Couch Surfing Club #9
西海岸ロードトリップ編
BEEF or CHICKEN?
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2022.09.22
#9
「BEEF or CHICKEN?」
そう聞かれて、一つ空席を隔てた窓際席の青年がパスポートを差し出す。
「牛かチキンどっち?だって」
「チ、チキン!」と声を張る彼。
マスク越しに微笑み合うCAさんとわたし。
「ソーリーサンキュー!」
ランチのメニューを日本語で耳打ちしたわたしには、咄嗟に英語でお礼をしてくれた。
マニラは乗り継ぎで、セブ島に語学留学に行くそうだ。
「楽しんできて下さいね」
国際線の乗り継ぎを控えているわたしは、優先手続きのため頭上の手荷物に手を伸ばしながら彼にそう伝える。
機体から係の人の案内にしたがって、一足先に乗り継ぎ手続きのカウンターへ向かった。
-
「ここの席いいですか?」
「もちろんよ」
ベンチに乗せていた手荷物を膝の上に移し、どうぞと手招きしてこちらに席を譲ってくれた。
「行きもそうだったけど帰りも荷物が全然来ないのよね。自分でキャリーオンの荷物の乗り継ぎ手続きをしなきゃいけないなんて初めてだから、分からないことだらけ」
サンフランシスコで休暇を過ごし帰り道だという、オーストラリア人女性。
「どこから来たの?」
「東京です」
「日本はようやくビジネスビザで入国できるようになったってねえ。今ちょうど友人が一人東京に行ってるところなの」
「最近、入国の陰性証明が免除されるって公表されたばかりなので、これからもっと来やすくなると思いますよ」
「これまでは毎年1〜2回日本に遊びに行ってたの、早く再訪したいわ」
「是非!お待ちしてますよ」
「あ、あれわたしの荷物だ!やっときた」
「気をつけて帰ってくださいね!」
「あなたもアメリカ滞在楽しんで!」
-
「I like your bag!」
「I’m sorry?」
「I LIKE YOUR BAG!!!」
「oh THANK YOU!!!」
キャリーオンの手荷物検査の列で通り過ぎざまに声をかけられる。
一瞬のことで彼のスタイルを褒め返す時間がなかった。
-
「すみません。乗り継ぎ搭乗口のチェックインカウンターの列って、ここで合ってますか?」
「僕もそうだと思って並んでるんだけど...」
「ここまで来るのに手荷物検査はこれで3回目ですね」
「うん、さすがにもうこれで最後だと思うんだけど」
カウンターを通りすぎたところでも、お喋りの続きをしようと青年が待っていた。
「さすがに乗り継ぎ10時間は堪えた...」
「それは航空会社にクレーム入れるレベルじゃない!?」
「いや、予約の時から分かっていて覚悟はしてたんだけど...今回は完全に自分の落ち度だな」
「あぁ、そういうことね。それは確かにキツイかも」
「一番安いフライトだったからね。人生長いし時間はいくらでもあるからこれも経験、君はアメリカ人?」
「日本人だよ、いま成田からのフライトでサンフランシスコ行きの乗り継ぎ中。あなたはどこから来たの?」
「スウェーデンのマルモだよ。でも今は留学を終えた台北からの帰国の途中で、初めてアメリカに遊びに行くところ。2か月の滞在だけど、何も予定は決めてないからお母さんがすごく心配してた」
「今いくつ?もし聞いてよければ」
「27歳、君は?」
「33、そういえば名前は?」
「Alban」
「わたしYUI、よろしく。お母さん心配しないでって連絡したいとこけど、ここの空港free wifi繋がらないよね」
「あ、OHPっていう変なwifi見つけたんだけどそれは繋がるよ」
「ほんと?あ、これか」
「僕のは弱いけど繋がってる」
「わたしはダメだ、アメリカ滞在中予定合えば会おうよ。インスタやってる?」
「やってる、君のアカウント探すよ」
「yui.horiuchi」
「いたいた」
「いつでも連絡して、10時間のレイオーバーで何か食べた?」
「食べたけど、食事とは呼べないようなものだよ」
「ああ確かにここ、空港なのにキオスクみたいなのしかないよね。お湯入れてもらってインスタントヌードル食べてる人見たよ」
