。こういう暇な時間ができると、僕は決まって大自然に囲まれながら角田光代のエッセイ『世界中で迷子になって』を読んでいた。こんな贅沢な時間はないと思いつつも、日が暮れても帰ってこない買い出し班が心配になり始める。
「遅いけど、あいつら大丈夫かな」
RVパークに残った班の心配が募りに募った夜8時ごろ。実に、買い出しに出掛けてから2時間、買い出し班の人数よりも明らかに多い人影が窓の外に見えた。その集団は、おそらく談笑しながら、真っ直ぐ僕たちのキャンプサイトの方へ歩みを進めている。
「なんか、変な集団近づいてきてる」
洗濯班が一斉に窓を覗き込む。不安を煽るように陽が落ちた空は、彼らの顔やシルエットを綺麗には見せてくれない。
不安のなか、僕たちはみんなでRVを降りて確認することにした。暗闇の中、こちらに向かってくる集団の誰かが光らせたスマホライトが右へ左へと揺れている。光が見えた直後、「ただいま〜!」という声が僕たちの耳へと届く。近づいてみると、その集団は間違いなく買い出し班のメンバーたち…、と見知らぬ数人のグループだった。

そこで出会った彼らが、僕たちを破産の運命から救ってくれる救世主たちだった。

「たっだいま〜!」
1回目以上にトーンを上げて、買い出し班と見知らぬ集団が声を発する。やたらに元気である。そしてなぜか誇らしげである。

到着した彼らに外で何が起きたかの話を聞くと、ウォルマートから一緒に帰ってきた彼らは慶應大学に通う大学生で、僕たちと同じくアメリカ横断中だということだった。そして、彼らにアメリカ横断における「節約術」とやらを教わったとのことだった。どおりで誇らしげな表情をしているわけだ。

これはこれからアメリカを横断する人たちにも耳寄りな情報であるので、しっかり残しておく。


アメリカ横断虎の巻

~その壱~ ガソリンスタンドやウォルマートでも寝泊まりができるとのこと
~その弐~ RV Parkyというアプリで、寝泊まり可能なウォルマートやガソリンスタンドを検索できるとのこと
~その参~ ガソリンスタンドでは、高確率で水や電気の確保、洗濯ができるとのこと

「やばない?!これでただで宿泊できるで!」

全員が心の中でガッツポーズをして、救世主たちに合掌した。僕たちの旅は、その後ガソリン費が予算のおよそ1.5倍になったが、自炊を重ねることで食費は半分に、宿泊費は予算通りで済んだ。
ああ、人との出会いは何よりも大切な資源である。早速、ダイアリー語録に記した。


〜セドナ/ホワイトサンズ〜


















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