「そう、しかもクレジットカードも使えなかったから、諦めてATMで現地のお金をおろしたんだけど、たった15ドルくらいキャッシュアウトするのに、5ドル以上も手数料取られちゃった。使用料払ってラウンジに行った方がいいとも思ったんだけど、そもそもビジネスクラス以上の人しか使えない仕様だったんだ」
「お母さんはアメリカに行くのを心配してたみたいだけど、マニラでの乗り継ぎの方が心配すべきだったかもしれないね。そうだ、よければ日本のお菓子食べる?」
「え!食べてみたい!」
「これはラムネ、カリカリ噛むキャンディね。あとこれはハイチュウっていうソフトキャンディ、あと梅干しって聞いたことある?」
「いや聞いたことないな」
「日本のプラムの塩漬けなんだけど、このねりうめは甘くおやつにしたもの」
「あ、美味しい。なんかデーツみたいだね」
「アメリカでごはんの予定もないんでしょ?到着遅いから空港近くはお店は全部閉まっちゃってるかもだね。よかったらこれも持ってって。カロリーメイトって言って、バランス食で登山とかに持ってくハイカロリーなお菓子だけど、これくらい食べ方がいいよ。すごく口が乾くから水もたくさん飲んでね」
「ありがとう!これってアメリカ入国する時に持ち込んでも大丈夫なものだよね?」
「うん、問題ないよ」
近くにいたおじさんに、わたし達の話し声がうるさくてアナウンスが聞こえないと人差し指を口元にあてたジェスチャーで注意される。
マスク越しの会話は声が大きくなりがち。
「そろそろ搭乗始まりそうだね」
「そうだね、じゃあまたサンフランシスコで会えたら!」
-
搭乗ゲートでそわそわ案内を待つグループが数えられるくらいになってきた。
「あ、日本人の方ですか?」
「あ、はい、そうです」
「搭乗グループいくつですか?」
「グループKです」
「あ、わたしも一緒だ、全然呼ばれる気配ないですね」
「本当ですよね、サンフランシスコはお仕事ですか?」
「いえ、旅行です、そちらはお仕事ですか?」
「僕、大学の交換留学プログラムでケベックに一年経営の勉強をしに行くんですけど、サンフランシスコはまた乗り継ぎで。しかも乗り継ぎ便が他社の航空便で、一回アメリカに入国してスーツケースをピックアップしてから自分でまたチェックインしないといけないってことが昨日とかに分かって。急いでESTAを申請したところなんですよ。ギリギリ発行は間に合いましたけど、本当に焦りました」
「気がついてよかったね〜!発行も間に合ってよかったですね!」
「僕、海外初めてなんです。入国書類のことなんですけど、食品って何か食べ物を持ってたらYESにした方がいいんですか?」
「もし何か食材を持ってたらYESにチェックを入れて、税関で中身は?って聞かれたら日本の調味量ですって答えるといいですよ。ウソをついてたことが分かった時の方が大変なことになるから正直に答えて。万が一禁制品が見つかっても知りませんでしたって言えば没収で済むけど、ウソついてたってなると入国させてもらえないこともありますからね」
「ええ!そうなんですか!袋麺持ってきちゃった...」
「あはは大丈夫ですよ、留学が目的で受け入れ先も決まってたら問題ないはず。わたしは去年取り調べ室に連れて行かれましたけど、スーツケースを回収する前の部屋だったからか、中身を調べられることまではなかったです。もしそういうことになっても、肉や生野菜が入ってる食品が回収されるだけだから、チェック欄は正直にYESにして質問には全て正直に答えてたら大丈夫ですよ」
「そうですか、あと僕預け荷物も乗り継ぎで一個見つからなくてそのままゲートに来ちゃったので呼び出されちゃいました。あとあと、22:40にケベック行きのフライトに乗り継ぎ予定なんですけど、間に合うか不安でもう疲れちゃいました」
「ああ、わたしたちのフライト着予定20時頃ですもんね。フィリピン航空は遅れることで有名らしいから確かに不安ですね。わたしも成田からマニラに来る便がすでに2時間以上遅れたので、遅れる可能性は十分ありそう...CAに事前に乗り継ぎ事情を話しておくと配慮してもらえるかもしてませんよ」
「それが英語で言える自信がないですけど...」
「座席番号いくつですか?」
「68Eです」
「わたし72Dなので困ったらいつでも声かけてください!お手伝いしますよ。わたしYUIって言います、お名前は?」
「本当ですか!ありがとうございます!僕シンタロウって言います、出身どちらですか?」
「東京です、シンタロウくんは?」
「滋賀です」
「素敵なところ。わたしの母が焼き物が好きなので一度行ってみたいところ」
「そうなんですよ、僕の母も好きで集めてるみたいですけど僕はまだいまいち分かってなくて...そういえば僕、携帯のsimも持っていなくて空港着いてもフライトに間に合わなかったら、どこに相談したらいいのか分からなくて」
「空港でチェックインが間に合わなかったら、空港内の壁に備え付けの電話があって、それは通話料無料で各航空会社に繋がるから、不安なら日本語が話せる窓口に転送してもらって、フライトの変更をお願いするといいですよ」
「そんなこともできるんですね、頑張ってみます」
「不安なことがあったら機内でいつでも相談してください」
「はい!」
-
「ちょっとここに枕だけ置かせてもらってと」
機体の最後尾の通路席に座るわたしの隣の席に首まくらだけを放り込み、空きのなくなった手荷物収納スペースを探しに来た通路を戻る青年。
「突然すいません、iPhoneのアダプター持ってたら貸してもらえませんか?」
「いいよ、はいこれ」
「ありがとうございます、あれでもこれ反応しないな」
「ああ、機体が動くまで待ってみたら?」
「そうだね」
「あ、かわいい、その首まくらトトロの顔してる」
「そうそう僕の弟がくれたんだ。僕用に大トトロで、弟は青と白のチビトトロのやつを持ってるよ」
「優しい弟さんだね、今はホリデイの帰りか何か?」
「僕は夏休みでベトナムに1か月くらい一時帰国して最高だった。君は?」
「わたしはこれからサンフランシスコからポートランドにかけて40日間くらい滞在する予定。あなたもサンフランシスコが最終目的地?」
「ううん、いま大学でITの勉強してるから、本当はサンフランシスコって言いたところなんだけど、物価が高いからミネソタ州が最終目的地だよ。大学の新学期の授業はもう始まってるんだけど、オンラインでもキャッチアップできてるし少し遅れてキャンパスに戻る予定」
「賢いね、じゃあ乗り継ぎは深夜便?」
「うん夜中の12時に出発予定」
「間に合うといいね」
「でも僕達の横のレーンで酸素ボンベの必要なお客さんがいるみたいで出発遅れてるからどうだろ」
「あ、本当だ。でも使える酸素ボンベがないの?」
「そうみたい、待つしかないね」
出発時間から80分後、離陸。
「ダメだ、このシートのアダプター充電できない!」
「仕方ないね、わたしポータブルバッテリー持ってるからどうぞ使って」
「ありがとう」
着陸後シートベルトサインが消えて、一目散に座席から立ち上がって見えなくなった。
-
通路に立ちはだかるたくさんの人。
機内アナウンスで3人の名前が読み上げられる。
「…さん、…さん、シンタロウフジタさん」
ファーストネームでピンときた。
彼のいたあたりの席を最後尾から目で追う。
また同じアナウンス。
ようやく聞き取れたらしい。座席から突然ひょこっと立ち上がり、勢いよく振り向いたシンタロウくんと目が合った。
わたしは右手を上げて人差し指を前に押す動作で、早く前に行って!行って! とサインを送る。
意味が伝わり、彼は急いで通路に出て両手で手荷物を頭上に掲げ、頭をいろんな人に下げながら人で埋まった川を昇っていった。
-
「ポータブル充電器お貸ししましょうか?」
「え!ああ、ありがとう助かるわ」
税関にジグザグ並ぶおそらく500人程度の人。
「息子がシリコンバレーに勤めててね、到着予定時刻から1時間以上遅れてることは伝えてあるんだけど、この調子じゃすごく待たせそうだから、連絡取りたいのに電源が切れちゃいそうなの」
「列も少しずつですけど動いてるし、充電器を持って並んでたら取り残されることもないから、しばらく使ってていいですよ。わたしも迎えに来てくれている友人に連絡しましたけど、空き駐車場が遠いらしく、車寄せを極力スローに永遠ぐるぐるしてるって言ってました。わたしたちも結構辛いですけど、彼らも気の毒になっちゃいますね。きっと息子さんも心配してるでしょう」
「そうなのよ、でも電気自動車を充電できる駐車スペースを見つけたから、充電して待ってるって連絡があって安心したわ」
「よかったですね、息子さんに会うのは何年ぶりですか?」
「4年ぶりなの。もうそろそろ海外も行きやすくなってきたし来たら?って誘ってくれて。娘もカンザスに住んでるから、2週間サンフランシスコに滞在してからカンザスに遊びに行く予定よ。夫は仕事があってお留守番なんだけどね」
「お母さんラッキーですね、一人でもこうやって訪ねて来れて。お子さん二人とも海外だったら寂しかったでしょう」
「本当にそうなの。久しぶりだから安い飛行機にしちゃったけど、バンコクからもマニラからも満席の飛行機で驚いちゃった。手荷物の乗り継ぎ手続きも自分でやらなくちゃなんて、マニラに着くまで知らなかったからまた驚いて。こんなに大きな空港なのにクレジットカードの使えるお店もないから、インフォメーションデスクでクレジットカードが使える唯一のお店を教えてもらって。でも結局、冷たいパンしか買えなかったの。こんなに海外旅行が大変って忘れちゃってたわ!」
「あはは、それマニラの空港で喋ったスウェーデン人の男の子も同じことを言ってました。あ、ほらちょうどここにいる彼」
ジグザグの折り返し位置で
「やあYUI、君のことインスタグラムで見つけたよ」
「ほんとだ、いつでも連絡してね!」
「あ、携帯の充電30%くらいになったわ!多分これだけあれば落ち合うまで持ちそうよ。本当にありがとう」
「どういたしまして、君は充電足りてる?」
「ああ大丈夫、僕は座席で充電してたから。あ、そういえば聞いて。予約してたホステルが明日からだったんだよね、今夜は宿なしになるところだったんだけど、おすすめしてくれたチャイナタウンあたりにいいところ見つけたんだ。ここどう思う?」
「空室あるならすぐに取った方がいいよ!取って取って。ダウンタウンまではどうやって出ようと思ってる?」
「BAATで行こうかと思ってるけど」
「もう23時近いし、運行してるか確認した方がいいよ」
「あ、やばい、もう運行時間過ぎてた」
「ウーバーかリフトでカープールして行きなよ」
「リフトってなに?」
「ウーバーと同じカーシェアサービス。深夜だしダウンタウンまで距離があるから、アプリ2つ使った方が運転手見つかる倍率も上がるでしょ。調べてみて」
「あ、あった。しかもリフトの方が安いね、片道40ドルだって」
「え!深夜でその値段って絶対お得だよ。わたしは前にSFOからチャイナタウンに行くのに150ドルかかったよ」
「ええ、レートが上がる前に早く入国したいな」
「いや〜グッドラックだね。旦那さんと娘さんとも連絡つきました?」
「ええ、いまみんなから電話がかかってきてて、取れてない着信がいくつかあるの」
「まだまだ時間かかりそうですもんね」
「あ、そうそうこれ見て、佐賀に行った時の写真」
「わあ、素敵なところ。わたしも行ったことないですよ」
「やあ、また会ったね」
「わたし達一体どんだけここに並んでるんだろう」
「もう並び始めてから2時間経ってるわよ」
ALBANの前に並んでいたホテルピローを抱えた女性が教えてくれる。
「これは一瞬の拷問みたいだね、耐えないと出られない...」
「あ、でも見てわたし達ようやく最初にいたところから折り返し地点まできてる」
「まだあと2時間かかるかもって友達に伝えた方がいいかな」
「そうねえ」
「あれ、なんかでも列が進むペースが突然早くなったみたい」
最後の一例。
「あなたに話しかけてもらえて本当に助かったわ。こんな長時間一人でただ並んでるだなんて、耐えられなかったと思うわ」
「それはわたしも同じですよ。お話できてよかったです。わたし去年の旅行中、フライトが遅延欠航しまくってストレスがすごい時、情報共有してくれる人や離着陸でガムをくれた人がいて、他人の親切心にすごく助けられんです。わたし、今までは自分から人に話しかけタイプじゃなかったんですけど、そういうこともあって今回の旅は自分がしてもらったように、同じことをしたいなって思ってたんですよ。結果的にいろんなバックグラウンドの人とたくさんお話しできて、みんな誰かの家族や大切な人なんだなって気づけました。これも旅の醍醐味です」
「そうね、みんな誰かの子供だものね。お互いサンフランシスコでの滞在楽しみましょうね!」
わたしは現金0円、彼女は1ドル紙幣1枚だけ持って大声の「NEXT!!!」の声のする方に歩いていった。
-
「アメリカ合衆国へようこそ」
そう言った係の人のApple Watchが23:59を指していた。
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「荷物が見当たらないの!」
「あ!お互い無事入国できましたね!荷物探す手伝いますよ」
「すいません、マニラからのフライトが3間前くらいに到着してるんですけど、荷物のレーンの案内がもうどこにもなくて、どこに行けばいいですか?」
「ここのレーンの真裏にマニラ発の荷物はまとめてありますよ」
「ありがとうございます」
「あ!あった!」
「あ!わたしのも!」
「わたし達の荷物、隣合わせで置いてあるじゃない!あはは!」
「これは有料のカートを使わないと流石に一人で出口まで行けないですね。あれ、クレジットカード使えるみたいなので試してみましょう」
「うーん、これクレジットカード使えないみたい。反応しないのよ」
「ちょっとわたしのカードで試してみます。タップかスワイプかね、とりあえずタップしてみようかな。あ、反応してる!あ!できたできた!これで一台ゲット!今度はそちらのカードで試してみましょう。少し反応が悪いから長くタップしてた方がいいかも」
「頼んだわ!」
「あ、読み込み中...できた!はい、これあなたのカート!」
「ありがとう本当助かったわ!」
「荷物乗っけるの手伝いますね」
「全然重くないから平気なのよ、行きはね!帰りは別!あははは!」
「わたしも一緒です!」
「あなたの荷物乗せる手伝いましょうか?」
「いや、わたしの荷物ははるかに重いので大丈夫ですよ、息子さん待ってるでしょうから早く行ってあげてください!あ、そうだ最後にお名前伺っても?」
「スーンよ!」
「S-O-O-Nさん?」
「いいえ、Z-U-Mと書いてスーン」
「いいお名前ですね!わたしはYUI、お話できて本当に楽しかったです!どうもありがとうございました!」
「わたしもよ!それじゃこれで本当にお別れね、さようなら!」
「さようなら!!」
-
「あ!!!!あれ!息子さんまだ見つかりませんか?」
「そうなの、ここの出口の番号伝えたんだけどねえ」
「あれ、でももしかしてあのテスラそうじゃないですか?」
「あ!本当だ!最後まで本当にありがとう!」
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お互いマスクを外して笑顔見せ合った瞬間、目が合って荷物をそっちのけで両手を広げて駆け寄った。
「わたし達本当におつかれさま!」
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「あれYUIかな?って思ったんだけど、知らない人と仲良さそうにハグしてるし、一瞬違うと思って通りすぎそうになったけど、BEAVERSのスウェット着てたから分かったよ」
「あ、そうそう、髪もショートだし金髪だから見つけにくいと思って、あなたの地元のフットボールチームのスウェット着てきた。いいセンスでしょ」
モーテルに向かう途中、マクドナルドのドライブスルーで買ったポテトを頬張る。
飛行機で一睡も一食もしないまま、ナチュラルハイで片道30時間の出来事を迎えの友人にインストールしていた。
「日本人が二人、スウェーデン人、オーストラリア人、ベトナム人、タイ人が一人ずつ、旅の始まりにふさわしい、まさに情報のダイバーシティだったね」
BEEF or CHICKEN? から始まった人間模様、旅の終わりはどんな気持ちで誰の人生の片鱗に触れているだろうか。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。